第7話 小さな手でユサユサ
奴隷の女の子バンビーナと二人で迷宮探索、今までにない快調な戦闘でバッサバッサ魔物を倒し、バンビーナが魔石を回収、
ところが4階層になってから身体が変だ、段々集中力が落ちて来ているのが自分でも分かる、
数回の太刀合わせでやっと倒した魔物、バンビーナは魔石を取り出すかと思いきや俺の方にやって来て水筒を差し出した、
「お疲れさまでした、ご主人様」
「おお」
ゴクゴクと水筒の水を飲み干すが、力が戻って来る気配はない、頭もボーッとして来た、
「ご主人様、魔石を回収いたしました、わたくしバンビーナは非力なのでこれ以上の荷物が持てません、どうか一度地上に戻って頂けませんか」
「……今日はたくさん魔物を倒したからな、仕方ない地上に戻るか」
俺のメンツをつぶさない気配りの出来る子だね。
地上に戻って買い取りカウンターで魔石を換金する、迷宮の出口はガッチリと警備されていて、冒険者達の魔石やアイテムの許可なき持ち出しは厳禁、
カウンターにはキレイなお姉さんが笑顔で対応してくれているけど、税関職員みたいに冒険者達の挙動を見ている抜け目の無いお姉さん達だよ。
「オース様、魔石の鑑定が終わりました、本日は銅貨80枚で買い取りをさせて頂いて宜しいでしょうか?」
「ああ」
「ありがとうございます、買い取り金額はこちらになります、お確かめください」
笑顔でトレーに乗った硬貨を渡されたが、丸一日迷宮に潜っていたのに稼いだのは銅貨80枚、食事の値段から換算すると8000円くらい、二人でこの稼ぎでは食費で終わってしまう。
この世界には下から鉄貨、銅貨、銀貨、金貨とあって、鉄貨100枚で銅貨1枚、銅貨100枚で銀貨1枚と100倍で増えて行く単純な計算、
異世界に来ても日銭の計算をしなければならないとは世知辛い。
▽
翌日、俺達は再び迷宮に潜るが、今日はバンビーナが先導役、薄暗い迷宮、俺より5歩くらい前をチョコチョコ歩くバンビーナ、頭の上に伸びる筒状の耳がクルクル動いている、
「ご主人様、こちらにはヴィーゼルがおります、右の道を行けば少し距離はありますがエキュロイが三匹かたまっております、いかがいたしますか?」
「雑魚じゃ金にならん、エキュロイで稼ぐか」
「ハイ!」
鹿耳の10歳児は荷物を担いでいるとは思えない軽快な動きで俺を先導する、
突然歩調を緩めたバンビーナはハンドサインで俺に合図を送る、
“この角を曲がった先に3体”
俺は了解の合図を送ると、ソロリと角を覗き、数を確認すると、後ろから奇襲攻撃で二体を倒し、残りの一体も数回太刀合わせをして倒した、
ハァハァと荒い息をしている俺に水筒を渡すと手早く魔石を取り出すバンビーナ、
この日はバンビーナの探索能力が本領を発揮、午後の早い時間に地上に戻ったけど、銀貨3枚と銅貨25枚、
本日の粗利3万2500円なり。
▽
鹿耳少女と一緒のテーブルで夕食、バンビーナは俺を退屈させない様に色々な話題を振って来る、
所詮は18歳だけど、所詮は子供だから微笑ましい話題もあるけど、退屈させまいと健気に頑張る姿勢は悪くないぞ。
「……それじゃバンビーナ、みんながみんなオスに変わる訳じゃないんだな」
「ええ、と言うかオスになるのは里で数名ですよ、少ないオスがメスを独占するんです」
「ハーレムだな」
性交がなければいつまで経っても幼いまま、オスに気に入られ数回孕ませてもらえれば、オスに変わる可能性が出て来る、
そんな状況ではオスは王様扱いだな。
「わたしはハーレムに入れなくて売られたのですけどね」
「なんか問題があったのか?」
「……わたし……顔が、アレなので」
この子の第一印象は田舎のあか抜けない娘だったが、良く見るとそんなに悪くない、
普段は身長差があるからしっかり見られない顔をジッ見つめる、
ちょっと小鼻が目立つ以外は普通の娘だ、子供らしく愛らしい、少なくともブサイクではない。
「そんなに悪くないと思うぞ」
「またまた、ご主人様、わたしの様な醜女に気を使わないでくださーい」
美醜はデリケートな部分だったのだろう、普段見せない反応だと思っていたら急にポロポロ涙を流し始めた、
「……あれ、なんでだろう?……きっと晩御飯が美味し過ぎたからですよね、
ハハハ」
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