第12話 ダンジョン調査隊・顧問

 ダンジョン資源事業の調査隊に参加するようになって半年の月日が経った。


「お嬢!こっちは俺に任せろ!」


「モリブデンさん、その横穴からオークが出てくるよ!」


 新しく手に入れた『神眼』は少し先を視ることがある。自分の意思ではないが、その瞬間を視せてくれるのだ。


「――うおっ!?マジだ……さすがお嬢。助かったぜ」


 モリブデンさんが避けたのを確認し、雷光Lv2「放電」を横穴へと打ち込む!複数のオークが消滅したことを確認すると、ピピピッとスカウターに反応が入る。


「モリブデンさん、ここ任せていい?先行してるネオンちゃんとアルゴ隊長の20層にホブゴブリンの群れが来てるの!」


「オーケー!ここは任せろ、お嬢!……オラオラァ〜!俺が相手だぁ〜!」


「……気をつけてね、モリブデンさん。死んじゃダメだよ」


「ああ!この調査隊の理念だもんな!」


「うん!」


 わたし『ガウラ・ウラジール』は、貴族の三女にしてダンジョン調査隊の顧問……ウラジール家の復興のため、ダンジョンの複雑な地形を作図し、エネルギー資源である「魔石」を乱獲しているのだ。


「ヘッドホン!」……先行しているネオンちゃんのもとへ辿り着く前に三人を呼び出す!


{ウラン、ホブゴブリンに『オーバードーズ』は使うなよ!}


「えぇ!またぁ?せっかく一気に殲滅出来るのに〜?もう雷光セイバーで暴走しなくなったてぇ〜」


{対面強化だ。『雷光ナックル』だけで倒せよ}


「隊長……スパルタ……」


 ※雷光ナックル……両手に雷光を留めたまま相手を殴る技。ボクシンググローブのように雷光が手を覆っているので、戦闘スタイルは超近接ボクシングスタイル。


{毎日の訓練通りやれば問題ない}


「……はい」


『虚スウ』を倒してから半年間、日課のようにしていたスパーリング……地下の訓練場を使い、隊長とダルさんコンビにみっちりしごかれた。


 二人とも身体が小さいから全然攻撃当たんないだよねぇ〜。まぁ、わたしが下手くそなだけだろうけど……。


{ウラっち、ホブゴブリンって大きいから囲まれないように立ち回るのよ〜}


「うん!ありがとう、ミポリン」


{ウランちゃんは、なぜかモテるからねぇ……モンスターに}


「う……たしかに……アイツらいつも興奮してるから気持ち悪い……ダルさんでもこの謎は分かんないだね」


 20層に辿り着くと同時に、アルゴ隊長の背後を取っていたホブゴブリンに一撃!


「――ガウラ顧問!助かります」


「アルゴさん、ネオンちゃんは!?」


「今、ホブゴブリンに囲まれています!」


「――了解!ローレンスーツ起動!」


 インベントリから取り出したアタッシュケースが黒い液体金属となり、身体を包み込む!


 ※ローレンスーツ……ハイド・ローレンに作ってもらった液体金属スーツ(黒)。首から下まで全身黒いスーツに包まれる。


 ジャンプ一発!ホブゴブリンの群れの頭上から拳を打ち下ろす!ドンッ!と凄まじい衝撃とともにネオンちゃんを取り囲むホブゴブリンを蹴散らす!


 しかし、ゾロゾロと集まってくるホブゴブリンたち。「ガウラ様!」「お待たせ、ネオンちゃん!」……そう言って背中合わせで敵を迎え討つ!


「背中、預けます!」

「うん!わたしも!」


{あらあら、囲まれないようにって言ったのに}

{いや、これでいい……練習になる}

{隊長は相変わらずですね〜}

{デュオは連携が大事だからな。ネオンとは信頼関係もあるしな}


 ホブゴブリンの攻撃……見える!隊長やダルさんに比べたら大したことない。無駄な動きが多いから、これだけの数に囲まれても負ける気がしない!


           |

           |


 わたしとネオンちゃんは100体以上のホブゴブリンを問題なく倒した。


「ガウラ様、素晴らしい戦闘技術でした」

「ありがとう、ボクシングっていう技術だよ」

「ぼくしんぐ?……なるほど、よく分かりませんが、さすがです」


 {我々が鍛えてるんだ、当然だな}


「初めて私と戦った時も凄かったですが……あれは何だったのか……そう思う時もありました……」

 

「へへ……ごめんね」


 {まぁ、あれは俺だからな}


「『虚スウ』を滅した時にも感じなかったあの圧倒的な古豪のそれ……今日はまさにあの時のガウラ様を彷彿とさせる戦闘技術でした……あの時のあなた様は幻ではなかったのですね」


「えぇ〜?そこまでいっちゃうぅ〜?まぁねぇ〜!ウヒヒッ!」


{調子に乗ってるな……この俺と同等だと?}

 

{まぁまぁ、ウランちゃんは今ステータスも化け物ですから。あの時は、Lv1だったウランちゃんと入れ替わった隊長ですよ。しょうがないですって}


{そうねぇ、もうずいぶんAUTOモードも使ってないし、今ならどうなるのかしら}


{ふん、今日も反省点は山積みだ。帰ったら特訓だな}


➖➖➖➖➖➖

ガウラ・ウラジール【橘花宇蘭きつかうらん

Lv 50         【 Lv 89 】


HP 1729/1729  【3096/3096】

MP 2323/2323  【3150/3150】

SP 40/40      【99/99】

 

物理攻撃力 296      【529】

魔法攻撃力 1904(+210) 【3150】

物理防御力 309(+50) 【369】

魔法防御力 810(+100) 【716】

チカラ 296     【529】

魔力  1341    【3030】

体力  349     【410】

精神  529(+200) 【700】

運   193     【223】

 

 ・魔法 ヒール小(消費MP 増加)

     ヒール中(消費MP増加)

 ・魔法 アクア

     アクテラ

・【魔法 キュア(範囲回復大)】

・【魔法 キュアテラ(回復効果大)】

 

 ・スキル 雷光Lv1 雷光 Lv2 雷光Lv3

     『ゼロ距離雷光』『放電』『渦雷』

 

・【スキル 『ライジングブースト』】

 

 ・スキル『当千威圧』


 ・スキル『くいしばり』


 ・スキル『イベント.・エフェクト』

 

 ⚪︎【スキル 『オーバードーズ』】解放済み

  

 ・固有スキル 『固有インベントリ』 LV3

 ・固有スキル 『雷光セイバー』

 ・固有スキル 『雷光ナックル』

 

 ⚫︎【固有スキル 『ウランの部屋ウランズルーム』】未解放

  

 ⚪︎【ユニークスキル 『ヘッドホン』】解放済み


 ★称号『一騎当千』 

 ★称号『ゴブリンスレイヤー』

 ★称号『不撓不屈ふとうふくつ

    (精神+200付与)

 ★称号『雲外蒼天』

     (魔力+200)

 ★称号『神殺し』

     (神眼)

 

 ※ () 内は装備補正

  【】内は本人にしか視認出来ない


➖➖➖➖➖➖

  

{今回は『ライジングブースト』も使ってないし、及第点でしょ?カリくん}


{……ふん、ギリギリだな}


{厳しいなぁ〜隊長は……昔からほんっとスパルタですねぇ}


{親心だ……}


{ウフフ、そうねぇ。ウランちゃんには乗り越えてもらわないといけないものねぇ……アタシたちを……}


{ですね……}

{だな……}


           |

           |


「ガウラ様、黒装束が痛んできましたね。新しいのを準備するのでそちらは処分してください」


「――え?」


 ダンジョン調査から帰ってくるとネオンちゃんはいつものように着替えを手伝ってくれる。わたしの羽織っていた黒装束を入念にチェックすると、激しい戦闘により、かなり痛んでしまったことに気付きそう言う。


 この黒装束はネオンちゃんからのプレゼントだ。わたしに失望した時には作ってくれないと言っていたけど、あるとき枕元に置いてあったのだ。


 嬉しすぎて問いただすと、頬を染めたサンタクロースなネオンちゃんが「サイズ……合うといいですが……」と目を合わさずに言った。


 あまりの尊さに悶絶したわたし……。「大好き〜!」と抱きついたが、仕事の邪魔だと一蹴……だけど、この日から距離が縮まった気がした。


「ガウラ様、また新しい物を差し上げますから……」


「ダメ!これはネオンちゃんからもらった初めてのプレゼントなんだよ!まだまだ着れるし、もっと痛んでも修繕すればいいもん!」


「……ガウラ様、貴族なのですから着るものはいつも美しくしてもらわないと……」


「戦闘服だから貴族は関係ないよ!それにこの黒装束、すっごいお気に入りなんだから!」


「……そうですか。まったく……ガウラ様は変わり者ですね」


「――!」


 ネオンちゃんの顔が少し緩んだ気がする……少しずつ……少しずつだけど、笑顔を見せてくれるようになったなぁ。


「ガウラ……入っていいか?」


 部屋を訪ねてきたのは「ダリア・ウラジール」……お父様だ。半年前にぶたれた頃とは180°態度が変わった。ダンジョン資源事業はわたしのお陰で急速的に伸びてるからだ。


「はい、何でしょう。お父様」


「まもなく、ハイド・ローレン様がお見えになる。お前に頼みがあるそうだ……くれぐれも無礼のないようにな」


「はい、かしこまりました」


 ハイドさん……また、来てるの?よく来るなぁ……。

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