第4話

 相手はどうやらZ市において最も力を持っているであろう人物の、令息であった。


 今夏に行われる総選挙で一躍第一野党に躍り出るのではと囁かれている、捨身党しゃしんとう党首、天城豪春あまぎごうしゅん


 Z市は選挙区内の大票田であり、彼の自宅も市内温泉郷へと至る山道の上り口に存在していた。


 今ひとつ、Z市には『蟻の会』という名の宗教団体の本部がある。


 宗教と云ってもその活動内容は、祈る拝むなどをあまりせず、自己啓発のセミナーと自然食品の作成販売そして健康体操などが主である。


 ここ数年のZ市の人口増加は、元は東北に活動の拠点を置いていた同会の、本部機能移転先に選ばれ起こった宗教的移入者の影響が大きい。


 その蟻の会、もとをたどれば秋田で生薬を販売していた天城豪春の祖父が開祖である。


 天城豪春自身は蟻の会とは関係ないと明言しているが、彼の後援会に蟻の会会員の多くが個人献金を行っている事実を見て、天城の言を信ずるものは少ない。


 政教分離が当然である日本、ただでさえ白眼視されがちな新興宗教だが、政党との繋がり以外にも悪いうわさは絶えない団体でもある。


 ともあれ天城家、土地の実力者であることに間違いはない。


 事件後ほどなく邸宅に警察を受け入れたの、名うての弁護士を雇ったの、その弁護士は人権派で有名な人物であるのと、浄のもとには玉石混交様々な情報が舞い込んだ。

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