第17話

 成長し続ける街には、一獲千金の夢もあるが、悪党が付け入る隙もまた多い。実際爆発的な人口増加に、警察の支配力が追い付いていない。


 そんな土地だから葉子も。


 浄はまぶたを閉じる。


 闇の真ん中に、果たすべき目標を置く。死なない。脅しには屈しない。


 復讐を果たすのだ。


 そのためには力がいる。


 ここでまだ歯向かう姿勢を見せれば、もう次はない。それはじゅうぶんわかった。その次が来たとき、志半ばで折られてしまわぬよう、まず力を身につけねばならない。


 浄が何かにつかまって歩けるようになるまで一年、杖なしで歩行できるようになるまで数年。


 その間、浄はなんども稲荷社を訪れた。


 天城の息子は表面上無罪放免となった身であるが、その悪名は世間のすべての知るところである。地域最高の進学校に在籍していたが不登校となり、やがて退学。今は通信制の高校で卒業を目指しているとか、引きこもってゲームばかりしているとか噂が飛び交っていた。


「そんなものは苦しみじゃない」


 法律で許されたのだとしても、俺は許さない。


 社に来たところで手を合わせることもない。ただぼんやりと愛妻の今際の際を夢想するだけだ。無為だ。とめどなく。しかし浄には大切だった。

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