第13話
「まさに満身創痍、生きているのが不思議なほどだと医者が云っていた」
男は浄の枕元に立ち、わたくしこういう者ですと身動きのできない浄の胸元に名刺を置いた。
「これでも多忙な身でありまして、こんな時間になってしまいました。さて黒住さん、警告です。二度と天城の家に関わらないことだ。せっかく拾った命を無駄にしてはいけない」
二度目はない。
「黒住さん、あなたは天城を甘く見ている。違いますか? あなたがまた噛みつくなら、こちらも相応の対処をさせていただく。いいかな、繰り返します、二度目はない」
そして男は浄の呼吸補助器の電源を落とした。
内臓にもかなりの痛手を負っている浄は、自発的に満足な呼吸ができない。次第に呼吸が苦しくなっていった。
男は笑っている。
浄は苦しむ。
「ナースコールは押せますか? 多少は腕が動くのかな?」
そういいながら男は浄の右手を見た。
なるほど、浄の右手のすぐそばにナースコールのスイッチが置かれている。
男は浄の右手にそっと触れた。
「これほどの怪我をして。命だって失っていたかもしれない」
男は浄の右手をベッドの転落防止柵に鎖でつないだ。ナースコールのスイッチにあと数センチ届かない。これでは助けが呼べない。
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