第21話 大人の階段

 異世界特製の大型ダブルベッド、四人で寝てもまだ余るよ、朝最初に起きたのはバンビーナかマルチェリーナかは分からない、だけど二人は手早くも静かにベッドから降り、寝ぼけ眼のラムを起こすと、

 三人並んで俺にお辞儀をして寝所から出ていった。


 ちなみに昨夜は大人のマルチェリーナが隣に寝たけど何にもなかったよ、周りにバンビーナやラムがいるのに不埒な事なんて出来る訳が無い。


 四半刻程経つと朝ご飯の準備が出来たのだろうか、バンビーナがやって来ると朝の挨拶、唇を重ねると俺はすっかり元気になっている、

「おはようございます、ご主人様」

「ああ、おはようバンビーナ」

「わたし、失礼致しますね」

 いつの間にか生まれたままの姿の羊のママと入れ替わる、

 カーテンが閉じられ薄暗い寝室に浮き上がる白磁みたいな肌、中学生みたいな童顔、そして上を向いたお胸、

 バンビーナがニチアサアニメのキャラだとすると、マルチェリーナは深夜アニメのキャラクターだ


「ご奉仕いたしますね」

 アニメキャラみたいな彼女だが、胸元に柔らかな物が当たる感触が確かに感じる。


 ▽


 俺は童貞のアニメおたく、今まで女性に縁の無い生活だったし、異世界に来てもそれは変わらないと思っていたが、ついに大人の階段を昇ってしまった、

 人生観が変わるかと思っていたが、特に感慨深いと言う事は無く、マルチェリーナには悪いが鼻がむず痒い時にクシャミが出た様な感覚だった。

 こんな事を考えるのは俺がまだ恋愛をした事がないからだろうか、数か月前までは女性は2次元しかいないと本気で信じていたのだ、勘弁してくれ。


 ▽


 四人で朝食を摂るといよいよ迷宮にお出かけ、ラムはお留守番で洗濯と掃除をする、実際の家事はバンビーナとマルチェリーナでこなせている、

“これはラムの分”

 と言って、洗濯物を残してある、お手伝いさせて自信をつけさせようと言う考えだろうね、


 とは言え、8歳の女の子を一人で残すのは心配だ、

「ご主人様、わたし達獣人族はラムみたいな子供でも、家族の一員として仕事をさせております、ああ見えてしっかりした子ですから大丈夫です」

「そうなのか」

「はい、わたしも子供の頃から森に入ったものですよ」


 ママとは言え俺より背の低いマルチェリーナ、話をする時俺は見下ろす形、そうなると白い谷間がしっかり見える、

 もともと娼婦として売る予定だけあって、身体は立派だ、

 小さな女の子が好きな童貞君の俺だが、女性の胸元を見るのは本能の様なものだろう、、さっきから話をする度にマルチェリーナの胸元を見ているけど気が付いていないよね、

 さりげなく覗いているだけだし、マルチェリーナもニコニコしているし。


「ご主人様、靴ヒモを見てもらえますか?」

 バンビーナが俺を呼ぶ、

「どうした」

 しゃがんでいるバンビーナにあわせて俺も腰を落とす、

「ご主人様はお猿さんですか、さっきからマルチェリーナの胸元を見過ぎです!」

 さりげない仕草のつもりだったがしっかりバレていたみたいだ。


 ▽


 困ったお猿さんとレイピア剣士は大活躍、サーベルタイガーもどきのロントラや大きなリスのエキュロイを出会うそばからバッサリと切り倒していく、

「ご主人様、この先にチエンティナの群れがいます」

「分かった、一気に狩るぞ」

 中型犬くらいの凶悪な魔物、俊敏な動きと鋭い牙で警戒しなければならない相手だが、バンビーナは突きの練習でもしているかの様に次から次に、数十匹が瞬殺だった、

 いつもは俺に魔物を回すのに、今日は一人で頑張っている、新しい奴隷が来たから色々考える事も有るのかもしれない。


 レイピアを腰に収めたバンビーナはマルチェリーナと一緒に魔石回収、

 マルチェリーナの大型ランドセルですらギッシリ音がしそうなくらいだ、

「もう充分だろう、帰るぞ」

「はい、ご主人様」



 迷宮帰り、緩い登り坂を歩いている、

「マルチェリーナ、出かける前に子供の頃から森に入ると言ったな」

「ええ、獣人族の村は山奥にありますから、野良の魔物やケダモノを定期的に狩っているのですよ、小さい子は山菜取りが主な仕事ですけどね、ある程度の歳になると弓を持たせてくれるのですよ」

「弓が使えるのか?」

「多少は……」

 日本でも学校で弓道部とかがあったけど、柔道剣道よりもマイナーだった、弓が使えると言うだけでマルチェリーナを尊敬してしまう、


「よし、帰りは武具店に寄って弓を買っていくぞ」

「ご主人様、わたくしの弓は一族最低レベルでした、お金の無駄使いになります、どうかお考え直しを」

 獣人族が謙虚なのか、奴隷だから謙虚なのかは分からないけど、とりあえず弓を与えてみよう。


 ▽


 マルチェリーナに弓を買ってやると言って入った武具屋だが、見ているうちに俺も欲しくなって来た、

「主人よ、弓の練習には時間がかかるのか?」

「それは難しい質問でございますね」

「ああ、分かっている、人それぞれ資質の違いがあるからな」

「さすがは冒険者様、良く分かっていらっしゃる、ですが一言言わせてもらえば優れた指導者に師事する事が上達の近道かと」


「なるほど、バンビーナ、お前の分も買ってやる、好きな弓を選べ」

「ご主人様、わたしは高価なレイピアを買って頂いたばかりです、弓までも頂けません」

「これは俺の為の投資なのだ、飛び道具が増えれば手数も増えるぞ」

 バンビーナの分も三張り買ってしまった、迷宮の必要経費だ。

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