第31話
「リベリュル。赤い看板にトンボの絵が描いてます。そのお店、深夜はバーになるんですけど、カウンターに座って表示がない、とあるメニューを頼むと、帰るころには店の裏にあるゴミ箱に入っているそうです、薬。それで、お代は飲み代として徴収するとか」
「内偵進めれば、すぐ検挙できそうなもんだが」
「見縊られているのか人手不足なのか、あるいは袖の下、かしら」
ふんと鼻で笑って、浄は立ち上がった。どれも正解だと思ったからだ。
「その薬はどれくらい危険なんだ?」
「使用量次第だそうで。疲れを取りたいならこのくらい、気分を揚げたいならこのくらいと。依存性も高いのでとても怖い薬だと聞いてます。使用量を間違えてしまうと、脳が開く、とか」
「どういう意味だ」
「さあそこまでは」
おそらくこの女は浄の裏の顔を知っている。眼鏡の奥の黒目がちな瞳がそう云っている。そこが、警察関係にも知り合いが多いらしいこの主人を信頼している理由だ。
浄の裏の顔を察知して尚、誰にももらさず、こうして普通に会話している。
「危ない薬に興味をもって、どうなさるの?」
「このところ疲れがとれなくてね。ごちそうさん」
浄はその足でリベリュルへ向かった。
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