第18話 セシウム VS ビスマス
セシウム・ロンドは入学試験3位の成績だと言ってたけど、ビスマス君は……?
まるで手足のようにガンビットを操るのはビスマス君だった。セシウムは強力な「風魔法」を使用してるけど、彼ほど上手には使えていないみたい。わたしが言うのもなんだけどセシウムのほうは、魔力に頼ってるって感じかなぁ。
「君、やるじゃないか!」
「……セセセ、セシウム様はガウラ様のこと……どどど、どう思っているのですか……?」
「へぇ〜、君って意外と積極的なんだね。そんなに彼女のこと好きなんだ。付き合いたいの?」
「――!すすす、好きなんて、とんでもない!僕みたいな平民がガウラ様とお付き合い出来るなんて思っていません!」
「ふ〜ん、そうなんだ。じゃあ、僕が彼女に興味を持っているって言ったら?」
「――!」
ビスマス君とセシウムは「ガンビット」をそれぞれの使い方で戦っている。いい勝負だと思う。だけど……なんだか、戦いながら話している内容が……。
「それにしても、君って強いね!さすが入学試験で僕より好成績の2位なだけはある……じゃあさ、僕が勝ったら彼女をもらうよ!」
「「――!」」
いやいや、なにこれ……?本人の許可無しに話が進み過ぎなんだけど。しかも、会話の声が大きすぎて他の生徒たちも反応してるし。
「嘘でしょ」「セシウム様ってあの女が好きなの?」「あの平民の子で遊んでるんじゃない」「でも、セシウム様って婚約者を決めていないみたいよ」「えぇ?まさかあの子を?」
いやいやいや、ないないない。これ以上の厄介ごとは勘弁してくれぇ〜!わたしには任務があるんだよ。ネオンちゃんの殺気も凄まじいし、ハイドさんに何を言われるか……いや、ハイドさんなら三機将の懐に潜り込むチャンスだとか言って、セシウムと交際しろとか言い出しそう……くっ……これは、セシウムを勝たせるわけにはいかない。
「ガガガ、ガウン様は渡さない!」
「おっ!本心が出てきたかな?」
二人の「ガンビット」がぶつかり合う!セシウムの「風魔法」に対して、ビスマス君は「氷魔法」だ。
ビスマス君を助けたいけど、わたしが攻撃に参加するには「ガンビット」を使用しなければならない。そして、それは今フレロビの身体に巻き付いている。
う〜ん……どうしよう。フレロビから「ガンビット」を外しても、どうせ鎖が邪魔で使いこなせないしなぁ……鎖が邪魔……そうか!
鎖を取っちゃえばいいんだ!
わたしはフレロビに近付くと巻き付いた「ガンビット」の先端を持ち上げる。
「――な!?何よ……私に何するつもりよ!」
「ちょっとごめんね」とフレロビに言い。先端の刃と鎖の接続をズバッと手刀で断ち切る!
「――え!?……は?」
戸惑うフレロビを無視して全部で四つの先端を断ち切った。わたしとフレロビの「ガンビット」を破壊して手に入れたのは四つの刃。
「「「――!」!」!」
先生や生徒たちもわたしの奇行に目が丸くなる。
「ヨシ!これで戦える!」
鎖があるから邪魔なんだ!『雷光Lv4』……名付けて『雷光ガンビット』!
身体中に纏わせた雷光と「ガンビット」の先端を繋ぐ……まるで見えない糸で繋ぐように四つの刃は宙に浮く。
「「「――!」!」!」
みんながびっくりするのも無理もない。まるで超能力でも使っているのかと思うだろう。ファンネルのようにわたしの周りを浮遊する「ガンビット」の刃。
雷光を定着させる技術は隊長のお墨付きだ。
「は?……アンタ何それ?どうやってんの……?」
フレロビは意味が分からないとばかりにそう言う。でも、わたしには説明出来るような知識は無い。なので「へへ、すごいでしょ!」と言うしかなかった。
「――ししし、しまった!」
「もらった!」
セシウムが体勢を崩したビスマス君へと風魔法を発射する。直撃する寸前……わたしの雷光がセシウムの攻撃を掻き消した!
雷光の『放電』はそのまま「ガンビット」を伝い、セシウスを一撃!
「――ぐはっ!」
膝をつくセシウム……「それまで!」と模擬戦終了の掛け声とともにビスマス君の動きも止まった。彼もまた体力をかなり消耗していたみたい。ふぅ、ぎりぎり間に合った……。
「キュア!」
わたしはセシウムとビスマス君に範囲回復を施す。一瞬で二人を全回復して安心していると、辺りが静まり返っている。
「……え?……どうしたの?」
そう、ネオンちゃんのほうを向いて尋ねてしまったが、軽く微笑んだ彼女は「みんな、あなたの凄さに驚いているだけです」そう言って周りにドヤ顔をしていた。ネオンちゃん……可愛い。
「すすす、凄いです!ガウラ様!鎖無しで「ガンビット」を操るだけでなく、「キュア」を使えるなんて!」
ビスマス君は、目をキラキラさせてわたしの手を取る。前髪が長いのでキラキラした目は見えないけど、なんとなくそう感じる。
「……どういうことだ……?キュアを……使えるなんて……」
回復して元気になっているはずのセシウムは、膝をついたまま、腑に落ちない感じでわたしを見つめる。
あれ……?わたしなんかマズいことした?訝しんだ表情のセシウムがゆっくりと立ち上がり近付いてくる。
セシウムはその愛嬌のある顔をわたしの顔に近付けると、耳元で囁くようにこう言った。
「君……【幻想のオド】って知ってる?」
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