第15話

火事が起きた家の事件が落ち着いた後、玲奈と僕の日常はしばらくの間、平穏を取り戻していた。しかし、あの火事が起きたことで、周囲の環境や日々の過ごし方が少しずつ変わっていった。


「最近、何だか気になることがあるんだけど…」玲奈が不安げな顔をしながら、僕に話しかけてきた。


「気になること?どうした?」僕は眉をひそめ、彼女の顔をじっと見つめた。


「うーん、なんだか最近、知らない人の気配がする気がするの。」玲奈は少しおどおどしながら言った。


「知らない人の気配?」僕は驚きながらも、冷静に返した。「それはどんな気配だ?」


「いや、たとえば…家の周りで足音が聞こえたり、窓をノックする音が聞こえたりするの。昨日なんて、夜中にドアがガタガタ鳴ってる音がして…。」玲奈は不安げに肩をすくめた。


僕は一瞬、考えた。火事があった家の近くで起こったことだから、何か不安を感じているのかもしれない。しかし、玲奈の言葉に耳を傾けると、ただの恐怖や不安のせいだけではないようにも思えてきた。


「もしかして…何か、本当にあったのかもしれない。」僕は真剣に言った。


新たな怪しい動き

その夜、玲奈が言った通り、窓から外を見ると、何やら影が動いているように見えた。僕は慌てて窓のカーテンを引き、外をじっと観察した。だが、影が動いているのは一瞬で、すぐにその姿は消えてしまった。


「これって…誰かが近くにいるってこと?」僕は眉をひそめ、玲奈に向かって言った。


玲奈は恐る恐る窓の近くに寄り、「本当に見た気がするの。」と、震える声で答えた。


その翌日、僕たちは町の周囲を歩きながら、気になる場所や人々を注意深く見て回ることにした。少しでも不審な動きがあれば、すぐに警察に連絡しようという決意を固めて。


「ねえ、あそこ…」玲奈が僕の手を引いて、目を凝らして指差した。僕もその方を見てみると、少し離れた場所にある古びた家があった。そこには、今まで見たことがない人物が立っていた。


「誰だろう?あんな場所に人が立っているの、初めて見る気がする。」僕は眉をひそめて、その人物を観察した。


その人物は、何かを手に持ちながら、じっとこちらを見ているようだった。こちらの視線に気づいたのか、その人物は突然歩き出し、素早くその場から立ち去った。


「まさか…」玲奈が息を呑みながら言った。「あの人、もしかして…」


「どうして、あんなところにいたんだろう?」僕はつぶやいた。


不穏な予感

僕たちはその人物を追うことはなかったが、その不穏な気配が僕たちの心に重くのしかかってきた。その後、何度も同じ場所に出かけ、その人物の姿を探したが、結局その姿を再び見かけることはなかった。


「気のせいかもしれないけど…」玲奈は不安そうに言った。


「でも、何か引っかかる。」僕は確信を持てずにいたが、心のどこかで、あの人物に何かがあるのではないかと思っていた。


数日後、僕たちの住む街で、再び奇妙な事件が起きた。近くの商店街で小さな火災が発生し、その直後に現場から一人の人物が逃げ出していたという目撃情報が入った。


「まさか、あの人物が関係しているのか?」僕は声を潜めて言った。


「もしそうだとしたら、どうしよう…」玲奈が目を見開いて、僕を見つめる。


事件の核心に迫る

僕たちは、再び探偵として動き出すことを決めた。今度は、単なる遊びではない。本当に何かが起きているのだと感じていたからだ。


「まずは、あの古い家に行ってみよう。」僕は玲奈に提案した。


「でも、怖いよ…」玲奈が不安げに答えたが、僕はしっかりと彼女の手を握り、引き寄せた。


「大丈夫だよ。僕が一緒にいる。」僕は微笑みながら、玲奈に安心感を与えようとした。


僕たちは古びた家の前に到着した。その家は、何年も手入れされていないように見えたが、どこかから不気味なエネルギーを感じ取ることができた。


「中に入るのか?」玲奈が僕を見上げて、少し怖がっている様子だった。


「うん。誰かがいるかもしれない。君は外で待ってて。僕が確認してくるから。」僕は玲奈を安心させるために、強い口調で言った。


玲奈はしばらく黙って僕を見つめていたが、最終的には頷き、「気をつけてね。」とだけ言った。


僕はその家の扉をゆっくりと開け、暗い中に足を踏み入れた。その瞬間、背後で扉がバタンと閉まり、何かが動いた気配がした。


「誰かいるのか?」僕は声を上げて、周囲を見回した。


すると、部屋の隅で小さな声が聞こえてきた。「誰か…助けて…」


その声に導かれ、僕はさらに深く家の中へと進んでいくのだった。


次回、事件の核心が明らかに…

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