第4話 発見第一避難民
「だ、誰だ?!!」
突如、誰かの声がして振り向いた。
そこには、モップに包丁をくくり付けて槍のように構える中年の男がいた。
「ひぃ!化け物!こんな所にまで!」
僕を見るなりヒドいことを言ってきた。まあ、仕方ないか。
「ガ、ウバうヴァ……」
「ち、近寄るなー!!」
そうだ言葉が話せないんだった。
中年男性は無茶苦茶に槍モドキを振り回して威嚇してくる。
おや?さっきまでは見えなかったが、よく見るとカウンターの奥に若めの女性が2人、抱き合って怯えていた。
『ダフネ、悪いけど僕の代わりに、このおじさんとしゃべってくれない?』
『えぇぇ~なんでぇ?人間に無暗に姿を見せたり聞こえるように声を出しちゃダメってマヒロが言ったんじゃない』
『僕そんなこと言ったっけ?じゃぁ声だけ。僕がしゃべっているようにさ。腹話術みたいで面白いだろ』
『……ふむ。それならいいわ』
『いいかい、余計なことは言わないでよ?』
『もぅ。分かってるわよ』
『驚かせてすみません。僕はマヒロといいます。訳あってこんな姿をしていますが、あなたたちに危害を加えるつもりはありません』
すんごい棒読み。
逆に怪しむんじゃないかな……
「う、うそをつくなー!この化け物め!」
やっぱり……
「そうやって俺たちを騙してゾンビに変える気だな!!」
『いや、そんなことをしても僕になんのメリットもないのでしませんよ』
「黙れ化け物!お前らのことなんか誰が信用するか!」
ああ面倒だ。
いっそのこと、このおじさんが言う通り食い殺してやってもいいんだが。
でも今はそんな気分じゃないんだよな。
『そうですか。では僕はこれで』
別の階で休もう。できればゾンビがいない所がいいな。
「ちょっと待って!」
レストランから立ち去ろうとしたら、怯えていた女性の一人が叫んだ。
綺麗な人だな。ザ・OLって感じがする。
「お前……なに余計なことしてるんだ!」
おじさんがその女性に怒鳴りつける。
女性はおじさんの言葉にも怯えている様子だが……
「あなたはこの階まで上がって来たんでしょ?!他の階の様子はどうだったの?!」
おじさんの顔色をうかがいながらではあるが、勇気を出して僕に聞いてきたみたいだ。
『1階には行きました。でもバリケードがあって外には出られませんでした。他の階には行ってないので分かりません』
「でもたくさんゾンビがいただろう。どうやってここまで来た?いや……お前もゾンビだから襲われなかったのか」
今度はおじさんが聞いてきた。
『どうでしょうか。動きがのろいんで分かりませんが倒しました。普通に』
「なッ?……いやしかし、階段はヤツラでいっぱいだし、そうでなきゃ無事にここまで来れないはずだ……」
ブツブツと独り言を言い始めたおじさん。
もういいかなと思って立ち去ろうとしたら、
「お願い!私たちを助けて!」
は?
なにを言っているんだこのお姉さんは。
「お前!なにを言い出す!」
「あなたゾンビをやっつけることができるんでしょう?!ここから連れ出して!」
「このッ!」
おじさんが女性を足蹴にした。
ああ、そういう関係性だったのね。
「お願い……あなたが何者だって構わない……」
『どうするのマヒロ?』
正直、このお姉さんがどうなろうと僕には知ったことではない。関わると面倒そうだし。
おじさんを見ると、ヒッと小さく悲鳴を上げた。
このおじさんはちょっと気に食わない。僕が大嫌いな人に系統が似ている。嫌がらせついでに外に連れ出してやるか。
『分かりました。でも今日はもう日が暮れるからここを出るのは明日にしましょう』
「本当?!ありがとう、ありがとう……!」
お姉さんは涙を流してお礼を言ってきた。
おじさんはあまり納得してないみたいだけど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます