第22話

「助けなんて……」


「呼ばないか。都合がいい」


 浄の得体のしれなさに男は戦慄を覚えつつあるのだろう、大きな一重瞼の目が色をなくしている。


 浄は拘束した男を、改めて猫の死骸の横に転がした。


「命を奪って放置するな」


「……死体を埋めろってか? 馬鹿か」


「人は生き物を殺す。自分が生きるためだ」


「は?」


「殺したなら、食え」


 浄は猫の死骸を男の口に突っ込んだ。


 男は喘ぐ。喉から嗚咽を漏らす。


 ぼきぼきと音が鳴る。骨の砕ける音だ。それがどちらの骨なのかはわからない。


 男の悲鳴はなおも続いたが、なにぶん男が男に誘われる公園なので、誰も気にしない。


 翌朝発見された男は半裸だった。顎関節は粉砕骨折、破傷風にも罹ったようだ。


 警察は暴行事件として扱ったが、行きずりの犯行のようで捜査ははかばかしくない。


 男は猫を殺した。


 浄は男を罰したのか。

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