第10話 新たなるステージ
揺れてる……?ううん、抱かれてるんだ……目を開くと真っ直ぐ前を見つめているハイドさんの顔……わたしを腕に抱いたまま歩いてるんだ……。
「……ハイドさん……」
「ん……目が覚めたか?」
「腕……戻ったんだね……良かった……」
「お前がやったのか?……」
「へへ……腕を落としたのも、戻したのもわたし……ごめんなさい」
「欠損した腕を戻すとは……そんなことをして、お前は何ともないのか?」
「……あ……右目が見えない」
「――な!?お前……なんてことを……!」
「へへ……まぁ……自分のせいだし!」
「……俺のことは気にするなと言っただろうが!……片目でも歩けるのか?」
「歩けないのでこのままお願いします」
スッとそのまま目を閉じる。
「ちぃ……モンスターと遭遇したらどうするんだ……」
そう言って優しく抱き直すハイドさんの腕の中はとても居心地が良かった……この人、本当にあのハイド・ローレン?
「――はっそうだ!ハイドさん走って!調査隊はどうなってるの!?」
「動ける生体反応が出ているのは3名だな。他は瀕死だ……しかし、辿り着いても俺たちでは『虚スウ』を倒すことは出来んぞ!俺は万全だが、お前は片目だ……万が一にも勝てる見込みは無い!」
「ハイドさんでも無理なの?」
「俺は科学者だぞ!戦闘員ではない!」
「えぇ!?そんなに強いのに〜!?」
「科学のチカラだ!ダンジョン探索用に死なないスーツを作っただけだ!基本的に戦闘用に作っているわけではない」
「……そっか」
2年後には『狂気の科学者ハイド・ローレン』になってるけど……今はただの天才科学者なのか。
それでもベヒーモスと戦える強さ……さすが、フェルミのライバル!
|
|
25層まで無事に辿り着いた……あれ以降、モンスターと遭遇しなかったのは、この凶々しい圧のせいなのかもしれない。
次元の裂け目のように亀裂が入っている場所がある。きっとここから深層に行けるんだ。
「ハイドさん……ありがとうございます!護衛はここまでで大丈夫です」
「――!何を言ってるんだ、貴様!ここで待つ約束のはずだ」
そう、ハイドさんは引き返そうとしていたのだ。それを無理矢理ここまで連れてきてもらったのだ。25層で調査隊の帰りを待つ……そう約束させられた。
でも、このまま待っててもネオンちゃんは帰って来ないと思う。わたしが中に入って運命を変えなければ、きっと全滅するんだと感じる。
いざとなったら……『イベント・エフェクト』がある!ハイドさんのときに片目が見えなくなってしまったけど……まだもう片目が残ってる!
「ハイドさん、信じてもらえないかもしれないけど……わたし『ウタカタ』を倒す方法を知ってるの!」
「――なに!?」
「だから、『虚スウ』っていう『ウタカタのカケラ』にも勝てる!」
「お前はいったい……」
「わたしの名前は
「――!」
慣れない片目で空間の裂け目へと走る!
「――ま、待て!」
「ヘッドホン!」
|
|
さっきまでのダンジョンとは明らかに違う雰囲気に感じるのは、深層と言われるだけあって、すごく暗いからだ。
{ウラン、片目の視力を失ってまで『ハイド・ローレン』を救うとは……怒りを通り越して呆れるぞ}
「ごめん……隊長」
{やってしまったことは仕方がないですね。僕たちはウランちゃんを死なせるわけにはいきません。ここからの打開策を考えましょう}
「ダルさん……ありがとう」
{ウラっち、『ウタカタのカケラ』……『虚スウ』は氷属性で動きを止める攻略法があるけど……ウラっちには水と雷しか無いわ……正直言って厳しい戦いよ}
「ミポリン……何か思いつかないかな……?」
{可能性があるとすれば一つだけよ……}
「――それは何!?」
{AUTOモードでレベル50まで無理矢理引き上げるのよ!ダルちゃんなら最速でレベルを上げれる!}
{だな……モンスター相手ならRTA最速の男がいいだろう。俺だと楽しんでしまう}
ミポリンの意見に隊長が賛同する。ダルさんのほうを見ると、コクリと頷いた……これしかない!
「雷光セイバー!AUTO モード!ダルさん、お願いします!」
{深層のモンスターなら、きっとあっという間にレベル50まで到達出来るよ!}
ガァ〜!と向かい来る深層のモンスターたちの急所を的確に貫くダルさん!
突く!?そうか、チカラの無いわたしの身体でも突けば振り回されないだね!とまぁ、頭で理解しても実行出来るかと言えば出来ない。それほど、ダルさんのプレイヤースキルは高い!
ドクンッ!ドクンッ!とレベルが上がっていくのを感じる……それもそのはず、だってダルさんが簡単に倒しているのはミノタウロスだ。
※ミノタウロス……人型牛頭のモンスター。獰猛で強力な一撃は、ウランの華奢な身体など粉砕するチカラを持つ。
AUTOモードに切り替えて5分足らず……集まったミノタウロスの数30体を瞬殺!
ドクンッ!ドクンッ!と脈打つような胸の高鳴りは治まった。
{ウランちゃん、たぶんレベルがカンストしたからAUTOモードを解除してみて!}
「うん!AUTOモード解除、ステータスオープン!」
★『ガウラ・ウラジール』のレベルが上限に達しました。
★
★スキル『オーバードーズ』獲得
『オーバードーズ』……対象の敵に状態異常を付与
状態異常(猛毒、混乱、暗闇、麻痺、睡眠)は解除しない限り徐々に死に至る。
➖➖➖➖➖➖
ガウラ・ウラジール【
Lv 50 【 Lv 1 】
HP 1729/1729 【20/20】
MP 2323/2323 【100/100】
SP 40/40 【10/10】
物理攻撃力 296 【5】
魔法攻撃力 1904(+210) 【250】
物理防御力 309(+50) 【55】
魔法防御力 810(+100) 【105】
チカラ 296 【5】
魔力 1341 【50】
体力 349 【20】
精神 529(+200) 【30】
運 193 【100】
・魔法 ヒール小(消費MP 増加)
ヒール中(消費MP増加)
・魔法 アクア
アクテラ
・スキル 雷光Lv1 雷光 Lv2 雷光Lv3
『ゼロ距離雷光』『放電』『渦雷』
・スキル『当千威圧』
・スキル『くいしばり』
・スキル『イベント.・エフェクト』
⚪︎【スキル 『オーバードーズ』】解放済み
・固有スキル 『固有インベントリ』 LV3
・固有スキル 『雷光セイバー』
⚫︎【固有スキル 『
⚪︎【ユニークスキル 『ヘッドホン』】解放済み
★称号『一騎当千』
★称号『ゴブリンスレイヤー』
★称号『
(精神+200付与)
★称号『雲外蒼天』
(魔力+200)
※ () 内は装備補正
【】内は本人にしか視認出来ない
➖➖➖➖➖➖
「――え?これってどういうこと?」
{これは……まさかここからウラン自身のステータスが加算されていくのか?}
{とんでもないことになりましたね……『ダブルステータス』なんて聞いたことがありません}
{ウラっちのレベル上限次第ではとんでもないことになるわよ……}
「すごい……これなら!」
ネオンちゃんのもとへ!足を踏み出した瞬間、わたしたちを照らす光が前方からやって来る。
{{{――!}}}
「――あ!U-2だ!」
U-2はわたしを誘導するように深層の奥へと進んでいく。それを追うように深層を進むと……血の匂い!
立っているのは血だらけのネオンちゃん!肩で息を吸い、ボロボロになった彼女の背中を見てカッとなったわたしは、雷光セイバーを片手に飛び込んでいた!
{待てウラン!AUTO モードを使え!}
隊長が何かを言っていたが、まったく耳に入ってこなかった。ただがむしゃらに異形に向かっていた。
「ネオンちゃん!どいて〜!」
「――な!?ガウラ様!?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます