第12話『ケチではなく節約上手』
「――それで、
「うん、ほとんど一人だけで活動していたからね。やっぱり知ってたんだ」
「異世界では回復を中心に取っている人が居て、そういう人をヒーラーと呼んでたりしたから」
「はーはー、なるほど。ゲームの世界だったら、たしかにその理屈は理解できるよ」
これって、もうダンジョンの中で証明するまで信じてもらえない感じになってるよね?
「施設への申請をやっているときから思ってたけど、もしかして
「助成金?」
「え。探索者登録をするときに必ず確認されると思うんだけど」
「あー、たぶんそのときにお腹が痛くてトイレに駆け込んじゃってさ。それでいろいろと話を憶えてないんだよね」
「なるほど、それは悪い偶然が重なっちゃったんだね」
つい変な言い訳をしてしまったけど、まあ……今は何を言っても信用してもらえないから、変な言い訳をするほかない。
「じゃあ、助成金について――とか改まってする話でもないんだけど。要するに『探索者を支援するお金』っていう制度で、『探索者を辞めないでください』っていう意味があるやつなんだよ」
「なるほど。ちなみに何円ぐらいなの?」
「10万円だよ」
「え、毎月?」
「うん」
その金額って、僕の金銭感覚が今の時代と変わりないものだったら凄い金額では?
しかもさっき宿で手続きしてわかったけど、【探索者支援制度】というものがあって長期滞在すればするほど金額が安くなり、30日以降は毎日500という値段に落ち着くらしい。
であれば、10万円も貰っていたら贅沢しなければ普通に生活ができてしまうじゃないか。ダンジョンでも稼げるわけだし。
ん、というか……もしかしてだけど。
「助成金とか補助金とかって、大金を一気に貰える制度とかってあったりする?」
「えぇ……もしかして、その申請もしてないの? 正直、ビックリ以外の言葉が思い浮かばないんだけど」
「お恥ずかしい限りです」
「生活困窮者が初めて探索者になるときは、申請をしたら100万円を最初に支給されるんだよ。その変わり、少なくともダンジョンでモンスターを討伐し続けないと返金しなくちゃいけなくなるんだけど」
「なるほど」
おっかしいなぁ……どうにも政府から支給された100万円の流れと随分似ているような気がするんだけど。
これ、もしかして僕は異世界からの帰還者として保護下に置かれている風に取り扱われているだけで、実は『めんどくさそうな存在を探索者にしてしまおう』という根端なんじゃ?
酷い話、扱いがめんどくさいから『あわよくばダンジョン内で絶命』してくれたり、そうじゃなくても『ダンジョンを少しでも開拓してくれたらいい』という感じに思われているってこともありえる……?
うわ、何それ怖すぎ。
「それで、まずはアイテム屋さんに期待って話だったけど」
「うん。ちょっと確認したいことがあって」
宿屋を決めた後、次に向かうのはアイテム屋。
装備に関しては自前のものや支給されたものがあるから大丈夫として、その他雑貨などの物に興味がある。
あっちの世界と一緒ならポーションなどがあったら欲しいし、アクセサリーに魔法が付与されている物があるかも確認しておきたい。
それで今、宿屋から徒歩10分のところ、ダンジョンからは30分の場所にあるアイテム屋へ案内してもらった。
店内は近代のショップ、という感じで簡単に言ったらコンビニ。
あっちの世界では木造やレンガだけだったから、目新しい印象を抱く。
「ここで買えるのはポーション系が主だね」
「
「うんうん。でも、ほとんどは大ポーションを買うね。毒消し薬はほとんどの人が買わないかも」
「なるほど。ポーションがあれば持続ダメージは無視できると」
「そうそう」
理に適っている話だ。
回復量がどれぐらいなのかわからないけど。
「莉奈が取得している回復スキルって、
「うん。でも、不安だからポーションは買ってる」
「だったら僕は
「え? それだと
「保険をかけるならそれでいいと思う。でも、莉奈のスキルに頼らせてもらおうかなって」
「もしかして回復薬の代金をケチろうとしてる?」
「それはちょっと心外だな。節約上手と言ってもらいたい」
「一緒じゃん」
「今はこんなところで買い物は終わりにしよう」
「まあたしかに。ここはいつでも来ることができるからね」
ソロだったら、莉奈の判断は正しい。
ただパーティを組むんだったら、互いにできることを活かしていくのが最善。
そして何より、お金を節約できるならそれに越したことはない。
あとは、ダンジョン内のことも大事だけど地上での生活も大事だからね。
「よし、お会計が終わったらダンジョンに行こうか」
「いいね」
「時間の余裕があるなら、少しでもお金を稼ぎたい」
「太陽って、やっぱりお金にケチケチしてるんじゃ……」
「いや? 断じてお金にがめついわけじゃないよ?」
「ふぅーん」
お金は大事だからね。
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