第14話

探偵ごっこで盛り上がったその日から数日後、思いもよらぬ事件が実際に起こった。僕たちの生活がまた一変するような出来事だった。


その日は平凡な朝だった。玲奈と僕は、いつものようにリビングで朝食をとりながら、穏やかな時間を過ごしていた。玲奈は何気なくテレビをつけ、僕は新聞を広げた。しかし、その静かな朝が突如として破られることになる。


「ん?」僕は新聞を読みながら、ふと耳に入った音に気づいた。


「どうしたの?」玲奈が気づいた僕を見て、心配そうに尋ねた。


「なんだか、外の方から音がする。」僕は立ち上がり、窓のカーテンを少し開けて外を見た。その瞬間、目に入ったのは、大きな煙と火の手だった。


「火事!?どうしよう!」僕は焦りながら言った。


玲奈も僕の背後に駆け寄り、窓の外を見た。「本当だ…。火が出てる…。近くの家、あの辺りの通りだよ!」


慌てて携帯を取り出して、消防署に連絡を入れようとするが、すでに近くの住人たちが通報している様子だった。電話をかけながら、僕は冷静にその場の状況を確認する。


「でも、どうしてこんなことが…」玲奈が震える声でつぶやいた。


「とにかく、まずは外に出て安全な場所に避難しよう。」僕は玲奈の手を取って、部屋から出ようとした。


恐怖と混乱の中で

僕たちが部屋を出ると、すでに周囲は騒然としていた。煙が立ち込め、近所の住人たちが慌てて自宅を離れている。誰かが叫ぶ声、車のエンジン音、サイレンの音が響いていた。


「火元はどこだろう?」僕は冷静に周囲を見渡しながら、火事の原因を考えた。


「火元の家、見たことがあるけど…あの家、最近空き家だよね。」玲奈が少し不安そうに言った。


僕たちが目にしたのは、火元となった家の前で集まっている人々の姿だった。どうやら、その家は長らく空き家となっており、管理が行き届いていなかったらしい。


「でも、誰かが住んでたってことは…?」玲奈が不安そうに言葉を続ける。


「それが問題だ。火元が空き家だとしたら、誰かが中にいたかもしれない。」僕は焦りながらも、冷静に判断しようと努めた。


発見された手がかり

その後、消防士たちが到着し、火はすぐに消し止められたが、煙がまだ漂う中で現場検証が行われた。僕と玲奈も、近所の住人たちと一緒にその場を見守っていた。


「中に誰かいたのか…?」玲奈が不安げに僕を見上げた。


その時、警察官が近づいてきて、僕たちに声をかけた。「この家、以前誰かが住んでいた形跡はありますか?」


「最近は空き家になっていたはずです。でも、時々見かける人がいたんです。」玲奈が答えた。


「その人、何か不審な点がありましたか?」警察官がさらに尋ねる。


「いや、特に…。でも、以前から家の中に誰かがいた形跡があるような気がしていたんです。」玲奈が少し思い出すように言った。


警察官はその言葉をメモに取りながら、「ありがとうございました。もし何か気づいたことがあれば、すぐに知らせてください。」と言って去っていった。


事件の真相

翌日、僕たちは再び事件の詳細を追うことにした。火事の原因はまだ不明だったが、何かおかしい点があるように感じていた。


「玲奈、君が言っていた通り、あの家の中に誰かがいたかもしれない。でも、なんでこんなことが起きたんだろう?」僕はその家に関する情報を調べながら考えた。


「おかしいよね…。でも、もしかしたら誰かがその家を不法に占拠していたのかもしれない。」玲奈はその可能性を指摘した。


「そうだね。住人がいるとすれば、何かしらの事情があったのかもしれない。」僕は慎重に答えた。


数日後、警察から連絡があり、火事の原因が判明した。火元は、空き家の管理が不十分だったために発生した電気系統のショートだったという。しかし、火事の際に家の中にいた人物が怪我をしており、その人物は近所に住んでいた失業中の男性だったことが分かった。


「彼、実は以前からあの家に住みついていたらしい。放置された家を自分の隠れ家にしていたんだ。」警察官が教えてくれた。


解決への道

火事の原因が明らかになり、失業中の男性は救助され、その後は警察の取り調べを受けることとなった。彼の不法占拠と火事の発生が明らかになったが、幸いにも大きな事故には至らなかった。


玲奈と僕は、やっと一つの事件が解決を迎えたことにほっとした。


「一歩間違えば、大きなことになっていたかもしれないね。」玲奈が静かに言った。


「うん、でも、無事に解決できてよかった。」僕は安心したように答えた。


この事件を通じて、僕たちは再び日常の大切さを感じることができた。そして、どんな小さな危険にも敏感に反応し、互いを支え合っていくことの重要さを思い知らされた。


次回、また新たな展開が待っているのだろうか。それとも、静かな日々が続くのだろうか。どちらにしても、僕たちはまた一歩、共に歩み続けるのだ。

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