第2話 異世界に来たらチートがお約束、さて俺のスキルは?

 翌日俺達は王宮騎士団の練兵場と言う場所に呼ばれて剣の稽古、みんな剣を持つのは初めて、剣道経験者すらいなかった、


「ヤァァー!」

 相手の胴を狙う振りをして手元を狙った俺、練習相手の騎士が木剣を落とす、

「さすがでございます、オース様」

「まこと、初めて剣を持ったとは思えない剣さばきでございます」

 素直に喜ぶほど幼くはない、無理やり召喚した俺達の機嫌を損ねない様に命令されているのだろう、とは言えお世辞と分かっていても嬉しいものだ、

「オース様、次は槍を振ってみましょう、ちなみに槍術の経験は?」

 剣はまだ剣道があったけど、槍の経験者は更に少ないぞ。


 肩くらいの長さの槍、先っぽは当たっても痛くない様に“タンポ”が付いている、

「まずは基本の構えから」

「こうか?」

「はい、それでは打ちこみをしてみましょう、最初はわたしの真似をしてください……」




 昼食の後は魔法の練習、

「大須殿、いよいよ異世界らしくなって来ましたね~」

 クヒヒヒと笑うオタク中学生伏美、


「それではあの的に向けて魔力を放っていてください、感じたままで良いです、魔法は自分の念を具現化したものですから」

 係の人が説明してくれているけど、4人のうち半分は魔法なんて信じていないし、残り半分はアニメの話しだと思っている、


「まぁ、俺がやってみるよ、何も出なくても笑うなよ」

 何でも一番にやってみたがる八事さんが立ちあがり、右手を前に出すと突然真っ白な光りが現れ30Mくらい先の的まで一直線、

「マジか!俺スゲェェェ」


 その後瑞穂さんと伏美と続く、俺は薄暗い懐中電灯みたいな、しょぼい光が伸びただけ、みんなから出来の悪い弟を見る目で生温かく見守られた、

 おかしいな、これって的を壊して“測定不能”って叫ぶパターンだろう。


 ▽


 残念な気持ちで宿舎に帰ってきた、と言っても高級ホテルみたいな部屋だけどな、待っていたのは高級ホテルに相応しい美人さん、

「お帰りなさいませ、ご主人様」

 スゲェー、リアルメイドだ、量販店に売っているテラテラした生地じゃなくて、しっかりしたメイド服、そして何より表情が本物だ“お仕えします”のオーラが半端ない。

「わたくしオース様のお世話を任されました、メリッサと申します、何でもお申し付けください」

「お、おう、よろしく頼む」


「それではまずはお身体をお清め致しますね」

 メリッサが合図すると、数人の女性が入って来て、流れる様な動作で俺を椅子に座らせると、丁寧に靴を脱がせて、ズボンの裾を上げると蒸しタオルで足を洗ってくれる、一日革のブーツを履いていたから超気持ち良い~


 気持ち良いのは脚だけじゃなかった、

「お手を綺麗に致しますね」

 フンワリ甘い香りがする様な声で、俺の手を取ると優しくマッサージする様に綺麗にしてくれる、

 時々俺の顔を見上げるとニッコリと微笑む、今になって気が付いたけど、この子達エプロンしか付けていない、


「オース様、いかがでしょうか? この者達は部屋の備品みたいな物です、お好きに使って構いませんよ」

 白状すると俺は童貞だ、今までの彼女は全て二次元だ、三次元の女を“オカズ”にした事すら無い、

 そんな拗らせアニメオタクの俺でもエプロンだけの女性を見ていると興奮しているのが分かる。


 異世界ではネットもスマホも無いけど、代わりの娯楽を用意してくれたわけだ、

 新雪みたいな淡い肌が、童貞の俺を優しくリードしてくれた。



 ▽



「オース様、朝でございますよ」

 メリッサが優しく身体を揺すり、他のメイド達はカーテンを開けたりしている、爽やかなひと時のはずなのに、俺の身体は重いし、頭もボンヤリしている、

 ああ、最悪の朝だ。


 心と身体が重いのは昨夜の出来事のせいだろう、エプロンメイドの一人と一緒にベッドインしたのは良いけど、男として大事な部分が硬くなる事無く終わった、

 拗らせアニメおたくは現実の女とは一緒になれないのかな。

 エプロンメイドさんの名誉の為に言っておくが、彼女は美人さんだったし、俺に対していつも微笑んでくれる、オタクに優しい女神みたいな人だったよ。



 気だるい気分で練兵場に行くと八事さんに捕まった、

「よう、大須、昨晩はどうだった? 俺のところには4人もエプロンメイドが来たんだぜ、誰でも選び放題なんて最高だよな」

「ええ、まぁ」

「それで俺は二人を指名したんだよ、胸の大きな子がアイビーって言う子で、もう一人は背の高くてスタイルの良い……」


 八事さんの武勇談は止まらない、離れたところで鶴舞さんと東山さんが虫を見る目で俺達を見ているよ。

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