第13話 事実と真実
「いいなぁ……ネオンちゃんはスタイル抜群で……2つしか歳が離れてないのに、わたしと全然違う……」
「ガウラ様も、2年も経てば私くらいには成長するでしょう。お肌も綺麗ですし、きっと美しい貴族の淑女になりますよ」
――う……2年後も同じ体型だというこの辛さ。確定ロリっ子です……。
ただ今、ネオンちゃんと一緒にお風呂中。まもなく、ハイドさんが来るということで、急遽、湯浴びをすることになったのだ。
ダンジョン帰りですぐに訓練する予定だったので、お風呂に入ってなかったけど、失礼のないようにと、お父様の指示だ。
別に、ハイドさんと会うのに汗臭くてもいいんだけどなぁ。お父様は、何を勘違いしてるのか、わたしの嫁ぎ先にと考えているのかも知れない。
ハイドさんが最近会いに来るのは、ネオンちゃん目当てじゃないかとわたしは思う。
たまぁ〜にネオンちゃんのほうを見てるときがあるのを、わたしは見逃さない。あれはきっと惚れてるね……ネオンちゃんにその気は無さそうだけど、ありゃ狙ってるね。
ったくしょうがないなぁ。わたしがちょっくら恋のキューピッドでもやりましょうかねぇ。
「ねぇねぇ、ネオンちゃんって好きな人とかいるの?」
「……好きな人……ですか。私は全てをガウラ様に捧げています。そうですね……好きな人と問われれば、ガウラ様……という答えになるでしょう」
「――ネオンちゃん!……嬉しい。でもね、わたしが聞きたいのは殿方のことだよ!と・の・が・た!」
「男性ですか……?まったく興味ありませんね」
「――え?いや……例えばハイドさんとか!」
「……まったく興味ありませんね」
「――!」
かぁ〜!ハイドさん……残念!まったく脈はありませんぜ!ウラジール家に通い詰めてるけど、無駄な努力……おつです。
「わたしは、わたしより強い者にしか興味ありません……そう、ガウラ様のように……」
「――おっふ!」
背中を流してくれていたネオンちゃんが、その豊満な胸を背中に押し付けてくる。
……女同士ながら、ネオンちゃんのツンデレ具合は凄まじい。ツン……いや、最近ツンもあまり感じない。無表情からのデレだ!クーデレに近いのかな?
「へへ……ありがとうネオンちゃん!わたしもネオンちゃんが大好きだよ!」
「――そ……そうですか。それは……とても嬉しいです」
――あれ?後ろを振り向くと、ネオンちゃんが顔を赤らめ俯き恥ずかしそうにしている。ネオンちゃん……割とガチなやつ?こ、こここれは、少し話題を変えようかな……。
「そ、そういえば、ネオンちゃんってたまには実家とかに帰ったりしなくていいの?家族とか心配しない?」
「家族……ですか。私にとって、そういうモノが存在するかどうかは知りません」
「――え?知らないって……?」
「気付いたらウラジール家に拾われてました。5年程前です。ですからダリア・ウラジール様がご主人様……という事実くらいですかね」
「その前の記憶が無いってこと?」
「はい……」
記憶の無い「ハーフデモニウム」……!?ネオンちゃんは、主人公『フェルミ・エーデル』とまったく同じ境遇?
ダルさん、隊長、ミポリン……三人にも分からない存在なのに、これほど主人公に酷似しているなんて……いったい、ネオンちゃんは何者なの?
※ハーフデモニウム……人間と魔族の混血。
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「貧乳娘……遅いぞ」
「お待たせして申し訳ございません、ハイド・ローレン様。今日はどう言ったご用件でしょうか」
豪華なソファに腰掛けて、偉そうに足を組んでいるハイドさんに、貴族らしく精一杯の挨拶をする。
「ふん、何だその似合わない喋り方は!気持ちが悪いからいつも通りに喋ろ!」
「……気持ち悪いって、ひどくないですか?いちおう、わたしだって貴族なんですからね!」
「ああそうか、ウラジール家も子爵まで上がったらしいな。やるじゃないか。没落寸前まできていたらしいが……今じゃ安泰だな」
そう言うハイドさんは、公爵という超上流階級だ。機械の国、帝国『アリウム』の最重要人物。ハイドさんの功績はとんでもなく凄いらしく、皇帝にすら意見を言える立場だそうだ。
「う〜ん、安泰もあと1年半ですね。『ウタカタ』の復活前にはダンジョン資源事業は潰すつもりです。それまでに、稼ぐだけ稼ぐ……そんなところです」
「……『ウタカタ』の復活か……お前はよくそれを口にするが、確かなのか?」
「それは間違いありません。逃れようのない運命です。それにハイドさんだって、わたしを信じてるから、帝国の防壁を強化してるんでしょ?」
「……ふん!まぁ、俺なりに可能性は考えていたことだ。ただお前のように正確な日付けまでは確証が無かった」
そう、わたしには正確な日付けが分かっていた。ダルさんのマニアックな知識のお陰で日付けまで分かっているのだ。それをハイドさんだけに伝えた。
「わたしには先読みのチカラがあるって言ったでしょ!それを信じたのがハイドさん」
「……まぁな。お前が俺しか知らない情報を知っていた。それがお前を信じる要因だからな……どう考えても先読みのチカラを持っているとしか思えない」
「でしょ!それで今日はどんな用件ですか?あ……ネオンちゃんは今買い出しに行ってますので、残念でしたね」
「――な!?貴様、何を言ってるんだ!?」
「えぇ〜?隠さなくてもいいじゃないですかぁ〜」
「ちぃ……それも先読みか……?」
ハイドさんは悔しそうに頭を抱え俯く。
「――は?……え?……」
あれ?なんだか様子がおかしいぞ。ハイドさんはネオンちゃんが好きで、会いたいんだよね。そんなシリアスな雰囲気で悩むことじゃないでしょ?例え、ネオンちゃんにその気は無くても、公爵のチカラで
無言で床の一点を見つめるハイドさん……えっと、なんかごめんなさい。ネオンちゃんって【幻想のオド】にとって何なのか……ハイドさんなら知っている?
「……お前は、『ウタカタ』を滅するのか?」
鋭い眼光がわたしを射抜く。眼の奥には決意とも思える強い光が宿っている。
「ハイドさん……わたしは前にも言いましたが、『フェルミ・エーデル』と『アメリ・シンシア』を救うために『ウタカタ』を倒します。もちろん、封印は使いません!」
「……それは、可能なのか?」
「はい……可能です!」
「そうか……お前は『ハーフデモニウム』というのも知っているはずだ」
「はい、ネオンちゃんのことですよね」
「……そうだ。では、『ウタカタ』を滅ぼせば『ハーフデモニウム』が死ぬことを知っているか?」
「――え?」
「つまり、お前はネオンを殺そうとしているんだ!」
……え?……わたしがネオンちゃんを殺す?
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