第24話 わたしご奉仕します(マルチェリーナ)
▼▼ マルチェリーナ ▼▼
思い出すのも不愉快な思いをして里から追放されたわたし達親子、何の係累も無い世界では奴隷に身を落とす以外の選択肢が無かったです。
あまた有る獣人族、ネコ系獣人族みたいな肉食系は迷宮での戦士奴隷としての道が開けていますが、
羊獣人族のわたしには荒事は出来ないし、気が回り頭の回転が速い訳ではないからメイドも無理です、
残された道は娼館しかないでしょう、ヒト族と言うのは変わっています、男女の数はほぼ半々、しかも男性の性欲が異常に強いので春をひさぐ専門の職業があるのです、
獣人の世界では性行為は成熟する為の儀式であり、子供を作る為の義務なのですが、彼らには快楽に感じるそうです、
聞くところによるとヒト族の交わりは時間が長く、男性の動きも激しいので楽ではなく、途中で失神してしまう人もいると聞きます、ですがわたしに選択肢はありません、娼館に売ってもらうつもりでしたが、
“顔が子供過ぎる”
“コブつきはいらない”
と言われ奴隷商会のお荷物になり下がっていたわたし。
そんなわたしを買いたいと言って来たヒト族の男性、オース様、
表向きは迷宮の荷物持ちと言う事ですが、荷運びだけなら屈強な男性奴隷の方が便利なはず、あえて獣人女性を指名するとは、理由は言うまでも無いでしょう、
大丈夫、娼館を覚悟したわたしです、ご主人様の為ならどんな事でも致します。
ご主人様は20代の男性、獣人族と言うワンランク落ちるわたし達にランドセルと言う革の背負いカバンを買い与えてくれただけでなく、
加護縫いの戦闘服、普段着や外出着も全て新品であつらえてくださり、食事も親子そろって御主人様と同じテーブルについて同じ物を食すと言う贅沢、
毎食が白パンと肉のたっぷり入ったスープ、新鮮な野菜と卵。
もちろん贅沢な暮らしが出来るのもご奉仕があっての事、毎朝3の鐘が鳴る前に先輩奴隷バンビーナが起き出すとわたしも寝ぼけまなこのラムと一緒に台所に行きます、
三人で朝餉の支度をして、ころ合いを見てバンビーナが寝所に行き、眠っているご主人様に口づけを交わすと言う、信じられない行為を致します。
わたし達獣人族では性行為は単なる義務でしかありませんが、口づけは愛を交わす大切な行為、それを奴隷から主人に向かってなんて有り得ません、
ですがバンビーナは、
“ご主人様はお心が広いから、求めればお情けをくださります”
そう言ってわたしにも口づけを勧めますが、曲がりなりにも奴隷と言う身分に誇りを持っているわたしはその様な真似はいたしません、
全身全霊を使ってご奉仕をするだけでございます。
ご奉仕の後、ご主人様をお拭きしている頃に寝所の扉がノックされ食堂に向かいます、
ご主人様の上で身体を揺らし痴態を繰り広げていた下賤な女ですが、食卓につくとお行儀の悪いラムを叱る母親の仮面を被ります。
先輩奴隷のバンビーナ、彼女は鹿獣人族ですが、身体は未成熟、お顔は小鼻が頑張り過ぎていますね、ハーレムメンバーに選ばれる事はありません、
女性ばかりの獣人族では美醜が命、ハーレムに入るには能力や性格も大事ですけど、顔がアレだとそもそも候補にすら選ばれない、非情な社会なのです。
ネコ系獣人族は瞬発力や最大瞬間筋力に秀で機敏には動けますが、草食系の獣人族はひたすら黙って耐えるタイプです、
ですが鹿獣人族のバンビーナは優れた剣士、彼女のレイピアはピンポイントで魔物の弱点を突きます、
更に弓を与えられたら、一刻もしないで習得してしまう程、身体を使う事に長けております、
それでいてその事を鼻にかける様子も無く、新入りのわたし達にも優しく接してくれる人格者、ただ一つの欠点はご主人様の唇を貪る事ですが、見なかった事にしておきましょう。
朝餉を済ませるとランドセルを背負い迷宮に向かいます、わたしの本来の仕事荷物持ちでございます、
冒険者の荷物持ちですが、実際迷宮に潜っている時間はそんなに長くありません、太陽が昇ってから迷宮に向かい、日が沈む前には穴から出て来ます、最低でも三日に一回はお休みを致しますし、アパルトマンにいる時間が結構長いのですよ。
迷宮はお休みしても、休むのはご主人様だけ、奴隷は家事をして家の中を磨きあげるものなですが、
心の広いご主人様はラムやバンビーナに家庭教師をつけてくださり、勉強が出来ると言う特権を享受させております、こんな姿を見ているとわたし達は奴隷なのか貴族なのか分からなくなってきます、
ご主人様のご友人でヘリオスさんと言うお方がおられます、なんでもギルドの職員だそうですが、
娘のラムをたいそう気に行って、レンタル奴隷として借りていきます、
ラムに話を聞くと、ヘリオスさんの所へ行っても奴隷らしい事はしないで、キレイな服を何着も着まわしたり、美味しいお菓子を食べたりするだけだそうです、
成熟前の娘、それも獣人族を可愛がるなんて変わったお方ですね。
ヘリオスさんの所へ“働き”に行っていたラムが帰って来ると、ご主人様にベッタリです、ご主人様も優しい性格ですので、懐いて来る子羊を可愛がり、膝の上に乗せて撫でまわしてくれています、
奴隷と主人は線を引かねばならないのに、慣れ合い過ぎですよラム。
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