第2話 ゾンビじゃん
ピコンッ
『経験値が一定数を超えました。ゾンビから存在進化を開始します……対象者
無機質な誰かの声がアナウンスのように聞こえてきて僕は目覚めた。
あれ……
なんだここ
僕はどうしてこんな所にいるんだろう……
辺りを見渡すと、白い廊下にガラス張りの壁。部屋の中は何かの棚や薬剤のような物が置かれている。
そして、さっきから耳障りな警告アラートが鳴りびいて僕の思考を鈍らせていた。
ふと、視界入った床に広がる真っ赤な模様。
僕のすぐ横に白衣を着た研究員のような男性が、首から大量に血を流して絶命していた。
視線を上げると、この男性のような惨い死体がこの廊下には何体も転がっているではないか。
ここは何かの研究施設なのかな……
なんで僕がここにいるのか思い出せない。
『マヒロー!!』
僕を呼ぶ声
キラキラと光る蝶のような飛行物体が僕に近づいて来た。
『起きたのね!……良かった、ちゃんと魔法が効いている』
「あ、ガガ……」
ダフネ!
そうだ、僕が契約した大精霊ダフィーネストル!
ダフネに聞きたいことがいろいろあるけど、言葉がうまく発せない。
『言葉がうまく出ないのね…………これでどう?念話なら話せるでしょ?』
『あーあー。うん、大丈夫みたいだ』
初めて念話を使った時、頭に声が響く感じで気持ちが悪かったことを思い出した。意志を持って心で話すことも慣れるまで少し時間かかったよな。
『それにしてもこの状況、一体どうなってるの?死体だらけだ』
『説明したいけど、今はこの建物から出るのが先よ。マヒロ、歩ける?』
『……身体は重いけどなんとか動けるよ』
『よし!さっき出口がないか探してたのよね。あっちに扉があったんだけど開け方が分からなかったの』
『とりあえず行ってみようか』
円を描くようにカーブする廊下を進んで行くと、ヨタヨタとおぼつかない足取りで歩く人が見えた。防護服のような物を着ているけどボロボロで血だらけだ。
『気をつけてマヒロ。コイツらみんな魔物よ』
『分かった。ここはライトニングアローで動きを止めて……』
あれ?魔法が発動しない?!
『残念だけど今のあなたに魔法は行使できないと思う』
『え?!なんで!』
『だって……ほら……』
ダフネが指差したガラス窓。
そこに写っていたのは、正真正銘、ただの死体だった。
「ぐぉぉぉ?!」
頬は痩せこけて瞳は白く濁り、皮膚は薄黒く干からびたように変色している。誰がどう見てもこれは……
『ゾンビじゃん……僕……』
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