第22話 幼女のお尻をペンペン

 大量の魔石を金貨に換え、その金貨で高価な弓を買って来ての帰宅、

 待っていたのは半ベソのラムだった、

「ご主人様、ごめんなさい、お皿を割ってしまいました」

「ラム、怪我は無いか、血が出ていたらすぐに……」

「あなた、いったい何を!ご主人様の大切なお皿を割ったりして、鞭打ちです!」

 マルチェリーナが凄い剣幕でラムを叱ると、あっという間に鞭を用意してラムのお尻を俺に向ける、


「さぁ、ご主人様、奴隷の躾をお願い致します」

「いやいや、マルチェリーナは何を言っているんだ、なぁバンビーナ」

「ご主人様、マルチェリーナは極めて普通の反応ですよ、本来主人は奴隷を鞭で叩きながら躾をするものなのです」


 ラムはこれから痛い事が待っていると分かり、“ゴメンなさい~”と泣いている、

「マルチェリーナ、ラムの可愛いお尻を見せるのはもう良いから、ちゃんと服を着せて、鞭もしまいなさい」

「ですが……」

「ラムはお手伝いをしようとしてお皿を割ったんだろ、そんな子に痛い事なんて出来ないよ」

「ご主人様の温かいお心は有り難いです、ですが躾は大切でございます」

 ホンワカしてポワポワとした雰囲気のマルチェリーナだったけど、躾と言うか奴隷の矜持には断固とした処置で臨む頑固な性格だった、

 俺がラムを叩くまで引きそうもない。


「分かった、ラムを躾ければ良いんだな、だが俺も母親の前で娘を叩く様な事は出来ん、ラム来なさい」

 そう言って小さな手を引っ張り奥の部屋に連れていき、パタリとドアを閉める、幼女ラムはこれから叩かれると思って、身体をこわばらせている、

「ラムは良い子だな~」

 そう言って小さな身体を抱き上げると、膝の上に乗せる、

「ご主人様、痛い事するの?」

 俺は人差し指を立てて、内緒の仕草、


「ラムに痛い事なんてしないよ、だけどママに怒られたくないだろ、

 だから叩かれた振りをして見ようか」

「フリって?」

「ラムが大きな声で“痛ーい”って叫ぶの、ママに聞こえるくらいに大きな声でね」

 さっきまで怯えていた可哀そうな幼女は、いたずらっ子の顔になる、


 俺が手を叩く音にあわせて「痛ーい」と叫ぶラム、悲鳴とは裏腹に顔はニッコリ笑顔だ、5回くらい悲鳴をあげたところで打ち止めにした、

「マルチェリーナ、ラムの躾は終わった、反省をしているみたいだからこれ以上叱らないでくれな」

「はい、ご主人様」

 俺とラムの下手な演技なんてとっくにお見通しだろうけど、ここら辺が落とし所と割り切ったママ。



 ▽▽



 弓を買った翌日は迷宮をお休みして弓の練習。

 王都と言っても人が住んでいるのは旧市街城壁の中とその周りだけ、街から半刻ほど歩くと草原と言うか野原が広がっている、

 緩やかな岡の中腹に杭を打ち、藁を巻きつける、即席の的の出来あがりだ。

 マルチェリーナが的から歩数を数えている、

「ご主人様、最初は50歩から狙ってみましょう」

「意外と近いな」

「まずは弓の持ちかたですが、左手で、ああ最初はそんなに強く握らなくても大丈夫です、まずは矢の無い状態で形から……」


 後ろから優しく抱きかかえるようにして正しいフォームを教えてくれるマルチェリーナ、巨乳ママに密着されて弓弦以外の場所が張って来た、

 羊獣人のママはわざと身体を密着させてくる、俺にとっては役得だけど子供達も見ているんだよ。


「この距離でも矢は落ちて行きますから、少し上を狙ってみてください」

 吐息が当たる距離で指導をしてくれる、ほんのり漂うシトラスの香り、

「あー、そうです、激しいたぎりは抑えて、最後の最後に思いっきり突き抜くつもりで」

 絶対わざとだろう、だけど、その事で文句を言う根性は俺にはない、鼻の下を伸ばして喜んでいるお猿さんだよ。


 溜めに溜めた俺の手元からはビンッと言う音と共に尖った矢が飛んで行き、狙い通りに藁の隙間に強引に分け入って行く俺の分身、

「スゴーイ、ご主人様、初めてとは思えません!」

 過剰なスキンシップで喜びを表現してくれるママ、マルチェリーナ。


「じゃあ、次はバンビーナ、構えてみて」

 鹿獣人少女はスッと弓を構え、弓弦を引く、無駄な力が全然かかってなく、弓がまったくブレていない、素人の俺でも“上手い”と分かるよ、

「自分が当てたいと思う場所よりも少し上を狙ってね」

 バンビーナの矢もキレイに的に当たる。


 その後は弓に慣れ100歩離れた距離からでも、問題無く的に当たる様になった、100歩、1歩が75センチとして、75M、狭い迷宮なら充分な射程距離だ、

 弓をメインの武器にするつもりは無いが、選択肢が多い方が戦いやすい、

 バンビーナもそこは理解しているのだろう、黙々と練習をしていて、ポイント毎にマルチェリーナが教えに行っている。



「マルチェリーナ、俺達の指導はもう良いから自分の練習をしてみろ、俺より上手いのは分かっているから遠慮する必要はないぞ」

 羊のママが弓を構えるがブレブレだ、矢の先がプルプルと揺れているのが分かるくらい、

 マルチェリーナの放った矢、左下に一本、次は右上、最後の1射は的の横を反れて行った。

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