異世界帰還者、現実世界のダンジョンで新米配信者として活動を始める。~異世界では勇者とかではなかった役職もない冒険者、現地で手に入れた装備・知識・経験を活かして最速で成り上がる~
第11話『生活拠点は、安ければ安いだけいい』
第11話『生活拠点は、安ければ安いだけいい』
「
あー、これはどうしたものか。
僕たちは街中を歩きながら、
生活拠点として提供された無料の家は、ダンジョンから少し離れている。
そして、そこを明かしていいのかがわからない。
住宅街から少しだけ離れてはいるけど、普通の場所ではあるけど……。
なら、もういっそのこと。
「ちょうど今日、探そうと思ってたところなんだ」
「え、そんな偶然ってあるんだ」
「ん?」
「実は私も、ちょうど今日から新しい場所を探そうと思ってたんです」
「え?」
「え?」
「あ、ごめんつい。
「うん、そうなの」
咄嗟に疑問を口に出してしまった。
あっちの世界では、僕の歳で一人暮らしというのはそこまで珍しくなく、それは冒険者として活動するためには実家から通える人は少なかったから。
だけどこっちの世界では、そもそも16歳と言えば学校に通っているのが一般的なはず。でもそれを直球で質問してしまえば、間違いなく聞き返されるからできないんだけど。
「実は私、学校には通えてないんだ」
「……」
こういう深刻な話になると、どうにも対応に困る。だから。
「でもいいの。何もできない私でも、探索者ならできるから」
勘ぐりを入れるなら無理をしているんだろうけど、思っていたよりポジティブに捉えているのかもしれない。
「あ! それよりも!」
「ん?」
「レベルが低くてもあんなに戦えるのってどうなってるんですか!?」
「あー」
さてどうしたものか。
これからパーティを組むんだったら隠し事をし続けるのは厳しい。
しかも配信も並行してやって行くのなら、なおさら。
怒られたら、もうそのときはそのときだ。
「実は僕、異世界から帰還したばかりなんだ」
「……」
まあ、ここまで直球で伝えたらさすがに勘違いはしないはず。
直近のネットニュースに載ったとかなんちゃらって話だったから、すぐに話が結びつくだろう。
どういったリアクションが返ってくるかは予想できないし、最悪はこのまま解散しても莉奈を責めることはできない。
「もしかして、そういう設定?」
「ん?」
「なるほどなるほど。私にはわからない世界だけど、そういった設定があってもいいと思うよ」
「いやいや、だから本当なんだって。僕は元々異世界へ転移させられて、あれこれの後に現実世界へ帰還したんだって」
「うんうん。だから私は否定しないよ。たぶん、
え、僕ってそこまで複雑な話はしていないよね。
ていうか設定って何、もしかして中二病的なものを患っている人間だと思われているってこと?
随分と久しぶりに聞いたけど、そんな感じに捉えられる要素あった……? いやたしかに、初見で聴いたらそう思われても仕方がないと思うけどさ。
というか、ニュースになったって本当?
僕、さっきから街中を歩いているけど誰からも声をかけられないし、目線が集中している感覚もないけど?
「何か勘違いをしているようだけど、僕は本当のことしか言ってないから」
「あ、もしかして自覚無しってタイプ? じゃあ質問してもいいかな」
「はいどうぞ」
「好きな色は?」
「……黒かな」
「服装や防具の色を統一できるとしたら?」
「黒かな」
「これから使いたい武器の色は?」
「――黒かな」
「剣が二本あったとして。剣と盾も使えるとしたら、双剣と剣盾どっちを選ぶ?」
「……双剣かな」
あっちの世界で実際に使っていた装備の色と武器スタイルがそうだった。だから、こっちの世界でも落ち着いた色合いがいいとは心から思っている。
「だよねー、そうだよねー」
「信じてもらえないなら、ほら、異世界で得た知識を活かしてモンスターの傾向を把握していて、戦い方も身に染みているから大丈夫だったんだよ」
「なるほど。ゲームで得た知識をそのまま流用できたから、優れた身体能力を活かして戦うことができたってことね」
な、なんだと……これじゃあ何を言ったとしても別のものに置き換えられてしまうだけじゃないか。
このままじゃ埒が明かない。
「生活拠点はできるだけ安く、ダンジョンから近場にしたいんだけどそれでもいい?」
「うん、全然大丈夫だよ。でもある程度の場所にしなくて大丈夫?」
「ダンジョンでは体を動かし続けるからね。怪我をしたり疲労によってなくなるから、しっかり休んだ方がいいというのは至極真っ当な意見」
「じゃあなんで?」
「逆に考えたら、その怪我とかにより数日間身動きが取れなくなってしまう可能性があって、その間はお金を稼ぐことができない」
「たしかに」
「そのときのためにできるだけ節約しておいた方がいい」
「言われてみると、たしかにそうだね。保険をかける、という意味でも安い方がいいってわけね」
贅沢は敵とまでは言わないけど、あっちの世界ではそう基準付けていた。
こっちの世界の
「じゃあ一応調べておいたから、このままそこに行って手続きだけしちゃおっか」
「ありがとう、助かるよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます