第11話 神眼
『虚スウ』……『ウタカタのカケラ』と言われたその異形はモンスターでも、魔獣でもない。コレといったカタチが存在しない生物。時にゲル状に柔らかく、時にクリスタルのように硬く。
予備動作なく無数に繰り出されるクリスタルの刃がウランを襲うが、物体に吸い付く雷光セイバーの速度がそれを上回る!
弾くと消滅する刃はジュワッと気体へと変化していく!無心で、雷光セイバーの意思に任せるように襲いくる刃を打ち払う!
突き進み、『虚スウ』の本体であろう異形の塊へと舞うように向かう!
「――ガウラ様!……な、なんて動き……!ハ、ハハ……私と戦った時とはまた別の次元にいる。あぁ、素晴らしい……ゾクゾクと鳥肌がおさまらない」
「う、う……あ……あれがさっきまで……ゴブリン一匹に苦戦していたお嬢様なのか……!?ネオン氏の……言っていたことは……これだった……のか!?」
「マ、マジかよ……あ、あのヒョロガキ……あの化け物と渡り合って……るだと!?」
{ゾーンに入ったな……}
{ですね〜片目が見えないハンデなんか関係なさそうです……}
{アタシたちの時間もそろそろね〜あとは助言をしてあげることしか出来ないわ}
ドクンッ!ドクンッ!と戦いながらレベルが上がってるのが分かる……。まだ戦闘中なのにどうして!?
{『虚スウ』の刃って、一つ一つが独立した生物なんだ!だから対策が必要だよ!}
――ダルさん!だから、本体をいくら斬っても倒せないだね……。それに独立してるから経験値がどんどん入ってくるんだ!
{つまり、『虚スウ』は全てを同時に消滅させないとすぐに別の物質に変化して復活するのよ!}
――ミポリン総督!
{『当千威圧』を発動し、雷光セイバーを『虚スウ』に放て!復活する間に……新スキルの『オーバードーズ』に賭けろ!}
――隊長!……はい!
「当千威圧!」
ギュンッ!と『虚スウ』の動きが鈍くなる。
「『オーバードーズ』!」
新スキルを『虚スウ』全体に放った。
声とも言えない絶叫が『虚スウ』から発せられる。断末魔のようなその叫びは深層に響き渡り、鼓膜を破るほどの圧がわたしたちを襲う!
その見た目や鳴り響く絶叫とは裏腹に、キラキラと輝きを放ちながら消えていく『虚スウ』……『ウタカタのカケラ』と言われたその生物はオーバードーズの猛毒により徐々に生命を削られ、しばらくすると消滅した。
★称号『神殺し』獲得
(右目に『神眼』の効果)
神眼……少し先の動きを予測出来る
★魔法 キュア(範囲回復大) MP消費100
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ガウラ・ウラジール【
Lv 50 【 Lv 25 】
HP 1729/1729 【753/753】
MP 2323/2323 【1010/1010】
SP 40/40 【35/35】
物理攻撃力 296 【123】
魔法攻撃力 1904(+210) 【1515】
物理防御力 309(+50) 【213】
魔法防御力 810(+100) 【339】
チカラ 296 【123】
魔力 1341 【1045】
体力 349 【158】
精神 529(+200) 【211】
運 193 【157】
・魔法 ヒール小(消費MP 増加)
ヒール中(消費MP増加)
・魔法 アクア
アクテラ
・【魔法 キュア(範囲回復大)】
・スキル 雷光Lv1 雷光 Lv2 雷光Lv3
『ゼロ距離雷光』『放電』『渦雷』
・スキル『当千威圧』
・スキル『くいしばり』
・スキル『イベント.・エフェクト』
⚪︎【スキル 『オーバードーズ』】解放済み
・固有スキル 『固有インベントリ』 LV3
・固有スキル 『雷光セイバー』
⚫︎【固有スキル 『
⚪︎【ユニークスキル 『ヘッドホン』】解放済み
★称号『一騎当千』
★称号『ゴブリンスレイヤー』
★称号『
(精神+200付与)
★称号『雲外蒼天』
(魔力+200)
★称号『神殺し』
(神眼)
※ () 内は装備補正
【】内は本人にしか視認出来ない
➖➖➖➖➖➖
「……ネオンちゃん……助けに来たよ……ハァ……ハァ……」
急激なレベルアップとスキルの多用……そして、ネオンちゃんを助けられたことによる安堵で膝から崩れ落ちるわたし……。
そこへ、身体を引きずりながら近付いてくる彼女は、わたしの顔を豊かな胸にうずめる。今にも死んでしまいそうなボロボロの身体を見て、必死で回復魔法をかけた。
「……範囲拡大、キュア!キュア!キュア!……」
覚えたてのキュアを出来る限り範囲を拡大し使った。何度も何度もその魔法を唱えた。一人でも多く助けたい……「ガウラ様!ガウラ様!もう充分です!」……その言葉ではっと我に返る。
「み、みんなは……?本当に大丈夫……?ネオンちゃんはどこも痛くない……?」そう聞くと「はい……ガウラ様のお陰で生きています」そう言って笑顔を見せてくれた。
良かった……ネオンちゃんが笑ってる。そんなネオンちゃんの顔を見て涙が出た。ポロポロと溢れる涙を撫でるように拭き取ってくれるネオンちゃん。
「ふふ、ガウラ様は相変わらず泣き虫ですね」
「ネオンちゃん……無事で良かった」
「ガウラ様……この助けられた命……一生を賭けてあなた様に尽くしたいと思います」
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フェルミ:「誰だ!アメリから離れろ!」
???:「ククク、お前が『ウタカタ』を封印する『シンシア一族』の『アメリ・シンシア』か。さしずめ、今は封印の旅といったところか?」
アメリ:「フェルミ、気をつけて!この人……帝国の科学者『ハイド・ローレン』よ!」
フェルミ:「ハイド・ローレン……?科学者……?アメリをどうするつもりだ!」
ハイド:「フェルミと言ったか……お前……この女が『ウタカタ』を封印したら、どうなるのか知っているのか?」
フェルミ:「――?どういう意味だ……俺たちは【グロッサム】を、世界を救うために旅をしているんだ!そのために救世主のアメリのチカラが必要なんだ!」
ハイド:「ククク、これだから無知というのは怖い」
アメリ:「やめて!……フェルミには言わないで……」
フェルミ:「――アメリ!?……俺に何か隠してることがあるのか?」
アメリ:「……」
ハイド:「知らないというのは罪だな……王国『ブバルディア』の綺麗事を信じて、この女や仲間たちがどんな思いで旅をしているのか……お前は知らない。お前だけが知らないんだ。世界の救世主だなんだと言っているが、結局は犠牲の上に成り立っているんだよ!つまり、お前はこの『アメリ・シンシア』を殺す旅をしているんだ!」
フェルミ:「――え!?……俺がアメリを殺す……?だって、俺たちは『ウタカタ』を倒すために……」
アメリ:「……」
ハイド:「ククク、『ウタカタ』を倒すだと?不可能だ。アレは不滅だ。だから封印が必要であり『人柱』が必要なんだ。それが、この世界の理だ」
アメリ:「……フェルミ、ごめんなさい……わたし……あなたには言えなくて……」
フェルミ:「そんな……俺はどうすれば……」
ハイド:「ククク、私に任せておけ!シンシア一族に伝わる『トリ居』のスキルを解明し、私が『ウタカタ』を滅ぼすのだ!フェルミ……アメリを死なせたくないだろ?旅を続けるということは、この女の「死」を意味する!貴様はそれでもまだ、この「死の旅」を続けるつもりか!?」
フェルミ:「……くっ」
アメリ:「フェルミ!帝国は『ウタカタ』を利用しようとしてるだけよ!惑わされてはダメ!」
ハイド:「ククク……世界を取るか……それとも愛する者を取るか……フェルミ、お前はどう選択する」
フェルミ:「……俺は……」
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「気付いたか……?」
ここは?どうしてこんなところに?白衣を着たハイドさんがわたしを見下ろす。手術台……?
「ハイドさん……ネオンちゃんは……?」
「ダリア・ウラジールのところへ報告に行っている。かなりの死者が出たからな」
「――かなりの死者!?調査隊の人たちは!?」
慌てて起き上がり白衣を掴むわたしの手を、そっとはずすハイドさん。
「お前が救ったのは、ネオンという女を含めて8名だ。あとは手遅れだった」
「――!7人も死んじゃったの!?わたしのキュアは効かなかったの!?わたしが気を失ったから間に合わなかったの!?」
「落ち着け、貧乳娘。お前が駆けつけた時にはすでに7名死んでいたんだ」
「そんな……わたしのせいで……」
「バカかお前!お前が駆けつけなかったら全員死んでいた。7名、間に合わなかったんじゃなく、8名救ったんだ!『虚スウ』を相手に……むしろ奇跡だ!」
「ハイドさん……うう……う……わたし……誰にも死んで欲しくなかった……」
「……全てを拾い上げようなんて傲慢だ。誰も、お前にそれを期待なんか……これっぽっちもしていない。クソガキが救世主を語るんじゃない」
「ハイドさん……」
「だからお前は、無い胸を張れ」
「ハイドさん…………無い胸ってひどくないですか?」
泣き顔でハイドさんを睨む。
「ふん、それより早くベヒーモスの素材をよこせ。そのために俺の研究室にお前を運んだんだ。あの女にしつこく非難されて大変だったんだぞ」
そう、ここは研究室だ。【幻想のオド】で入ったことはあったけど、ずいぶんイメージと違う……もっとガランとして暗い雰囲気だったけど、こ綺麗な研究室だ。あの女って……
「――ネオンちゃん?そっか……ハイドさんがロリコンじゃないか心配したんだね」
「――なっ!貴様のような貧乳娘に手を出すか!」
「えぇ〜、そんなこと言って、服も着替えさせてくれてるじゃないですか〜何か研究員っぽい服だけど……」
「ああ、モンスターの体液で臭ってたからな……この研究室に入る前に脱がした。今、洗浄中だ。汚されるのは嫌だからな……」
「――はぁぁぁ!?外で脱がしたんですか!?ひどっ!変態じゃないですか!この変態科学者!」
「――なに!?誰が変態だ!お前の幼児体型なんか誰も見てないわ!」
「あぁ!そんなこと言う!?もう、ベヒーモスの素材渡さない!」
「――ハァ!?貴様、約束が違うぞ!」
「えぇ〜だって、ハイドさんがヒドいこと言うし〜」
「ぐぬぬ……貧乳娘がぁ〜!」
「ふんっ!」
ふふ、ハイドさんって絡みやすいなぁ。わたしがふて顔でそっぽ向いていると、「ん!」と目の前に何か差し出された。
「――おほぉ〜!スカウターじゃないですか!?え?……まさかくれるんですか?」
ぶっきらぼうに目を合わせないが、差し出されたスカウターを受け取る。
「……目もそれで見えるはずだ」
――あ……気にしてくれてたんだ。でも実はもう見えてるんだよねぇ……『神眼』?だったかな。『虚スウ』を倒して手に入れたチカラのせいか、普段よりはっきり見えてるぐらい。でもせっかくだし貰っておこう。
「ありがとうございます」
「U-2も持って行け。あとそれは「高機能遠隔探査用モジュール」だ。スカウターという名ではない」
「ながっ!スカウターでいいでしょ!カッコいいし」
「ふん、勝手にしろ」
「あと……GANTZスーツも……出来れば……」
「これはダメだ!なんだそのGANTZスーツ?というのは……これはローレンチウム製の特殊金属だ。莫大な金がかかる」
「ププッ……ローレンチウムって……自分の名前つけてるんだ。ハイドさんって意外と可愛いんだね!」
「キ、サ、マ〜!」
「じゃあ魔石全部あげるからわたし専用のスーツを作って!出来ればピンク!いや、黒のほうがいいかなぁ……」
「――全部だと!?」
「うん!えっと……深層のミノタウロスの分を入れて977個あるよ!」
「――ミノタウロスの魔石だと!?」
「うん、それも30個くらいあるよ」
「……お前はとんでもないな。分かった、引き受けよう」
「やったぁ!」
フッフッフッ!これでわたしもイーサン・ハントみたいにカッコいいスパイになっちゃう!
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