第11話 どうしてオレがこんな目に(★)
※今回はクリスティアン(ガスパールの護衛・大人ベルの死因)視点になります
「んがっ――ゴハッ、ぶっへっ! ぷぇっ……ふぅー、ほぁー、ふぅー……」
息が詰まる感覚で半身を起こし、
受け止めた手のひらに、黒ずんだ血の
何だこれは、ここはドコで、一体オレに何が起きたんだ――
しばらく続いた混乱は、腹と顔の痛みを認識すると同時に収まった。
下半分が
「うぅ、ぐっ……ぬぁ、あ」
首まで垂れたのを
鼻が折れているっぽい――アチコチ痛くて、自分の状態がわからない。
ズズッ――ぷぅー、ズビッ――ぷぅー、ズズッ――
しかし、口内もズタズタになっているようで、止まらない
生臭さと
どうしてこんな、どうしてオレがこんな目に――
ぐぷっ、かっふ! ケッ、ケヒッ! おぇ……ぶっ
硬いものを飲み込みかけた感じがして、
「
聞いたことないような、
アイツが、オレを蹴っ飛ばして――いや、そんな馬鹿な。
あのクソつまらない、ガスパールの付属品でしかない
「……やっと目が覚めたか」
男の声にハッと顔を上げれば、見慣れた
学園で戦術の授業を担当する講師で、剣術
常に無表情なオッサンなのに、今日は明確な
たかが騎士の
「ゴフッ、ブフッ! ……何の、用だ」(実際のクリスの発言は息も絶え絶えな状態ですが、読むのが面倒になるから大部分修正してあります)
「いらん騒動の後始末だ。まったく、余計な仕事を増やしてくれる」
「オレらじゃねえ。全部、ベル――ベレンガリアの仕業だ」
「ほう……となると目撃者の証言は、まさかと思う内容だが正しかったか」
言いながら、バルハウスの表情が更にシラケたものに転じる。
目撃者の証言って何なんだよ、と確かめるために問い返す。
「どういう、ことだ?」
「どうもこうも、自分が一番よくわかってるんじゃないのか、クリスティアン。婚約者のベレンガリアに浮気を
どこか楽し気な口ぶりの相手を怒鳴りつけたくなるが、今は大声を出せそうもない状態なので我慢するしかない。
無言で
「しかも、
「うっ……そ、それはっ! アイツがガスパール様を害そうと――」
「ならば、何故に斬らなかった!
バルハウスが、中ほどで折り曲げられ地面に転がるサーベルを指差す。
そして
「王族の護衛、という名目で武装を許可されたのに、素手の令嬢に惨敗するとは何たるザマだ。授業で何を学んできたのだ、愚か者! 更には、護衛の身でありながら、主人の安否すら確かめようとしないとは、どこまで
「うぃひっ――」
ガーッと
こちらの屈辱を掘り返す必要ないだろうに、何でワザワザ強調してくる?
オレがガスパールを最優先してるのは、言うまでもない当然のことだろう。
なのに王族を軽んじてると思えるのは、自分が軽んじてるからじゃないのか。
もしかして、下級貴族にも
「ガスパールは
「アイツは……ベレンガリアは、逮捕したんだろうな!?」
「馬鹿なのか、クリスティアン。目撃者が多数いる中での痴話喧嘩、しかもガスパールやお前の落ち度が明白で、当人は逃げる様子もないのに逮捕できるか。大体、相手はメービウス侯爵の娘だぞ」
「なっ……」
とはいえ、ガスパールも今回で完全にベレンガリアに愛想を尽かしたハズ。
だからアイツを罰するように強く言えば、
これ以上の勘違いを防ぐためにも、この件ではベルに現実の厳しさってモンを味わってもらわんとな――
※※※※※※
「こぉの……大馬鹿者がぁっ!」
「ぶべらっ!」
ベレンガリアの起こした暴力事件は、何故か
ベルが十日なのに俺は無期限で、一方的に殴られただけのマルガレーテは
なのに、その実家に戻るや
困惑しながら問おうとすれば、
「ぷぉっ――何なんですか、父上っ!?」
「それはコッチの台詞だっ! 何ということをしてくれたのだ、貴様はぁっ!」
一週間の入院でやっと鼻と歯の仮治療が終わったのに、これではまた逆戻りだ。
なので振り回される腕を掴みながら、いきり立つ父親が落ち着くのを待つ。
「ハァ、ハァ、ハァ……クリスティアン、愚かな貴様の
「何を
「それはない……もうそれはないのだっ、クリス! ガスパール様の父君、王弟エンラント大公の署名入りの手紙で、護衛の任を解くとの
何を言われているのか、
数秒かけて意味を
ガスパールが、オレを……十年を共に過ごした、このオレを
そんなワケがない、そんな事態が起こるワケないだろう。
「オレがクビなど……何かの間違いでは?」
「あの日の貴様の行動は、それほどの怒りを買ったのだ! メービウス候からも、公式の告発こそ免れたが厳重な抗議が来ておる! これで
「何もそんな……学内での抜剣は
「だからだっ、この馬鹿タレがぁっ!」
「んぼぅいっ!」
掴んでいた手を引き抜いた父が、顔を真っ赤にして拳を突き出してくる。
急な動きに対処できず、正面からモロに食らってしまった。
威力はそこまででもないハズだが、治療中の
「貴様はあの娘と長い付き合いかもしれんがな、世間的には王族の婚約者として知られている侯爵令嬢に、子爵家の次男坊でしかない
「ぱぁうっ!」
腰に下げた剣を
荒ぶった一撃を予想できず、首が折れるかと思う程の衝撃を受けることに。
「うがっ、はっ?
父を止めるための言葉は、連発されるキックで寸断された。
「この馬鹿者がっ、貴様などっ、
意識が
どうやらオレは、ベルのせいでトンデモない苦境に
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