14歳ー傭兵団『烏の爪』結成編 第14話 カラスの誕生


 俺は、目の前に立つ斧を持った盗賊の長――エイリークを見つめる。


 まさか鳶の長が、幼い頃にリリエットを攫ったあの人攫いだとは思わなかった。


 10歳だったあの頃、俺は、奴に手も足も出なかったのをよく覚えている。


 俺が見てきた中で誰よりも剣の才能があったアルフォンス。


 そんなあいつと一緒だったからこそ、ようやく勝てた相手。


 あの頃の俺はアルフォンスと一緒ならば、どんな相手だろうと勝てる気がしていた。


 だけど奴はもういない。今では奴は、俺の倒すべき敵となってしまったから。


 俺は一人で、新たな得た武器と共に、復讐の道を征く。

 

「撃て」


 俺は手を上げて、屋根の上にいるマリーゴールドへと指示を出す。


 マリーゴールドはその言葉に従い、エイリークに向けて矢を放った。


 その射線を読んだエイリークは、即座に振り返り、斧を振って矢を叩き落した。


 俺はその瞬間にエイリークへと詰めより、奴の背中に向けて剣を振った。


「!? 早ぇ!?」


 エイリークは振り返り様に斧を振って、俺の剣に当てて防ぐ。


 その斧の威力に圧し敗けた俺は、後方へと吹き飛ばされ、転倒してしまう。


 そんな俺にエイリークは容赦なく脳天に目掛け斧を振り降ろしてきた。


 やはり……元々剣士の器ではない俺に、このレベルの相手は厳しいか。


 まぁ、この展開は最初から予期していたこと。


「モニカ」


「はい!」


 転倒した俺の頭上を、槍がまっすぐと通っていく。


 エイリークはそれに気付くと斧を振る手を止め、後方へと下がり、寸前で槍を避けてみせた。


「今だ、ルキナ」


 背後からルキナが現れ、エイリークに斬り掛かる。


 エイリークは振り返ると、ルキナの剣を、斧に当て防いでみせた。


 ルキナの足の筋力は俺よりあるのか、ルキナは俺のように吹き飛ばされることは無かった。


 斧と剣が交差し、お互いに睨み合うエイリークとルキナ。


 ……なるほど。剣士としての才は、俺よりも確実にルキナの方が上とみえるな。


 反抗的だが、上手く手懐けることができれば、彼女は将来優秀な俺の駒になるかもしれない。


「おい、片目のガキ! お前、何者だ!? 何故、俺を知っていやがる!? 何故、この盗賊団を狙った!? スラムのガキじゃねぇだろ、テメェ!!」


 モニカの支えで立ち上がった俺に、そう声を荒げるエイリーク。


 俺はそんな奴に向けて、不敵な笑みを浮かべた。


「貴様に語る必要などはない。何故なら貴様はここで死ぬのだからな、エイリーク」


 俺は手を横にして、指示を出す。


「ガウェイン! ルキナの援護をしろ! モニカとジェイクは俺の傍で待機だ!」


「あいよ、大将!」


「はい!」「分かった!」


 それなりに戦闘経験のあるルキナとガウェインをエイリークの元に向かわせ、戦闘経験の浅いモニカとジェイクはすぐに指示を出せるように俺の傍に配置しておく。


 ガウェインがエイリークへ向けて斧を振り降ろすと、彼はルキナの剣を弾き、横に逸れることで斧を避けてみせた。


 一人の兵士としての力量・経験であれば、孤児たちが逆立ちしたって勝てないくらいの力を、エイリークの奴は持っている。


 だが相手が統率の取れた軍隊となれば、いくら突出した力を持っていたとしても、エイリークが行える手数は自然と減っていくもの。


 前後でエイリークを挟むルキナとガウェイン。


 俺は手を上げると、マリーゴールドに援護射撃を命じる。


「やれ」


 そう声を発した瞬間、屋根の上から一直線に飛んでいく矢。


 エイリークは放たれたその矢に気付き、横に飛び退いて避けるが、即座にルキナとガウェインが武器を持って彼に斬りかかる。


 エイリークは避けきれず、頬と腕を斬られ、浅い傷を作る。


 彼は鮮血を流しながら後方へと飛び退き、地面に膝を付くと、ゼェゼェと荒く息を吐き出した。


 ……状況はこちらの有利に働いている。


 いけるぞ。こいつらとならば、元騎士相手だろうと、恐るるに足りない。

 

「おい、ゲイリー! 手を貸せ! このガキども、厄介だ!!」


「ひ……ひぃぃぃぃっ!」


 エイリークの背後に立っていた、先ほどみかじめを回収しにきていた男ゲイリーは、か細い悲鳴を上げると……そのまま背中を見せて逃げようとした。


 しかし背後は炎に包まれているため、ゲイリーは足を止め、逃げ場を失ってしまう。


「背中を見せるとは、間抜けな奴だな。この状況で逃げられるとでも思ってんのか?」


 ゲイリーの背後から現れたルーカスが、彼の首を背後からナイフで掻き切った。


 その瞬間、ゲイリーは絶命し、前のめりに倒れていった。


 その光景を見たエイリークは、ギリッと奥歯を噛む。


「馬鹿野郎……! 下手打ちやがって…‥!!」


 彼がそう言った瞬間、エイリークの肩に矢が突き刺さった。


 エイリークはその痛みに眉間に皺を寄せると、屋根の上を睨み付ける。


「く、糞!! 雑魚どもが、いっちょ前に戦略を練りやがって……!!」


 怒り狂うエイリーク。


 そんな彼の周囲を取り囲む、ルキナとガウェイン。


 俺は前へ出ると、エイリークに声を掛けた。


「さて、勝敗は既に決まった。エイリークよ、貴様には聞いておきたいことがある。ガストンについてのことだ」


「ぐっ……ガストン様について、だと……?」


「そうだ。お前は何故、ガストンに野放しにされている? 奴からしてみればお前は人攫いを命じた、目の上のたん瘤的な存在でしかないはずだろう。口封じに殺されてもおかしくないと思っていたが、生かされている理由は何だ?」


「随分と俺のことを知っているようだな、片目のガキ。俺は単に、ガストン様に見込まれて、アグランテ家とは有効なビジネス関係を築いているだけだ。麻薬に奴隷販売。アグランテ家が実権を握ってからというもの、裏稼業は盛んになってなぁ。その裏稼業で得た金をガストン様に納め、変わりに犯罪を見過ごしてもらっているってわけだ。このアガリが美味しいから、ガストン様は俺を切り離せないんだよ」


「なるほど、金で命を買ったというわけか。よく分かった。貴様が救いようのない、アグランテ家の犬だということはな」


 俺は剣を構え、エイリークの首を刎ねようと、睨み付ける。


 ―――――その時だった。


 エイリークは懐から一つの玉を取り出すと、それを地面に投げつけた。


 その瞬間、バフッという音と共に煙が巻き起こり、周囲は煙幕で包まれていった。


「!? 煙玉か!? 全員、周囲の警戒を怠るな!!」


 俺はそう命令を出し、剣を構えて周囲を伺った。


 数秒後、煙が薄くなると、そこにはエイリークの姿が無かった。


 俺は背後を振り返り、道の奥を走るエイリークの背中を発見する。


 そうして、完全に状況を理解する。


「煙に乗じて攻撃に転じると思っていたが、逃げたか……! 全員、ついてこい! 奴を追いかけ―――」


「はっ! あんな奴、アタシ一人でぶっ倒してやるよ!」


 そう言って前を走って行ったのは、ルキナだった。


 俺は彼女の背中に向けて手を伸ばし、声を掛ける。


「待て! 先行するな、ルキナ! 奴は手負いだ、そこまで走れない! 全員でいくぞ!!」


 ルキナは俺の言葉を意に返さず、そのまま走っていく。


 速いな……なるべく隊列を置いて行きたくはなかったが、仕方ない。


「俺はルキナに加勢しに行く! お前たちは隊列を乱さず、後からついて来い!」


「は、はい、わかりました!」


 俺は「チッ」と舌打ちをした後、彼女の後を追いかけ、全速力で走って行った。





      ◇  ◇  ◇  ◇  ◇





《ルキナ 視点》



「どこにいった、あの男は」


 アジトの南の方角は、まだ炎が燃え移っていない建物が建ち並んでいる。


 そこで一人、アタシ……ルキナは剣を持って歩いていた。


 きっとあいつを一人で倒してみせたら、レイスの奴も驚くに違いない。


 アタシは騎士王家に仕える騎士の娘だ。あんな誰とも知れない子供に敗けるはずがないんだ。だってアタシの父は……ガイゼリオン様にお仕えする高潔な騎士だったのだから。


「そうだ。アタシは……父と同じように王国の騎士なんだ。だから、盗賊団の団長くらい、一人で倒せて当然のはずだ」


 両親が生きていた頃、アタシは一度だけ、グレイス殿下にお会いしたことがある。


 あれは10歳の春の晩餐会の日だ。父に連れられて晩餐会に参加したアタシは、父と共に、衛兵の真似事のようなことをしていた。


 父と共に入り口脇に立っていた時。グレイス殿下が、友人たちと一緒に目の前を通って行くのを見かけた。


 妹君のアリア様、ブランシェット家の令嬢リリエット様、騎士見習いのアルフォンス。三人は仲良さそうに、グレイス殿下と話をしていた。


 グレイス殿下は……とても綺麗な顔をしていた。


 まるで絵画から飛び出してきたような美しい顔立ち。幼い頃から無骨な男たちに囲まれて育ったアタシは、あんなに中性的で綺麗な男の子を見たのは初めてのことだった。


『おや? 君は……初めて見る顔だね』


 普通、貴族たちは入り口に立っている騎士に声を掛けたりはしない。


 それなのにグレイス殿下はわざわざアタシに声を掛けてくれた。


 アタシは緊張した面持ちを浮かべ、グレイス殿下に言葉を返した。


『は、初めまして、グレイス殿下! 親衛隊隊長フォーキンスの息女、ルキナと申します! こうして殿下のお顔を拝見することができて、とても嬉しく思います!』


『ルキナか。晩餐会の警護をしてくれて感謝する。君たち騎士たちのおかげで、王宮は守られている』


『も、勿体なき御言葉でございます!』


 そう言ってグレイス殿下は父と挨拶をすると、友人たちの元へと戻り、その場から去って行った。


 その後、晩餐会ではアグランテ家のガストンがトラブルを起こした。


 その時にグレイス様はガストンに剣を向けられたが、一歩も退くことはなかった。


『ガストン殿。僕は貴方に親愛の情を持っています。僕たちは同じ血を引いた家族ではありませんか。憎しみ合う必要など、何処にもありません。貴方の容姿を否定する者など、価値のない人間でしょう。王族としてここは寛容な心で見過ごされては如何でしょうか?』


 その姿を見て、アタシは思った。この方はいずれ王国を変える御方だと。


 この高潔な魂を持つ方の剣になりたい、と。


 だけど―――グレイス殿下のお傍には既に、剣となる騎士がいた。


『グレイスくん、大丈夫だった!?』


 ガストンとのトラブルの後、ホールの端に戻ったグレイス殿下に、騎士見習いのアルフォンスがそう声を掛けた。


 同じ騎士見習いなのに、グレイス殿下と気さくに会話をしているアルフォンスに、アタシは嫉妬を覚えた。


 いずれアルフォンスを倒し、殿下の剣になってみせると、そう誓ったのを今でも覚えている。


「……そうだ。ガストンに降ったアルフォンスなんかよりも、グレイス殿下を信じ忠義に死んだ父上と、孤児になったアタシの方が、グレイス殿下の騎士に相応しいはずだ。王家の剣である親衛隊隊長の血を引くアタシが、レイスより弱いはずがない!」


 そう言ってアタシは、エイリークを探すべく、周囲を確認していく。


 ―――その時だった。突如路地から現れたエイリークが、アタシに目掛け斧を振り降ろしてきた。


 アタシはその死角からの攻撃に、思わず反応が遅れてしまう。


「しまっ―――」


 斧が振り降ろされる寸前。


 突如目の前にレイスが現れ、彼はアタシの身体を突き飛ばして、エイリークの攻撃から庇った。

 

 ザシュと鮮血が舞い、アタシを庇ったレイスの背中が、斧で斬り裂かれる。


「レ、レイス!?」


 アタシは尻もちを付いた後、レイスを受け止める。


 彼の背中を見ると、ダラダラと血が流れていた。


 傷は深くは無さそうだが、アタシを庇って彼がダメージを負ったことに、ひどく動揺を覚えてしまう。


「な、何で、お前、アタシを庇って……」


「ゼェゼェ……お前を失うわけにはいかないからだ、ルキナ」


「え……?」


 レイスは即座に立ち上がると、エイリークが放ってきた斧を剣で防ぐ。


 しかし彼は斧の威力に耐え切れず、後方へと押しやられた。

 

 だが、レイスは手から剣を離さない。ただまっすぐに、エイリークに鋭い眼光を向けている。


「俺はいずれ、自分だけの騎士団を創り上げ、この国を奪うつもりだ。簒奪者であるアグランテ家を討ち滅ぼし、この国に真の平和を取り戻す!! そのためにはルキナ、お前の力が必要だ!!」


 その言葉にアタシは……胸が高鳴るのを感じた。


 な、何だ、この感情……。


 ア、アタシ……もしかしてあいつに助けられて……嬉しく思っているのか……?


 アタシは首を横に振ると、立ち上がり、レイスの横に立ってエイリークに向けて剣を構えた。


 さっきまでこいつのことが大嫌いだったのに、何故か、二人で並んでいるととてもドキドキした。


「いくぞ、ルキナ!」


「あ……あぁ!」


 レイスが走るのと同時に、アタシは、エイリークへと向かって駆けだした。






      ◇  ◇  ◇  ◇  ◇





 俺はルキナと共に、エイリークに向かって剣を振り上げる。


 俺の剣は簡単にエイリークによって弾かれたが、背後から現れたルキナが即座に第二撃をエイリークに食らわした。


 エイリークはその剣を後方へと飛び退き回避するが、完全に避けきることができず、胸に浅い傷を作った。


 その光景を見て、俺はすかさず詰め寄って行く。

 

「いいぞ、ルキナ! 相手は手負いだ! このまま手数で押し切るぞ!」

 

 二人掛りで、連続でエイリークに向かって剣を振っていく。


 二体一、それも、手負いの状況。


 俺とルキナの連続攻撃を斧を使って器用にいなしていくが、エイリークの顔には、確かな疲れの様子が見えていた。


「く、くそ……! このガキども、調子に乗りやがって……!」


 その時。エイリークは、まずは倒しやすいと見た俺に向かって、大振りで斧を振ってくる。


 大振りで武器を振る隙を待っていた俺は、ニヤリと笑みを浮かべ……しゃがみ込んだ。


 そして、彼の左脚に向け、足払いを掛けた。


「ぐっ、ぬぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!?!?」


 左脚の脛。それは、四年前に見つけた奴の弱点。古傷の痕。


 叫び声を上げたエイリークは、ドシンと背中を地面に付け、倒れ込む。


 その姿を見た俺は、ルキナに命令を出した。


「今だ……やれ!! ルキナ!!」


「分かった!! たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 ルキナは跳躍すると、エイリークの身体に圧し掛かり……彼の胸に目掛け、剣を突き刺した。


 コフッと口から血を噴き出すエイリーク。


 そして命を失う間際、彼は、俺に視線を向けてきた。


「な……なるほど……左脚の脛……お前の正体がようやく分かった。まさか生きていたとは思わなかっ、た、グ……イス……」


 そう言って、エイリークの意識は途絶えた。


 奇しくも、四年前と同じような結果になったな。


 あの時のアルフォンスはエイリークの命を絶つことはしなかった。


 だけど、ルキナは俺の命令通りに、奴の命を奪った。


 結局、優しさだけではこの世界は救えないということだ。


 悪人に慈悲を掛け野放しにすれば、誰かが不幸を見てしまう。


 俺はもう失敗はしない。ハンナのような優しい人が死なない世界を作るためにも、確実に、アグランテ家に与する者には消えてもらう。


 それが例え……かつての親友だったとしても。


 俺は修羅の道を進むぞ、アルフォンス。


「レ、レイス。大丈夫か?」


 そう言ってルキナは俺に近寄ると、肩を貸してくれた。


 俺はそんな彼女にフッと笑みを浮かべる。


「ルキナ。お前は俺を……酷い奴だと思うか?」


「え?」


「お前たちに人殺しをさせたことについてだ。どう思う?」


「……仕方ないことだろ。レイスの言う通り、アタシたちはこのままじゃ盗賊団に搾取されたままだった。いや、下手したら奴隷にさせられていた可能性もある。誰もお前を責めないよ、レイス。必要だったんだ、この殺しは」


「そうか。俺も同じ気持ちだ。自分の未来を掴むためには、例え暴力を用いてでも切り開くしかない時がある。虐げられてきた者にしか分からない考えだろうな、この思考は」


 そう口にして微笑を浮かべた俺に、ルキナはそっぽを向き、口を開いた。


「……何で……何で、お前、助けに来てくれたんだよ。どう見ても命令を無視したアタシが悪かっただろ、さっきのは」


「言っただろう。お前が必要なんだ、ルキナ」


「ッッ!! は、歯の浮くような台詞吐いてんじゃねぇよ、キザ野郎!! 本当、アタシはお前が大嫌いだ! ……ま、まぁ? 必要だっていうのなら? 特別に協力してやんなくもないけどよぉ……」


 彼女のその照れた横顔を見て、俺は思わず、リリエットの影を重ねて見てしまった。


 突然険しくなった俺の顔に、ルキナは動揺し、首を傾げる。 


「ど、どうしたんだよ? 突然そんな怖い顔して……ア、アタシ、何か変なこと言った?」


「いや、何でもない。ルキナは女の子なんだから、もう少し言葉遣いを丁寧にした方がいいなと、そう思っただけだ」


「う、うるさいなぁ!! ア、アタシの勝手だろ!!」


 ルキナと和やかに会話をしていると、アジトの奥から、孤児たちが姿を現した。


「おーい、二人ともー!」


 俺たちはそのまま歩みを進め、仲間たちと合流をする。


 こうして俺たちは、盗賊団を無事に倒し、自由を手に入れたのだった。




      ◇  ◇  ◇  ◇  ◇




 背後で燃え盛る盗賊団のアジト。


 それを背景に、俺は荒地の丘に立ち、崖下にいる孤児たちに向けて声を張り上げた。


「盗賊団『鳶』の首魁、エイリークとその部下たちは死んだ! これも全ては君たちの働きのおかげだ! 感謝をする!」


 その言葉に、マリーゴールド、ジェイク、モニカ、ガウェイン、アビゲイルは拍手を鳴らす。


 俺は続けて、皆に声を掛けた。


「俺の目的を皆に伝えておこう! 俺はいずれ、自分だけの騎士団を創り上げ、この国を奪うつもりだ! 不当に王位を奪った簒奪者であるアグランテ家を討ち滅ぼし、この国に真の平和を取り戻す! 俺は……弱者が泣かなくても良い世界を創る! 理不尽なこの世界そのものが、俺の敵だ!!」


 俺のその言葉に、モニカは目を丸くし、口を開いた。


「そ、それって、つまり……自分の国を作る、ということでしょうか……?」


「その通りだ。俺はここに傭兵団『カラスの爪』を発足する。カラスとは、虐げられ、ゴミを漁ることしか許されなかった我らのこと。だが先ほどのように、カラスの群れがトンビの群れに勝つことだってある。我らの目的は虐げられた者たちを救い、力を増やして、この国に反旗を翻すことだ」


 俺は天に剣を掲げ、皆を見下ろした。


「君たちはもう自由だ! 俺についてくるかどうかは、自分の意志で決めて良い! だが、俺についてくるのならば……最初に言った通り、安定した生活に金銭の類を保証してやろう! 俺と共にアグランテ家に、この国に立ち向かう気があるならば、武器を掲げよ! そうすれば君たちは『烏の爪』の一員だ!!」


 俺のその言葉に、皆、迷いなく武器を天高く掲げた。


 俺はその光景に、不敵な笑みを浮かべる。


「いくぞ! 俺たちの前に、敵はいない!」

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