幼年期編 第4話 リリエット探検団結成




 晩餐会が終わった日の夜。午後二十二時。


 僕は就寝前に、父上に呼び出されていた。


 王の私室の扉をノックし、僕は、扉の向こうに声を掛ける。


「父上、お呼びでしょうか?」


「おぉ、グレイス! 待っていたぞ! 入ってきなさい」


「失礼します」


 部屋の中に入ると、父上は机の上で書類を眺めていた。


 父上は書類を机の上に置くと、うーんと背伸びをし、席を立って僕の元へと近付いて来る。


「突然呼び出してすまないな、グレイス。丁度、お前と話しをしたいと思っていたのだ。さぁ、ソファーに座れ。そうだな……昔のようにボードゲームでもしながら話をするとしようか」


 そう言って父上は、兵を駒に見立てたボードゲーム『ボーンナイト』を棚から取り出した。


 テーブルの上に盤を置き、駒を揃える父上を見つめながら、僕はソファーに座る。


 そして駒を置き終えた父上は向かいのソファーに座ると、ニコリと笑みを浮かべ、ナイトの駒を前に進めた。


「最近は、カトレア……王妃が亡くなってから、お前と二人きりで話すことも少なくなってしまったな。許せ、グレイス。アリアの世話といい、婚約の件といい、お前には苦労を掛けっぱなしだ」


「いいえ。父上の多忙は、僕も理解していますから」


 そう言って僕も、ナイトの駒を前に進めた。


「遊びたい盛りだというのに、お前には丸一日、剣や座学を学ばせてしまっている……王の息子であることで、私はお前の自由を奪ってしまっている。王子に産まれてしまったこと、後悔はしていないか?」


「していません。僕は、父上と母上の子供に生まれることができて、とても幸せです」


「では、寂しい思いはしていないか? 最近は私もろくにお前に構ってやれていないからな」


「友達と妹がいます。みんながいるおかげで、僕は元気でやれています」


「まったく。相変わらず子供らしくないな、お前は。父親にも弱みを一切見せないとは。いや……大人にならざるをえなかった、と言った方が正しいか」


 そう言って父上はふぅと短く息を吐くと、再度開口した。


「湿っぽい話になってしまったな、すまない。さて、グレイス。お前は幼少の頃からこの軍戦に見立てたボードゲーム『ボーンナイト』が得意だったな。昔のお前は負けず嫌いで、よく私に何度も挑んで来ていた。実に、懐かしい思い出だ」


「父上によく敗けていたのは、7歳の頃の話です。僕ももう10歳。あの頃のようにはいきませんよ?」


「はっはっはっ! 悪いが息子相手だとしても手加減はしないぞ! 私は千の騎士を従える騎士王だ! たかがゲームといえども、指揮で敗けることなど許されない!」


 そう口にして、父上はまた駒を進める。


 僕も笑みを浮かべながら……駒を進めていった。




 30分後。僕は、持ち駒を全て奪いきり、王手を掛け、父上とのボードゲームに勝利した。

 

「なん、だと……!?」


 父上は目を見開いて盤上を見つめ、次に、僕へと驚いた目を向けてくる。


 僕はその視線に照れながら、ポリポリと頬を掻いた。


「父上、手加減してくださったのですよね? 何か、すいません……」


「て、手加減などしておらぬ!! グレイス、お前……!!」


 父上は席を立つと、僕の肩をがっしりと掴んでくる。


 そして、キラキラと目を輝かせた。


「グレイス! お前には、軍師としての才能がある!! この私よりも、指揮の才があるぞ!!」


「え、えぇ!? いや、たかがボードゲームですよ!? それで指揮能力があると判断するのは、どうなんでしょう!?」


「このボードゲームは、兵法の基礎のようなものだ!! それでこの私を打ち破るのだから、お前には間違いなく才能がある!! しかも10歳ときた!! 次代の王は名君ときたな!! はははは!!」


「わっ、ちょ、父上!?」


 父上は僕の脇に手を挟み持ち上げると、部屋をグルグルと回り始めた。


「以前、剣の腕が伸びないことを悩んでいる様子だったが、グレイスよ! お前は剣士ではない! お前は根っからの軍師だ! 兵を動かし、敵の牙城を落とす! 私は兵を動かすよりも剣を振ることが得意だったが……なるほど! 頭が良いところはカトレア譲りだったわけか!! お前が作る未来の王国が、父は、今から楽しみで仕方がない!!」


「ち、父上! 目が、目が回ります!!!!」


「はっはっはっ!! そーれそーれ!! はっはっはっ!!!!」


 こうして僕は、何故か父上に部屋の中でぶん回されるのであった。


 でも、久しぶりに父上と二人で話すことができて良かったな。


 何となく、母上が亡くなってから胸中に漂っていた重いものが、薄れていくように感じられた。





      ◇  ◇  ◇  ◇  ◇




 ――――翌日。


 チュンチュンと囀る小鳥たちの合唱に、意識が覚醒する。


 目を開けて天蓋付きのベッドから上体を起こすと、カーテンの隙間から漏れる光が、僕の目に突き刺さった。


 それと同時に、部屋の扉をノックして、廊下の向こうから声が聞こえてくる。


「グレイス様。おはようございます、ハンナでございます」


「あぁ、おはよう、ハンナ。入ってきて大丈夫だよ」


「失礼致します」


 そう言って部屋の中に入ってきたのは、青い髪の、無表情のメイド。


 見慣れた付き人のその顔に笑みを浮かべて、僕はベッドから立ち上がり、姿見の前に立った。


 するとハンナは僕の衣服を慣れた手つきで脱がしていった。


 僕は何処か気恥ずかしさを覚えながら、ハンナに声を掛ける。


「ハンナ。僕ももう子供ではない。そろそろ、自分で服を着替えたいのだが……」


「グレイス様は、ハンナから生き甲斐を奪う気なのですか?」


「い、生き甲斐?」


「はい。ハンナは寝る前に、次の日のグレイス様に似合う衣装を考えることが、一日の楽しみなのでございます。あと、見目麗しい美少年の柔肌に触れることも、私の生き甲斐……コホン。何でもございません。けっして私はショタコンではありませんので、ご安心を」


「いや、全部言っているよ!? 怖いんだけど、このメイド!? いつか僕、君に襲われたりしないかな!?」


「殿下。高位の身分である者は、自身のメイドで夜のことを学んでいくそうですよ。興味がおありでしたら、いつでも命じてくださいね。ニコリ」


「ニコリじゃないんだけど!? 僕はそんなことしないぞ!?」


 ハンナとやり取りしている内に、僕は寝間着から王子の衣装へと着替えさせられていった。


 姿見を見ると、そこにいるのは、黒髪に紅い目をした少年の姿があった。


 そんな自身の姿を見つめていると、ハンナがポソリと口を開いた。


「……私は、元はスラムで行き倒れていた孤児でした。そんな私を拾い上げ、メイドにしてくれたグレイス様とカトレア様には、感謝しかありません」


「確か、3年前……僕が7歳で、君が14歳だった頃か。母上と馬車に乗って移動している時に、偶然、君を見つけたんだったな」


「はい。グレイス様は、カトレア様がお亡くなりになられてからこの二か月間、ずっと毅然としていました。ですが……」


 ハンナはそう言って僕を背後から抱きしめると、優しく笑みを浮かべた。


「ですが、このハンナの前でだけは素を見せていただいても構わないのですよ。私はグレイス様が王子の重責で潰れてしまわないかいつも心配なのです。カトレア様亡き今、私の主人は、貴方様だけですから。例え世界全部がグレイス様の敵に回ろうとも、ハンナだけは、貴方様の味方です」


「ありがとう、ハンナ。……あ、あと、その、胸が……後頭部に当たっているんだけど?」


「当てているのです」


 相変わらず何処かズレている自分のメイドに苦笑しつつ、僕は、ハンナと共に部屋の外へと出た。






      ◇  ◇  ◇  ◇  ◇





 食堂での朝食を終えた僕は、剣の稽古までの時間、いつものように丘の上の木の下で本を読んでいた。


 ここには母上のお墓があるので、ついつい来てしまいがちだ。


 それにとても静かで、そよ風が気持ちいから、本を読むのに最適の場所でもある。僕のお気に入りスポットだ。


「まーた、こんなところで本を読んでるのね、グレイスは」


 その声に本から視線を外すと、目の前に居たのは、腰に手を当てて立っているリリエットと息を切らせているアルフォンスだった。


 僕は二人に笑みを浮かべ、声を掛ける。


「おはよう、二人とも。アルフォンスだけでなく、リリエットが朝から王城にいるのは珍しいね」


「ほら、昨日、あたしたち、婚約発表したじゃない? お父様ったら機嫌良くなっちゃって、これからのことを考えて陛下ともっと親密になっておかねばーって、朝から王様に謁見しに行ったの。本当、まだ婚約の段階なのに、浮かれちゃって馬鹿みたいだわ」


 そう言ってやれやれと肩を竦めるリリエット。


 その後、彼女は何故かニヤリと笑みを浮かべ、再度口を開いた。


「そんなことよりも……今から城を抜け出して城下町に行くわよ、グレイス。さっき馬車で王城へと向かう途中に、最上級冒険者、アダマンチウム級のパーティーとすれ違ったの。まだ冒険者ギルドにいると思うから、見に行きましょう」


 リリエットは僕の手を無理矢理引っ張り、起き上がらせる。


 僕はそんな彼女に、慌てて開口した。


「い、いや、ちょっと待ってくれ、リリエット! お付きの兵も無く、僕たちだけで行く気なのか!?」


「そりゃあ、そうでしょ。兵士を呼んだら、絶対止められるに決まっているわ。それじゃあ城下に行けないじゃない。陛下とお父様がお話している今がチャンスでしょ。ほら、さっさと行くわよ」


「ア、アルフォンス! 見ていないで止めてくれ!」


「む、無理だよ、グレイスくん……僕、さっき止めたら、頬を抓られちゃった……シクシク……」


 伯爵令嬢に頬を抓られただけで泣くなんて……それでも元騎士団長の孫なのか、アルフォンス!


「リリエット探検団の出陣よ!」


 こうして僕とアルフォンスは、リリエットに連れられ、城下町へと行くことになるのだった。





      ◇  ◇  ◇  ◇  ◇




 城下町の露店通りには、多くの人々が行き交っていた。


 城門から町の正門へと続くこの大通りには、行商人たちが様々な品を売っており、街征く人々はそれらの露店に目を通しながら通りを歩いている。


 そんな天下の往来を、リリエットは楽しそうに鼻歌まじりで進んで行った。


 そんな彼女の背後を、僕とアルフォンスは呆れた表情を浮かべながらついて行く。


「あたし、前から、この街を馬車ではなく自分の足で歩いてみたかったの。夢が叶ったわ」


「リリエット。先に言っておくけど、冒険者ギルドを見たらすぐに城へと戻るんだぞ? 外は危険も多いんだ」


「分かっているわよ。でも、あたし、炎の魔法を使えるのよ? どんな奴が現れようとも、敵じゃないわ」


 そう言ってリリエットは人差し指の先に小さな炎を点火してみせる。


 そんな彼女に、アルフォンスはポソリと口を開いた。


「……そんな小さな火の粉じゃ、誰もやられないよ」


「何か言った? アルフォンス~?」


 リリエットに睨まれたアルフォンスは、すぐに僕の後ろに隠れる。


 僕はそんな二人を見て、思わずため息を吐いてしまった。


「もう、喧嘩は良いから。さっさと冒険者ギルドに行って帰ろうよ」


「ええ。憧れの冒険者に会えるなんて、ワクワクするわ」


 そうして僕たちは、冒険者ギルドへと向かって歩みを進めて行った。


 



 冒険者ギルドの中は酒場と併設されているのか、とても活気がある場所だった。


 筋骨隆々の無頼漢や、妖しい恰好をした女魔導士、弓を装備した者など、様々な恰好をした冒険者たちが麦酒の入ったジョッキ片手に談笑していた。


 その光景にリリエットは手を合わせ、目を輝かせる。


「きゃー! あれは、銀等級冒険者【龍の爪】だわ! あ、あれは、金等級の【アルストロメリア】よ! あっちにいるのは同じく金等級【夜明けの向こうに咲く花】! そしてそして……奥にいる四人組が、最上級冒険者、アダマンチウム級の【蒼穹を穿つ剣】!! まさか写真じゃなくて本物を見れるなんて、感激だわ!!」


 冒険者ギルド内をキョロキョロと見渡し、目を輝かせるリリエット。


 僕はそんなリリエットの背中に、何処か引きながら声を掛ける。


「リリエットって本当に冒険者が好きなんだね……」


「当たり前でしょう? あたし、本当だったら冒険者になるのが夢だったんだもの! 海や山を越え、魔物を狩り、宝を持ち帰る……あたしも伝記で読んだような冒険をいつかしてみたい……! 誰もがそんな英雄の姿に憧れを抱くものでしょう!?」


「どうだろう。僕は父上の跡を継ぐことしか頭に入っていなかったからな」


「僕も、あんまり怖いところには行きたくないなぁ」


「あんたたち、それでも男の子なわけ!? 情けないわねぇ!」


 そう言って腕を組んで怒るリリエット。そんな彼女の背後から、ある女冒険者が声を掛けてきた。

 

「フフ。私たちに憧れてくれているのは嬉しいけど、ここは子供が入っちゃいけない場所なのよ、お嬢さん」


 リリエットが振り返ると、そこにいたのは、腰に剣を装備したハット帽子の女剣士だった。


 その姿を見てリリエットは再び目を輝かせると、ポーチから紙とペンを取り出し、それを女剣士へと手渡す。


「【蒼穹を穿つ剣】のフレイヤさんですよね!! サ、サインください!! ファンです!!」


「いいよ。でも、子供だけで冒険者ギルドに入るのはもう駄目よ。次からは大人になって、冒険者ライセンスを取れる年齢になったら、またいらっしゃい」


「はい♡ ……と、言いたいところですけど、多分、それは叶わない夢だと思います」


「え?」


「失礼致します」


 リリエットはサインを受け取ると、頭を下げる。


 そして僕とアルフォンスの手を引っ張ると、ギルドの外へと出て行った。




「それは叶わない夢って……リリエット、君は冒険者になりたいんじゃないのか?」


 そう声を掛けると、ギルドの裏通りを歩くリリエットは俯きながら開口した。


「だって、あたし、貴族令嬢で、あんたの婚約者だもの。冒険者になんてなれないわよ」


「そんなことは……」


「でも、勘違いしないでよね。あたしは別に後悔なんてしてないから。今では、王妃としてこの国を守るのも悪くはないなって思ってる。……ま、まぁ? どうせ非モテで根暗なグレイスのことだし? このリリエット様がいなかったら結婚する相手もいないでしょう? だから特別に婚約、受け入れてあげるわ。感謝しなさいよね」


 そう言ってリリエットはフンと鼻を鳴らし、路地を曲がっていった。


 僕とアルフォンスは、そんな彼女の姿にクスリと笑みを溢した。


 そして、リリエットに続いて遅れて路地を曲がった―――その時。


 路地裏に隠れていたのか、突如、人相の悪い男が目の前に現れる。


「え?」


 突然現れた男の姿に、驚きの声を溢すリリエット。


 男は有無を言わさず、リリエットを脇に抱きかかえると、そのまま裏路地を走って行った。


「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


「え……!?」


 僕は一瞬で起こったその出来事に唖然とするが、すぐに我に返り、走り去っていく男を追いかけることに決める。


「アルフォンス! リリエットが攫われた! 追いかけるぞ!!」


「え? え?」


「早くしろ!! リリエットを助けるんだ!!」


「う、うん!!」


 僕の声に、アルフォンスが遅れて付いて来る。


 くそ……ギルドへ通る道はこの路地裏の道しかなかったとはいえ、油断したな。


 相手は貴族だと分かっていてリリエットを攫ったのだろうか?


 いや、今、そんなことを考えている余裕はない。


 何としてでも、あの人攫いに追いつき、彼女を助けなければ……っ!!





    ◇  ◇  ◇  ◇  ◇





「お頭! 命令通りにブランシェット家の令嬢を攫ってきましたぜ!」


 王国のスラム街、地下にある居酒屋。


 扉を開けて店内に入ってきた男は、ポイと、縄で縛ったリリエットを床に放り投げた。


 床に転がったリリエットは、周囲に居る五人の男たちを睨み付け、声を張り上げる。


「な、何なのよ、あんたたちは! あたしを攫って何がしたいわけ!」


 その言葉に、奥のカウンター席に座って酒を飲んでいる、集団の長と思しき男が口を開く。


「俺たちはさる高貴な御方からたんまりと金を貰って、あんたを攫ってくるように言われたんだ。まっ、怪我したくなかったら大人しくしているんだな、嬢ちゃん」


「さる高貴な御方? それって誰のこ――――」


「リリエット!!」


 遅れて店内に入ってきたグレイスと、アルフォンス。


 その二人を見て、男はチッと舌打ちをした。


「付けられたな、馬鹿が!」





    ◇  ◇  ◇  ◇  ◇




 僕はゼェゼェと荒く息を吐き、店内にいる男たちを見つめる。


 ざっと見るに五人、か。見たところゴロツキのように見える。

 

 見る限り、話が通じそうな相手ではないな。


 リリエットを攫ったのは、身代金目的か?


「な、何でこのガキどもがここに……!? こいつらは確かに撒いたはず……!!」


「はぁはぁ……僕とアルフォンスは毎日ギルベルトに鍛えられているんだ。あれくらいだったら、追い駆けるのなんてわけないさ」


 僕は口元を腕で拭って息を整えると、男たちに向けて再度口を開いた。


「リリエットを放せ。今だったら、見逃してやる」


「んの……舐めてんじゃねぇぞ、このクソガキが!」


 男が手を伸ばしてくる。


 僕はその腕を身体を横に逸らすことで避けると、男の腰の鞘から剣を抜き取り、その剣の切っ先を男の喉元に付きつけた。


「なっ……!」


「子供だからって、舐めないことだ。職業軍人である騎士ならともかく、そこら辺の大人には敗ける気はしない」


 僕は男の喉元に剣の切っ先をあてがいながら、奥にいるリーダー格らしき男に声を掛ける。


「部下を殺されたくなければ、リリエットを引き渡せ! そうすれば僕たちはすぐにここを出て行く!」


「……威勢の良い坊ちゃんだ」


 そう口にして席を立つと、リーダー格らしき大男は立ち上がり、僕の前に立った。


「ほう? 嫌な目をしているガキだな。剣に相当な自信があると見える。さっきの身のこなし、王宮剣術らしき気配があったが……もしかして、お前、グレイス王子か?」


「答える義務はない」


「ははははは! やはりお前は騎士王ガイゼリオンの息子か! いいぜ、クソガキ。だったらゲームをしよう。この俺様……エイリーク様の身体に一回でも傷を付けることができたら、嬢ちゃんは見逃してやるよ。勿論、後ろにいるガキも参戦していい。二人掛りで俺の身体の何処かにダメージを与えられたら、お前らの勝ちだ」


 その言葉に、背後にいるアルフォンスが怯えた声を漏らす。


 僕はそんな彼を肩越しに一瞥した後。部下の男の喉元から剣を離した。


「本当に、お前に一度でも傷を付けることができたら、リリエットを開放してくれるんだな?」


「あぁ。かすり傷でも負けを認めてやるよ。俺様は、元騎士だ。約束は守るさ」


 そう言ってエイリークと名乗った男は、笑みを浮かべた。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

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