第6話 女の子と一緒のベッド
寝所では一波乱あった、広いベッドだから一緒に寝ようと言ったのだけど、
「ご主人様、わたくしバンビーナは奴隷でございます、屋根の有る場所で寝られるだけでも感謝しろと教えられております、この様な柔らかいベッドでご主人様と一緒に寝るなんてバチがあたります」
「バンビーナ、それならどこで寝るつもりだったんだ?」
「台所の隅で身体を休めれば充分でございます」
「ダメだ、お前は明日から一緒に迷宮に潜るのだからしっかり休め、食事、睡眠、休養この三つは必ず取る様に、少しでも無理だと思ったら俺に言え」
バンビーナはしばらく考えると、
“身体を清めてから寝所に伺います”
そう言って出て行った。
▼バンビーナ▼
奴隷商会では、大人奴隷の引き立て役でお客様の前に立つのがわたしの仕事、ブサイク顔で成熟前ではそれくらいしか出来る事はありません、
ですがオース様と言うお方に買われたわたし、ご主人様は優しくて新品の服を何着も買ってくれて、美味しい食事を同じテーブルで食べさせてもらった、奴隷らしくあろうと振舞っていたのだけど、心は浮かれていた、
そしてご主人様はわたしを閨に呼んでくださった、こんな成熟前の貧相な身体でもお情けを頂けるのでしょうか?
聞くところによるとヒト族の男性は小さい女の子と肌を重ねるのを極端に嫌うそうです、ハーレムメンバー加入の為とは言え、成熟前の子と行為に及ぶ獣人族は見苦しいと嫌っているそうです、
ご主人様はわたしと契りを交わして頂けるのでしょうか、普通なら考えられないです、ですが新品の服を何着もあつらえてくださったお方ならわたしの様な気持の悪い子にもお情けをくださるかも。
台所で身体を清めて生まれたままの姿で寝所に入ります、
ベッドの脇で深くお辞儀をすると、そのまま布団にもぐりこむと、
「ご主人様」
小さい声で呼んで見る、
「ご主人様、バンビーナです、夜伽に参りました」
返事がありません、ソーッと近づいてみると、ご主人様はクークーと寝息をたててお休みになられています。
気が抜けてしまいました、花びらが落ちるのは明日の晩までおあずけですね、
わたしはご主人様のすぐ横で、ですが存在を感じさせない様に気配を消したまま身体を休めます、
フカフカのベッドにツヤツヤのシーツ、まるでお貴族様にでもなったみたいです。
今日は色々な事があって疲れたので、あっさり眠りに落ちましたが、なんか寝苦しいです、温かい息が前髪を揺らしています、
腰からお腹にかけて人肌の温もり、ああ、わたしはご主人様に乗られて花を散らされるんだ、目をギュッと閉じたわたしは小さい声で、
「優しくお願いします」
そう言いましたが返事がありません、
ゆっくりと目を開けると、ご主人様は相変わらずお休みになられています、単なる寝返りでした、安心したような、少し残念な気持ちです。
その後もご主人様は何度も寝がえりをうち、最後は寝ている場所がわたしと入れ替わっていました“お疲れなんですね”
段々と東の空が白んで来ました、さぁ、今日はいよいよ迷宮です、朝食のご準備をしておきましょう。
小さな手で身体を揺すられて目が覚める、
「おはようございます、ご主人様」
ニッコリ微笑むバンビーナは既に着替えていた、あれこの子がベッドで寝たところ見てないぞ、
「ああ、おはよう」
「こちら着替えになります、まずはお足を失礼致します」
こちらの世界の常識、寝る時は全裸、パジャマと言う物が発明されていない世界だと思って欲しい、
そんな全裸の俺にパンツを穿かせようとしている、少女奴隷、もちろんお断りして自分で穿いたよ。
▽
出かける前は大騒ぎだった、魔石を入れる大きな布の袋と肩に斜め掛けする雑嚢、すぐに取り出せる水筒、さらには俺の愛剣まで、
バンビーナは一人で全部持って行くつもりだ、
俺の胸よりも背の低い女の子に重い荷物を持たせるのは人としてどうかと思い、少し持ってやろうかと言ったが、
“これが奴隷の仕事です! わたしの仕事をとらないでください”
と逆に怒られた。
小さな身体に幾つもバッグを背負うから背負いヒモは絡まるし、担ぐ順番を間違えたり、この子しっかりしている様で意外にドジと言うか、いっぺんに色々な事が出来ないタイプだろう、
通りのデリカッセンで携行用の昼飯を買って迷宮を目指す、たいした距離ではないが、歩いて行くと冒険者らしき連中が増えて来る、
田舎から出て来たばかりの駆け出しの冒険者もいれば、歴戦のつわものみたいな猛者、貧弱な槍一本の装備だったり、業物の剣と高価そうな盾を持っている奴、
奴隷女に上乳丸出しの服を着せて“こいつは俺の性奴隷だぜ”と自慢気な奴もいる。
▽
俺の斜め後ろを歩くバンビーナ、背中にはズタ袋みたいな背嚢を背負い、ベルトの左側には魔石取り出し用の短剣、右の腰には昼ごはんの入った雑嚢、小さな手で俺の愛剣を大切に胸に抱えている、
荷物を持たない俺は久しぶりに活躍した、3階層でゼェーゼェーと肩で息をしていたのは何かの幻だろう、
特に苦労なく4階層まで降りる、
そうそう、迷宮はまたの名をらせん迷宮とも言われていて、ネジみたいにらせん形に潜っていく、行きは緩い下り坂を降りて行くから楽だけど、帰りは荷物と疲労を背負っての登り坂だ。
らせんが一周すると一階層、最初はレンガで出来ていた壁が、石積みの壁に変わると
“階層を降りたんだな”って分かる仕組み。
面白いのは天井が無い、普通に考えると、らせん形をしているのだから、天井や床を掘り抜けば、ショートカット出来ると思うのだが、
迷宮通路の天井は暗い闇がどこまでも伸びているし、床は硬くどんなに道具でも穴は開かないどころか傷一つつかないそうだ、
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