第25話 ママ奴隷やられ放題
曙光が寝所の床を照らす頃、最初に起き出すのはバンビーナとマルチェリーナ、この世界では寝る時は全裸が基本、ママ奴隷のマルチェリーナも当然その習慣に従っている、溢れる様な白く柔らかな身体はプルプル音が聞こえそうだ、
三人の女性、一旦は寝所を出るが、しばらくするとバンビーナが朝のご挨拶にやって来る、
少女の唇で熱くなった俺を鎮めるのはマルチェリーナの仕事、
朝から疲れた俺を清めてくれるマルチェリーナ、最初の頃はくしゃみをするくらいの感覚だったけど、最近は楽しさが分かって来た、
世の中にはこんなに気持ちの良い事があるのだから、今日はもっと楽しもうかなぁ~
そんな気持ちに傾きかけた頃にドアがノックされる、
「ご主人様、朝餉の準備ができました」
バンビーナが絶妙なタイミングで食事の合図をしてくれる、絶対に聞こえているよね。
▽
薄暗い迷宮、5の倍数の階に置かれた転移陣、これは制約があって、5階層の転移陣を使った場合はその下の6や7の階層に降りる事は出来ても、5階層には戻れない、迷宮は降りるに便利な造りだ。
転移陣があるとはいえ、歩く距離は短くしたい、これは誰でも同じであろう、
そんな理由で5階層の転移陣から降りて来て10階層では人は殆ど見かけない、いるとすれば階層ボスに挑もうとする向上心の有る者達だけだ。
正直に言うと今の俺は10階層のボスを倒す実力があると思う、だが無理に下層に潜らなくても今の状況なら生活には困らないし、
最悪怪我をしてもしばらくは普段のままで生活が出来るだけの蓄えも出来ている。
だがいずれはアパルトマンの家賃も自分で払わないといけなくなるだろうし、それだったら多少遠くなっても自宅を買うのもありか、
益体も無い事を考えていたらバンビーナの声で現実に戻された。
「ご主人様、この先にエキュロイがいます」
「分かった、弓でリスもどきの気勢を殺ぐぞ」
「はい、ご主人様」
▽
長い直線の迷宮通路、バンビーナは左手を伸ばし、人差し指を立てる、彼女なりの測距方法だそうだ、
45度よりも大きな角度で一射目を放つと大きな放物線を描き迷宮の暗闇に吸い込まれまた矢、二射目は放物線の角度を緩めに、三射目はほぼ水平に矢を放つと、三本の矢は同時に的に刺ささる。
上の階ではザコの代名詞みたいなリスの化け物、エキュロイも10層までくるとそれなりに大きく、性格も好戦的で凶暴になってくるが、
バンビーナの放つ3本の矢と俺の放った一本の矢がほぼ同時に刺さると、あっさり動きを止めた、
俺は黙って弓をマルチェリーナに渡すと、彼女は剣を差し出す、倒したと思って安心してはいけない、死んだふりをする狡猾な魔物もいるから。
剣を構えたバンビーナが先頭、その後ろを俺、ランドセルを背負ったマルチェリーナはしんがり、
首の根元と顔に四本の矢が刺さったエキュロイが視認出来る様になった、
「死んでいるかな?」
「顔に刺さっています、致命傷じゃないですか……」
バンビーナが言っている途中で後ろから大きな悲鳴、
俺は本能的に踵を返し駆けて行く、30M程後方では巨大な毛むくじゃらの魔物に羽交い絞めにされたマルチェリーナ、
毛むくじゃらの魔物は俺よりも頭三つは大きく、非力なマルチェリーナは大柄な身体にバックハグされた状態、
“ムーロか?”
ムーロ、別名待ち伏せ熊、迷宮の壁に擬態して、冒険者をやり過ごして後ろから襲って来ると言う、今までの魔物に比べたら知恵のある敵だ、
「ママ、頭を下げろ!」
俺は出来るだけ上の方を横薙ぎに切りつける、でかい割に手ごたえは薄い、
ムーロはそのまま抱きかかえたマルチェリーナを下にして倒れ込んでいく、
「マルチェリーナ!」
バンビーナの悲鳴が迷宮通路を満たす。
剣を放り投げる様に床に置くと、ムーロの死体を起こしてマルチェリーナを助け出す、倒れ込んだ時に顔を打ち付けたのだろう、鼻血を出し頬に大きな傷が出来ている、
「……ご主人様、申し訳ございません……」
「大丈夫だ、魔物は倒した」
脇から手を入れて引っ張りだすと、一糸まとわぬマルチェリーナの肢体。
どうやらムーロにバックハグされた時点で加護縫いの力を使いきってしまった様だ、主人を守った服は単なる布切れになり迷宮の床に散らばっている、
鼻血と頬の傷は加護縫いの服が無くなった後に出来た傷だろう、今はバンビーナが治療をしている、
俺は上着を脱ぐとマルチェリーナにかけてあげる、
「マルチェリーナ、良く頑張ったな、怪我はたいした事無いすぐに治る、心配するな」
帰り路のマルチェリーナは加護縫いの服をダメにして申し訳ないと、泣きながら謝り続けたが、俺としては無事で何よりと言う思いしか無いよ。
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