第38話

 Extra Legal Justice Rangers


 超法規的私刑戦隊ちょうほうきてきしけいせんたい。略称EJR。


 その主宰である剣寛つるぎひろしは、史上最年少裁判官としてその名を世間にとどろかせた俊英。父は人権派弁護士として知られた人物だが、剣が高校を卒業する前に他界した。


 EJRでの活動は剣の裏の顔である。その名の示す通り法で裁けぬ悪を罰する組織だからだ。


 EJRはそして、カラスを追っている。


 独自の判断で悪を懲らす姿勢こそ同じだが、その基準が違う。裁きかたが違う。このままカラスを野放しにするわけにはいかない。


 剣は事務所の窓からZ市街を見下ろしてそう思うのだ。


 自分が生まれ育ったこの街を、父が愛した街を、守らなくてはならないと強く思っている。


 幸いにも資金はある。苦学生だった大学時代から証券取引や投資を学び、また、学べば学んだだけ知識が肥るたちであったから、若造には分不相応な財産を持つことができた。その資金を元手に不動産を購入、今では貸しビル業の収入だけでも数千万、筆頭株主となっている企業も順調に業績を伸ばし、収入は億単位であった。悠々自適に暮らすことは十分すぎるほど可能だが、法の世界で生きたいという思いは揺るがなかった。いくつもの苦労を重ねたことで、人の役に立つ悦びを知ったのだ。


 容姿端麗。上背こそそれほど高くないが、彼の知性には、人を見下ろすほどの身長は似合わない。

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