第14話 終わった世界で
「え……ウソだろ……渡嘉敷が?」
パーティルームは動揺に包まれた。少なくともこの部屋にいる幹部と思われる男たちや女性の何人かは、それを隠そうとはしなかった。
「申し訳ありません……川向こうの連中が邪魔してきて、田村もさらわれちまった……」
「銃は?渡嘉敷の銃はどうした?」
「……すみません。分かりません」
「クソッ!何やってんだあんたらは!」
テーブルをガッと蹴り押して怒りをあらわにする村上。
田村さんらのことより銃かよ……
村上は爪を噛みながらブツブツと独り言を言って、急に篠田さんに銃口を向けた。
「この責任はキッチリと取ってもらうよ篠田さん……」
――その時、
「た、大変です!ヤツらが!ヤツらが攻め込んできて……」
ドアを開けて報告してきた男の後ろから、人々の怒号と悲鳴が聞こえてきた。
「まさか、つけられていたのか……どこまで疫病神なんだあんたらは!!」
まるでヤ〇ザの抗争みたいだな。
もうこうなってしまっては、ここに居続ける理由もないか……
次々にパーティルームに避難してくる千住コロニーのメンバーの流れに逆らいながら、僕は部屋を出ようとした。
「マヒロさん……!」
あ、新藤さんだ。ちょうどいいや。この人だけでも連れてここを出よう。
『新藤さん、ここを出ましょう。この避難所はもうダメです』
「で、でも、部屋の外はヘルメットを被った人たちが襲ってきていて……」
『そんなのどうとでもなります、さ、行きましょう』
パンッ
乾いた音がパーティルームに響いた。
村上が握っている拳銃から煙が出ている。天井に向かって撃ったらしい。
「誰もこの部屋から出さない。誰もこの部屋には入れない……ドアを封鎖しろ」
この部屋には20人くらいいる。
籠城でもするつもりか?話にならない。
「姉さん!姉さんー!どこだー!」
部屋の外から聞こえてきた。家族が部屋の中に入れないのかな?
「恭介?……恭介ー!!」
「姉さん!!」
村上の左側に座っていた綺麗なお姉さんが突然立ち上がって叫び出した。パーティルームのドアの向こう、フルヘルメットを被った人物がバイザーを上げてドアのガラスからこちらをのぞいて叫んでいる。姉弟なのかな。
「美咲!大人しく座っていろ!」
「でも、でも!恭介が!弟が!」
ミサキと呼ばれたお姉さんは村上にすがるが、村上はミサキさんをソファに押し倒してしまった。
「姉さんを返せ!」
ドンッとドアに体当たりする音が響く。
『もしかして村上さんは、野蛮人と呼んでいた人たちの家族を、このお姉さんを拉致してきたの?』
思わず聞いてしまった。
「だったらなんだ?周りを見ろよ!この世界は終わった!力が全ての時代になったんだ!力を持つ者が偉いんだ、分かるだろ?!」
はぁ……ため息が出てしまう。
『……分かってないのは村上さんです。もうあなたの役目は終わりました』
「うるさい!俺に近寄るな!」
そう言って銃を僕に向ける村上。もう冷静さは消え失せている。一度僕に撃ってもらうしかない。
「マヒロ!下がるんだ!村上さんも、今こんなことしている場合じゃないでしょう?!」
篠田さんが僕と村上を制止するように言う。外ではドアをこじ開けようとさらに音が激しくなっていた。
『もう一度言いましょうか?もう、終わりです』
「黙れー!!」
パンッ!!
再び銃声が響く。
しかし、村上が放った弾丸は僕には当たらなかった。
銃声と同時に僕に誰かが覆い被さり……
そのまま僕は押し倒されてしまった。
折り重なったように僕の上に倒れている人を見る。
新藤さん……?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます