第27話
テレビでは有識者と呼ばれる大人が、暴力を行使するカラス男に顔をしかめ意見する。
無法者が無法者を懲らすのでは負の連鎖でしかない、懲悪は秩序を以て執行されるべきであり、こうした者を野放しにしていては社会正義の低下を招く。犯罪者といえど法律には守られなくてはならない、個人が個人を裁くことのどれほど危険であることか云々。
高説ごもっともと首肯するのは、戦いから降りた老年層。日々を戦っている者の多くはカラス男の存在に危機感は薄く、その行動にある種の痛快さを覚えてすらいる。
社会というよくわからない枠組みからはみ出たアウトサイダーは、良くも悪くも注目を浴びるものだ。
そんなおり、市内の有名進学校に通う女子学生が行方不明になった。発見されたのはほぼ一年後、廃業して久しい鮮魚店の、廃棄された業務用冷蔵庫の中に、ブルーシートに包まれ、折りたたまれた状態で腐敗していた。
行方不明になってから一年、雨の日も雪の日も街頭に立ち、娘の目撃情報を求めていた両親の嘆きようたるや。
遺体には暴行された跡がいくつもあった。骨折し不自然にくっついた箇所もあった。奥歯はすべて抜け、前歯もほとんど折れていた。
犯人は十九歳の主犯格を筆頭に、下は十三までの計十人。逮捕補導後、警察の聴取で少女を誘拐し監禁、暴行をつづけていたと供述した。
理由は、当初はわいせつ目的。しかし次第に暴行することが主になっていたのだという。
全員未成年。主犯格の少年こそ懲役刑に処されたが、そのほかの九人は、鑑別所留置、あるいは保護観察処分となった。罰することよりも更生を重視した判決である。
人ひとりの人生を奪っておいて、である。
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