第7話
鬼気迫る表情で情報を集める浄の姿を街で見るにつけ、あるいは有能な代理人を雇うため家財のすべてを売り払い金策に駆けまわる様子に、そして浄の偽らざる思いが報道されるに至り、当初は浄に同情していた世間も次第に離れていった。
そう。包み隠さず語る浄は、早い段階で犯人への復讐を明言していた。復讐などと云う血腥い言葉は、平穏をなにより愛する庶民に馴染むものではない。
少年の手記とやらが週刊誌に掲載された。誌面には少年とは思われない美文で、懺悔が縷々綴られていた。
家族を奪われ、家も職もなくした浄は、夜になじむように世間から消えた。
そのころ、天城家の警備の度合いが強化されたのは知る人ぞ知る事実。広い敷地には木柵が張り巡らされ、数頭の黒い犬が常時うろつくようになった。
街はずれであるにも関わらず、あらたに警察の警邏コースになっていることからも、天城家がZ市にとって重要な存在であることが窺える。
天城家はこのあたりでは珍しい瓦屋根の純日本家屋である。
そこかしこに最新の警報装置が据えられている。その数二十基。
ある晩のこと、天城邸に侵入者があった。
全身黒ずくめのその男は、訓練された犬に気づかれることなく敷地を抜け屋敷にたどり着いたことから、空でも飛んだのかと後々噂された。
黒住浄である。
警報の電源をつぎつぎ落とし、邸内奥へと歩を進める。
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