第10話『休憩をしながら情報整理』
「乾杯っ――と、盛大にいきたいところなのですが」
「まだまだ昼間ですし、これはこれでいいと思いますよ」
僕たちは『いざ街散策を!』と、いざ歩き出したものはいいものの、座りながら話をしていて喉が渇いてしまったこともあり、カフェに立ち寄っている。
14時ということもあり、店内の内容が木目調かつ人が少ないことから落ち着いた雰囲気に満たされていた。
「ここだったら、落ち着いて話ができますし。休憩もできますから」
「ありがとうございます。そして、自分だけ食べてごめんなさい」
「大丈夫です。さっきも言った通り、僕は食事を済ませてしまったので」
こっちの世界に居なかった時間が長かったからかもだけど、目に見える全てが新鮮で仕方がない。
「それにしても驚いちゃいました。
「ですね。あと、お恥ずかしいことに諸々をまともに憶えてないままここまできちゃったんです」
「それはそれで仕方がないと思いますよ。私だってうろ覚えですし」
「なので、街案内だけではなくその他いろいろも教えてもらえると助かります」
「お任せくださいっ。私にできることでしたらなんでもやりますよ」
あっちの世界では不自由さを感じることが多々あったけど、それはこっちの世界があまりにも便利すぎただけだとすぐに悟った。
食事の面でも恋しくなる場面は多々あったり、独特な味付けに驚くことがあったけど、あれはあれでよかったと今は思える。
「今となっていろいろと気づくこともありました。パーティの表示される項目って、2本の線と名前、他にはレベルと――これは?」
「一番上に名前【
「なるほど」
「他にも発動中のスキル、バフ、パッシブ、デバフが表示されます。ちなみに、
――――――――――――――――――――
Hayase Taiyo
HP150/150――――――――――
MP150/150――――――――――
――――――――――――――――――――
この表記の下にバフなどの効果が並ぶ、というわけか。
あっちの世界でもパーティというものはあったけど、それは魔法契約によるものだった。
体力だけは把握できていたけど、ここまで仲間の情報を可視化されていなかつたから、こっちの世界でのパーティシステムはあまりにも便利すぎる。
「えっ――」
「ん?」
「本当に今更なのですが、
「そう、ですね」
「も、もしかしてなのですが……私と出会ったときのレベルは……?」
「あー……曖昧な記憶ですけど、たしか、1か2だと思います」
ちょっとでも誤魔化そうと思ったけど――レベルが数値化されているんだから、言い逃れしても調べられたらすぐにバレるかもしれない。
「えぇ……それなのに、私を助けていただいたなんて……本当にありがとうございます」
「いいんです。僕がそうしたかったから、そうしただけなので」
さすがに助けを求めている人を見捨てることはできないからね。
「でも、柏田さんだって凄いじゃないですか。今、レベル8ですよね」
「いろいろと驚いていたんですよ。私が苦戦しながら戦っているのに、まさかの戦闘中にレベルアップしちゃうんですもん」
「運がよかっただけですよ」
「いやいやいや、運がよかっただけであんなに討伐できないですって」
「相性がよかった的な?」
柏田さんは、ボクがどう言い訳しようとも信じられないと表情が語っている。
完全に納得していないご様子、どうしたものか。
今は咄嗟に自分のことをバレちゃいけない、と思ったから事実を隠蔽しようとしているけど、別に隠すようなことでもないのでは?
それに、パーティとして行動していたら時間の問題な気もするし。
ましてや配信者として活動していくなら、考えるだけ無駄な気もする。
「私、戦うのが下手だってのは自覚しています。ですが、レベル5になるまで3ヵ月はかかったんですよ」
「人それぞれの生活もありますし」
「まあたしかに、ずっと朝から夜までダンジョンに居たというわけではないので、『そりゃあ時間がかかるでしょ』と言われたらそれまでなんですけど」
今はタイミングを逃してしまったけど、次のダンジョンへ向かうときにネタばらしをしてしまおう。
「この際です。このまま続けちゃいましょう」
と、柏田さんはアイスココアをストローで1口。
「こういう自己紹介は探索者同士だとあんまりやらないと思うのですが礼儀として」
真剣な表情と真っすぐな眼差しを向けられるものだから、ついこちらも姿勢を正して心の準備を始めてしまう。
「名前とかはもうご存じだと思いますので省略しちゃいます。まあでも、それ以外って言ったら年齢ぐらいしかなくなっちゃうんですけど。私、16歳なんです」
「なるほど、じゃあ僕と同じですね」
「え?」
「ん?」
「ちょ、ちょっと待ってください。もしかして、私たちって同い年なんですか?」
「そういうことになりますね。ということは、お互いに敬語で話をしているのはなんとも不自然な感じになってしまいますが」
「え、いや、でも」
「抵抗があるのでしたら――あるんだったら、僕が敬語をやめたら大丈夫かな?」
「いいえ、いえ――いや、いや? で、でも」
「大丈夫だよ。柏田さんさえよかったらだけど。僕は恩がどうのこうので気を遣われる方が滅入ってしまうし、気楽に話ができた方がパーティメンバーとしていいんじゃないかな」
「そ、それはそうですけど……」
その気持ちは理解できる。
あっちの世界では、『実は年齢が一緒だった』ということが日常茶飯事だったから。
僕も最初の方はかなり抵抗があったけど、時間が経つにつれて気にしている方が時間の無駄だと感じるようになった。
「いきなりは難しいだろうから、気が変わったら――」
「いいえ、わかり――わかった。これからは同い年として接するね」
「お、その意気でよろしく」
「じゃあ、この際だから名前の呼び方も変えちゃう?」
「そうだね。僕的にはどっちでもいいよ」
「ずっと記憶に残ってたところだし、じゃあこれからは
「ならこっちは
「うん、それでっ」
なんだかんだあったけど、これで距離感を模索しながら会話をしなくて済む。
「さて、急いで食べちゃわないと」
「時間は大丈夫だから、ゆっくりで大丈夫だよ」
とは言ったものの、
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