第2話 俺が、まさかリーダー……!?
なぜか陽キャ女子のリーダー、
そんなことより表情は……良かった、怒ってはなさそう。むしろニヤニヤしている。これはこれで怖いなぁ。でも、雰囲気的に告白じゃないことは明白だった。アホくさ。
「……どこに?」
「ついて来てっ」
「はい」
言われるがままに席を立ち、空橋の後を追う。教室を出た彼女はスタスタと廊下を進んで階段の踊り場で止まった。
「
「おおー、来たか」
そこにいたのは一軍男子のリーダー、
「佐々木、お前風紀委員長に恨みでもあるのか?」
夢じゃなかったみたい。ばっちり現実だわこれ。それもかなり嫌な部類。
「ライン……もしかして見た?」
「ああ、お前が削除する直前にな」
「そうですかー」
終わった……。きっとこれから俺は散々に弄られて弄られ尽くす一年間を過ごすんだろう。はい決定。まだ5月だっていうのに……11ヶ月間かぁ。
俺の視線はどこまでも下がりかけたが、中村の声で強制的に再び上に戻された。
「佐々木、マジでサンキュな!」
「え……」
「私からもありがと! みんな迷惑してたんよ、あの女のせいで」
空橋が元気一杯に言うと、背後の陽キャの方達もうんうん頷いた。俺、一軍に感謝されてる……もうすぐ死ぬのかな。
待て、その逆かもしれない。
もしかしてこの人たち、俺に協力してくれるつもりなのでは……!?
「えっと……つまり」
「そう、みんなで風間に一泡吹かせてやろうぜ!」
「メイクとか髪とか、いっつも注意してくんの死ぬほどウザいし〜」
「ウチ、せっかく銀色に可愛く染めたのに毎朝黒に染めろって言われて朝からテンションガン萎えなんよ」
空橋に続き、銀髪ショートボブの名前はなんだっけ……忘れたけどギャルの人も風間を嫌っているらしい。わかる! 超わかる、黒く染めろって言われるの腹たつよね! 名前は忘れたけどあなたと情意投合できて嬉しいです。
中村はセンターパートにセットされた自身の黒髪を、崩さないように優しく撫でた。
「俺も髪型、言われるの嫌なんだよな。校門通るとき、恐る恐る
あ、あの激甘女子、
それはそうとこの人達は相当、
「そ、そっか……大変だね」
「そうなんよ。そう言う佐々木はなんでだ?」
「あー、この髪で言われて」
「なるほどな、そこまで茶色に染めてたら言われるか」
「あ、いやこれは生まれつきで……」
「「ま!?」」
空橋と中村が同時にポカンと口を開けた。なので「はい……」と首を縦に振る。天然に決まってるでしょうが。俺みたいな隠キャに髪染めて学校来る勇気があるわけないでしょうが。
すると、銀髪のギャルさんとその他陽キャの皆様も俺に近づいてきた。
「え、羨ましい……」
「めっちゃいい色じゃん」
「染めなくていいのコスパ最高かよ……」
多分コスパの意味あんま分かってないんだろうけど、そんなことよりみんなありがとう。俺なんかの髪を誉めてくれて。実は俺も気に入ってるんだ。
陽キャのみなさんと関われて、誉められて、なんだか陽キャの一員に慣れているかのような錯覚を起こしていると、ふと空橋が怪訝そうに小首を傾げた。
「ところでなんでさっきの文章、『懲らしめたい』とか『やっつけたい』とかじゃなくて『風紀を乱したい』だったわけ? 嫌がらせがしたいってことは分かるけど……言い方分かりにくくない?」
「あ、それは……」
言えない……! 風紀委員長を失格させるために、彼女にエロいことさせるつもりだったなんて……! 口が裂けても言えないよ。本当、空橋さんのおっぱいも十分デカいなんてことも言えるわけがない。
口籠ってしまった俺に、なぜか中村が優しげな眼差しで肩に手を置いてきた。
「大丈夫。俺は全部、分かってるからっ」
「中村君……」
「ちょっと翔ちゃん、それどういう意味?」
「ま、まぁまぁジェル、そんなことよりだ。今この瞬間をもって、風紀委員長の風紀を乱す作戦開始だ!」
すると、おー! と一軍のみんなが叫ぶ。もちろん空橋もだ。はぐらかされたことはまるで鶏のようなスピードですっかり忘れてしまっている様子。流石陽キャ、その場のウェイな雰囲気だけで生きてる。
だが、ウェイな雰囲気に流されることができない俺は一緒におーっなんて言えるはずもなく、口を開けるか開けないか分からないくらいにして、パクパクさせていた。ウェイ!
「よろしくねっ、リーダー!」
空橋が上機嫌に身体を揺らし、声を弾ませた。同時にボインボイン弾んだ胸に視線が向いてしまったため、誰に向けられた言葉であったのか分からないけど、おそらく状況的にも立場的にも、その相手は
冷静になれ、俺。
そのおっぱいも、一軍の人間達自体も、別次元の存在なんだってことを忘れちゃいけない。俺は発案者として、ここへ呼ばれただけ。きっとすぐに、扱いは雑になっていくだろう。
それでも、今日こうやって会話できたのは嬉しかった。別に芸能人に会ったわけでもないのに、この人達にこんな感情を抱いてしまうのは悔しいけれど、ぼっちとはそういう生き物なんだと、諦める他ない。
あとは任せたよ、中村翔一。
「ああ、頼むぜ、
「……はい?」
え、今、中村は……何を。
どうして、なんで陽キャ達みんなが俺の方を向いてる? そんな、俺なんかをじーっと見つめて。確実にこれ、こちらが何か言うのを待ってる雰囲気じゃないか。
まさか、本当に俺がリーダー……?
この状況においてどんな言葉を返すべきか分からず、頭が真っ白になってしまう。
すると、空橋が何ぼーっとしてんの? と言わんばかりに上目遣いでこちらを覗き込んできた。
「佐々木君、頼りにしてるからねっ」
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