第3話
捕えられたのは十五歳の少年。最初は名前も教えてもらえなかった。当然前途ある少年の更生を願い、その未来を守るためとの配慮である。
しかし、人の口に戸は立てられぬとの言葉通り、不確定ながら浄の耳に犯人の姓名が届くのにそう時間はかからなかった。
準政令指定都市などとも呼ばれるZ市は太平洋に面した温暖な地域で、このところ他都市からの移住者が増している。市の西にカルデラ湖を抱え、その周囲にいくつかの活火山を配した自然豊かな場所でもある。当然温泉も湧く。
浄は陸上自衛隊を除隊後、生まれ故郷であるZ市に戻り市役所に職を求めた。
葉子という素晴らしい女性を娶り、仕事にも慣れ、これからの人生が光に満ちているような感覚を覚えていた矢先のことであった。
どうして葉子が襲われなくてはならなかったのか。
たまたまその場にいたからなのか、それとも以前からつけ狙っていたのか。
葉子の最期の言葉なんであったのか。
どうして殺害後、犯したのか。
聞きたいことが山ほどある。
それ以前に浄の心にあるのは復讐の心だ。
当然ながら犯人の情報を被害者家族に知らせないのは、そうした負の連鎖を抑えるためでもある。しかし浄は情報を得た。
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