第4話 出会い

リビングに戻って、母を探した。母は気が引けるのか、隅のところで私の帰りを待っていた。すると、少し離れたところで魚の骨が指に刺さったらしく、毛抜きで一生懸命抜き取ろうと頑張っている少年がいた。


あっ、テレビで見たことがある、薫くんだ。私は駆け寄った。母はその少年が可哀想になったのか、手に刺さった骨を抜こうと手伝っていた。ところが骨が小さくて、なかなか抜けないようだ。


「七美、ちょっとこっちに来て骨を抜いてあげなさいよ」と母は言った。私は両目が1.2で目がいいので、すぐに抜いてあげることができた。薫くんは私を見てキラキラと光る眼差しで、「ありがとう」と言った。そして、君の歌は好きだよと言って、微笑んでくれた。


薫くんはとても魅力的で、私の鼓動は高鳴って、気持ちは舞い上がった。薫くんも私を見ると、少し夢見がちな眼差しをしているように見えた。


私は母の目が気になり、すぐに母のもとに戻ったが、わざと毛抜きを持ってきた。


私は母に、「うっかりして、毛抜きを持ってきちゃった。返してくるわね」と言い、名刺を持って薫くんのもとへ小走りで戻って行った。


私は名刺を薫くんに手渡し、毛抜きを返す時、わざと彼の手を強く握り、熱のこもった眼差しで見つめた。


「連絡、待っているわ」と言うと、薫くんはハッとした顔になり、「もちろんだよ」と答え、しばらく手を握りしめあった。二人は近いうちに会おうねと約束して別れた。


そして、電話やメールで恋心を語り合ったが、お互い学生の上に人気のある芸能人だったので、仕事が忙しくなかなか会えなかった。


つい最近、私に変化が訪れた。急に演技が上手くなったことだ。何だか見た目も綺麗になったと、周りの人達から褒められた。ドラマの監督は新人潰しで有名なのに、私には優しくしてくれ、演技も絶賛してくれた。


今の生活は上手くいきすぎて、何だかおかしいと感じた。演技をするのは初めてなのに・・・。私に演技の才能なんてあったかしら?あまりの忙しさでそのことを追求できないでいた。

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