第26話
この一件が騒がれたのには大きな理由があった。
被害に遭った犯人は、齢十三の少年だった。鑑別所上がりで素行不良ではあったが、未来ある未成年。
怪人の為した行為は行き過ぎか否か。
世間に甲論乙駁喧々諤々の論争が巻き起こった。それでもやはり、黒い怪人はやり過ぎだという意見が大勢を占めるに至った。ひったくりの被害女性が、ワイドショー番組のインタビューで、暴行された少年に同情を寄せるような発言をしたことが大きい。
黒い怪人はその容貌がカラスに似ていることから、カラス男、クロウマン、カラス怪人など様々な呼称が付けられた。
新聞テレビ、ネット、公的機関も日夜カラス男について話し合った。
是か非か、善か悪か。そんなもの一朝一夕に決められるものではない。その存在を本気でどうにかしようという話ではない、つまらない日々の、せめてものいろどりの一葉にすぎない。
しかしながら、Z市の治安の悪化は市民誰しもが思うところである。ひとつでも多くの悪事が、ひとりでも多くの悪人が街から消えるのならば、これは有難いと思う者は一定数いる。カラス男の素性や思想などは別として、どこか毒を以て毒を制するようなところはあるのだろう。
覆面をかぶった浄の暗躍は続く。
世の悪を成敗しつづける。殺しはしない。
カラス男は悪党を死ぬような目に遭わせる。それは執拗に、繰り返し。
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