第17話
成長し続ける街には、一獲千金の夢もあるが、悪党が付け入る隙もまた多い。実際爆発的な人口増加に、警察の支配力が追い付いていない。
そんな土地だから葉子も。
浄はまぶたを閉じる。
闇の真ん中に、果たすべき目標を置く。死なない。脅しには屈しない。
復讐を果たすのだ。
そのためには力がいる。
ここでまだ歯向かう姿勢を見せれば、もう次はない。それはじゅうぶんわかった。その次が来たとき、志半ばで折られてしまわぬよう、まず力を身につけねばならない。
浄が何かにつかまって歩けるようになるまで一年、杖なしで歩行できるようになるまで数年。
その間、浄はなんども稲荷社を訪れた。
天城の息子は表面上無罪放免となった身であるが、その悪名は世間のすべての知るところである。地域最高の進学校に在籍していたが不登校となり、やがて退学。今は通信制の高校で卒業を目指しているとか、引きこもってゲームばかりしているとか噂が飛び交っていた。
「そんなものは苦しみじゃない」
法律で許されたのだとしても、俺は許さない。
社に来たところで手を合わせることもない。ただぼんやりと愛妻の今際の際を夢想するだけだ。無為だ。とめどなく。しかし浄には大切だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます