第二話


 放課後、担任とサンタをロッカー前に呼んだ。担任には、あるものを用意してもらっている。


「先生、頼んでもらってたもの、ありますか?」

「何に使うんだ」

「見てれば分かりますよ。ほら、早く貸してください」


 恐る恐る渡してくれた。


 もらったバールを振り上げる。振り上げたバールを、彼女のロッカー目掛けて振り下ろす。


 ガゴッ。鈍い音が鳴った。担任が気の抜けた叫びを上げた。可哀想に。他の先生に土下座でもするのかな。


「あっ、なんで。それやるんだったら鍵壊すとか他にやりようあったろ!」

「ロッカー、一回ぶっ壊してみたかったんだよね」

「何言ってるのこの子。おじさん怖いよ。なんでこの子の言うこと信じちゃったのかな。俺、馬鹿かな?」


 サンタが呆れた顔で話す。


「ケンジ……。派手に、やったなぁ。また俺が巻き添えで怒られるのかよ……」

「まあそう言うな。重要な手掛かりが見つかるはずなんだから。探さなきゃ、ロッカー君も可哀想だし」


 そんなことを言いながらロッカーの中身を見ようとした。やっぱサンタも見たかったんじゃねぇか。


 するとその時、壊れた扉が外れて、中に入ったものが大量に出てきた。それは、手紙のようだった。



 一つは裏返って、宛名と差出人が見えた。


 ……僕の名前と、女友達の名前だった。どうやら、ラブレターらしい。一瞬体が火照る。


「……読もうよ、ケンジ。これは調べなきゃならない」


 彼はやけに真剣に、そう言った。


 この大量のラブレターを僕たちは一つずつ検分した。

 まず、ここには大体50件ものラブレターがあり、半分はいろんな女子から僕に宛てられたもの。


「ケンジ、お前モテモテだな」

「僕のモテ期は小学生で終わったと思ってたよ」


 僕は小学生の頃、めちゃくちゃモテていた。足が速かったり、勉強がそこそこできたりしたからだろう。中学生の頃からそんなことは無くなったが、このラブレターの山を見る限りそんなことはなかったようだ。アカリからのものもあって正直驚いた。


「……俺も早く結婚したいな」


 約一名流れ弾を喰らっているようだが、気にしない。


 もう半分。これは、全て女友達が僕に宛てて書いたものだ。もちろん嬉しかった。しかし、これらのことが段々と不可解に思えてきた。


 一つ、なぜ彼女は他の女子のラブレターを盗んだのか。

 一つ、僕宛のラブレターをたくさん書いているのにも関わらず、なぜ僕に届かずここにあるのか。


 僕らは考えた。考えて考えて考えた。その結果、今は何もわからないという事実だけが分かった。サンタがまた何かを考えていたこと、それだけは気になったが。


 3人で話し合った結果、今日の学校での活動はここらで切り上げることになった。


 サンタは、先程の手紙を持ち帰り、家で詳しく調べる。

 僕は家に帰って寝る。

 担任は、壊したロッカーを補修する。泣き言を言っていたが、黙殺した。


「じゃあ先生、後よろしく。サンタも帰ろうぜ」

「……あぁ。帰ろっか」

「さっさと帰れ。俺にこれ以上迷惑をかけるんじゃねぇ」

「はいはい。帰りますよ」

「……」


 そのまま家路につく。サンタは黙ったままだ。


「おいサンタ。お前大丈夫かよ?」

「……」

「僕はお前が心配なんだ。何かあるんだったら言ってくれよ」


 やっと彼はこっちを向いてくれた。眉間に悲しみが刻まれている。


「……ケンジ。俺は」

「なんだ、言ってみろ」

「……いや、ボクは……百合ユリの彼氏、だったはずなんだ。中一の頃から」


 ……どういう、ことだ。






 気に入ってただけたらコメントや星、応援などよろしくお願いします🙇

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る