第28話

 ジャーナリストを名乗る男がテレビ番組で云う。


 少女は不幸にも死んでしまった。しかし主犯格の少年は、したくて暴行していたわけではないのではなかろうか。仲間内での自分の立場を守るため、グループのリーダーという権威からの失墜を恐れ、その結果、犯したくもない暴行致死に手を染めてしまったのではないか。暴行は仲間に対する示威行為の一端であり、穿った見方をすれば彼も被害者といえよう。


 当然この意見には批判も多かったが、こうした考えを持つ者は世間には少なからずいる。


 それでカラス男である。


 主犯格の少年を護送中、護送車を急襲。横転した車両から少年を引きずり出すとそのまま連れ去った。


 少年は三日後、歯をすべて抜き取られ、目を潰され、全裸で裁判所の屋上から吊るされているのを発見された。その後共犯の少年たちひとりひとりの許をカラス男は訪れ、制裁を加えていった。


 暴行された少年(十四歳)の供述。


「夜に目を覚ましたら布団の上に人が立ってて。顔は暗かったんでよく見えなかった。黒い服を着てたような気もする。胸ぐらをつかまれてそれで、何度も殴られた。気を失っても起こされて。親が気づいて部屋まで来たけどその時にはもういなかった。いなくなるとき、また来るって。入院したんだけど、なんか病室は個室で、見回りの警官もつけてもらって。でも黒い男はまたやってきて。同じように半殺しにされて。怪我が治った頃また来るって……」


 同少年は現在、親戚を頼って四国へ行き、精神病院に入院している。

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