第25話
Z市街に夜な夜な怪人が出没するようになった。
たとえば、
ひき逃げ事故を起こしそのまま車で逃走していた男は、突如車道上に現れたドラム缶を避けようとして壁に激突した。
路上強盗犯はワイヤーで吊るされ晒し者に。
明らかな世間的悪ばかりではない。理由が不明な者が罰せられる場合も多々ある。怪人の被害者は皆、自分が襲われた心当たりについて明言することを避けるからだ。当然だ、経緯を説明することが即ち、おのれの罪の告白につながる。
ひたすら口角泡を飛ばし、襲われた時の恐怖のみを口にした。
「黒い男が降ってきた」
「怖いおそろしい」
「ひどく暴力的で」
救急車の通り道を塞いでいた違法駐車車両の窓をたたき割り、サイドブレーキを解除、そのまま川に落としたりもする。
にわかに現れた世直し人に世間は熱狂した。
全身黒ずくめ、正体がわからない、超人的な力。そのすべてが当初は好意的に受け入れられた。しかし次第に、あまりにも暴力的過ぎるとの批判が大きくなり、個人が正義を行使するのは危険であるとの声もよく聞かれるようになった。
(たかが)ひったくり犯を、半殺しの目に遭わせるのはどうなのか。
被害者は八十代女性。犯人に体当たりをされ転倒、額に切り傷、手のひらと膝に擦過傷を負う。全治一週間ほどの怪我。被害額は五千百二円と飴と高級ハンカチ。
現行法に照らすならば、窃盗罪で十年以下の懲役もしくは五十万以下の罰金。
しかしこの犯人、あばらを五本と手の指をすべて折られ、頭髪を半分以上むしり取られ、路上に打ち捨てられていた。
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