第29話 わたしを放逐してください
ケダモノになってマルチェリーナに無体を働いた日から数日が過ぎ、ママ奴隷が俺に面会を求めて来た、
ひとつ屋根の下に住んでいて面会を求めるなんておかしな話だと思ったが、内容は思っている以上に深刻だった。
「ご主人様、わたくしマルチェリーナを放逐してください、奴隷商会に行き首輪の契約を解除するだけでございます、
わたくしこれ以上ご主人様にお仕え出来ません」
「ちょっと待って、マルチェリーナ、ゴメン、この前酷い事をした事は謝るよ、痛くて大変だったよね、もう魔法は使わないから安心して」
「ご主人様は勘違いをなされております、この前のテントの中はご褒美でございました、獣人族としてこれ以上名誉な事はないです、ですがわたくしはそんな名誉を受ける奴隷ではありません」
「理由を説明してくれないかな、直せるものなら俺もこれから直して行くし」
「はい、わたくしマルチェリーナは只今妊娠しております、満月の夜の交わりを覚えておりますか、あの夜はわたくしが妊娠しやすい晩だったのです……」
マルチェリーナの説明によると獣人族が妊娠するには満月の夜に契りを交わす必要があるそうだ、
そう言えば月夜の晩にマルチェリーナと仲良くした時に“外に出して!”と叫んだ時があった、あの日だったのか、
満月の晩以外はいくら頑張っても子供を授かる事は無いそうだ、
そこからが凄いのだ、ヒト族と獣人族の間では子供は産まれない、妊娠したマルチェリーナのお腹にいるのは母親とまったく同じ髪や目の色をした女の子、
つまりはクローン。
ハーレムに入れず、郷から追放された獣人族が、人間の世界で行きのびているのは人間と交わり自身のクローンを産んでいるからだそうだ、
目の前にいるロリ巨乳が、人間とは全く違う生き物に見えて来る。
「……全てはわたくしが身体の管理をしっかりしていなかった事から起きた事、この様ないい加減な奴隷など価値は無いでしょう、さぁ、放逐してください、ご主人様」
「まてまて、マルチェリーナ、赤ちゃんを授かったのだろ、俺の遺伝子が入って無いとは言え、天からの授かりものだ、そんな女性を放逐などしないよ、
これからも俺に仕えてくれ、もちろん子供を安全に産むのが最優先だけどな」
「イデンシ?」
ああ、遺伝子はこの世界ではまだ明らかにされていない概念だった。
その後も子供を堕ろします、なんて言うマルチェリーナをなんとかなだめたが、決定打は俺の一言、
「お腹の子も俺の奴隷になるのだろう、しっかり産んで育てる様に、これは命令だぞ、マルチェリーナ」
「ご主人様のお情けに感謝の言葉しかありません、されど出産と育児は大変でございます、その間迷宮に入れない日が続きます、新しい奴隷をお買いくださいませ」
「マルチェリーナ、奴隷商会で仲の良かった奴隷はいたか?」
「まぁ、何人かは」
「その中で子持ちはいたか?」
「はい、一人おりましたが、今もいるかどうかは……」
「よし、明日奴隷商会に行ってその子を買うぞ」
▽
「オース様、申し訳ございません、フランチェスカはもう売れてしまいました、
せっかくのご足労を無駄にしてしまい申し訳ございません」
「そうか、マルチェリーナと仲の良い奴隷だと聞いていたので、買おうと思っていたのだが、遅かったようだな」
「フランチェスカも子持ちの奴隷でした、コブつきに興味がお有りのようですね」
「子供がいれば、女は母になるからな、良く働いてくれるよ」
ママ奴隷を買えば娘のロリっ子もついて来る、と言う下心も実はある、だけどロリバレは恥ずかしい。
「オース様は変わった価値観の持ち主の様ですね、
されどここは王都の奴隷商会、売れ筋はヒト族の奴隷でして、戦闘系以外の獣人族は後回しになりがちなのですよ、更に子持ちとなるとなかなかめぼしい物は入って来ません」
「多種多様な獣人奴隷がいるけど、王都まで来るのは売れ筋で一級品ばかりと言う事だな」
「左様でございます、もちろん取り寄せも出来ますが、日数もかかる上に、数に限りがございます、
いかがでしょう、直に“産地”に行ってご自身の目でお確かめになってみては、紹介状をお書きしますよ」
この国はファルベ王国、最初はヒト族の小さな領主程度だったのが、周りの領主達を合併吸収して次第に勢力を広げていった経緯がある、
王国初期には獣人族も近くに住んでいたのだが、ヒト族が増え領地が拡大するに従い獣人族は僻地に追いやられていった経緯があるそうだ。
現在のヒト族の勢力範囲の北限はラフィネ河、その河沿いの街まで行けば獣人奴隷が選び放題だそうだ。
よし旅立ちだ。
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