第15話 気付き
『新藤さん……?』
折り重なるように僕に倒れてきた新藤さんから生温かいものが伝わってくる。抱きかかえると、べっとりと血が両腕についた。
『新藤さん……僕は撃たれたって大丈夫なの、知ってましたよね?』
「し、知ってましたよ……でも、無意識に身体が、う、動いてしまって……」
新藤さんの顔から血の気が引いていくのが分かる。
「なんでで、しょうね……あなたのこと、普通の……男の子だって思うようになってて、たすけなきゃって……おもっていたのかも、し、れ……」
……死んだ
こうもあっさりと
あっけなく
OL姉さんの分まで生きていくんだって、強く意気込んでいたのに
みんな恐怖からか言葉が出ない。
僕の腕の中で冷たくなっていく新藤さんを見ながら、僕は自分の内側からこみ上げてくるものについて考えていた。
そうか……これはそういうことか……
『一つ、分かったことがあります』
「来るな!お前も死にたいか!」
『僕はこんな姿になってから、心も化け物のようになっていた自分のことをどこか客観的に見ていました。周りで人が困っていようが、死んでしまおうが。まるで関心がなかったんです。でも……少しだけ残っていたヒトの心がそれを許さなかった』
そうだ、僕は異世界アーレスでは人族連合のために魔王軍と戦った。
『叫んでいたんですよ。”そんなんじゃないだろ!”って』
僕は英雄だったんだ。英雄だった僕が、あの世界に対して恥じるようなことはするなと、言ってくれていたんだ……
「うわぁぁ!」
村上が雄叫びをあげて引き金を引く。
銃口の向き、引き金にかかる指の動き。それらから大体の弾丸が発射されるタイミングと着弾地点が予想できる。
パン、パン!
弾丸は僕のサングラスを撃ち飛ばし壁に当たり、二発目はドアのガラス部分を割った。
僕は姿勢を低くして間合いを詰めると、鋭い爪で村上の首をかき切った。
「ガッ!カハッ」
ゴポゴポと血を吐くのと同時に村上はみるみるゾンビに転化していく。
「あ゙ガぁ、ゴパッ!」
「きゃぁ!」
「ゾンビになったぞ!」
僕が村上の首を切ったところは見られていないようだったけど、なりかけゾンビの村上にパティルームはパニック状態になってしまった。
バリケードとして立てかけてあったソファが乱暴にどかされて、千住コロニーの人たちが次々に部屋から出ていく。
入って来ようとしていたヘルメット軍団と揉みくちゃになって、もうなにがなんだか分からなくなってしまった。
村上が誰かを襲う前に仕留めなければ。
村上はゆっくりと立ち上がると、僕におじぎをするように一度身体を傾けた。
僕は銃を拾って、村上の左目に銃口をあてる。
お前の王国はこれで終わりだ。
パンッ…………
――ピコンッ
『経験値が一定数を超えました。グールから存在進化を開始します……対象者
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