第09話 イベント・エフェクト
ハイドさんに『ウラン』と名乗ったのには理由がある。わたしの無い頭で考えたのだが、『ガウラ・ウラジール』と『ハイド・ローレン』はこの時点で接触していないはずだ……2年後にフェルミと行動を共にする予定のわたしは、スパイとして帝国に情報を流すことになる……その流す相手は『ハイド・ローレン』じゃない。
帝国の『三機将』の一人『無限のバークリウム』だ。その男が裏切り者のわたしを殺す……だけど、ウラジール家はきっと没落しない。
なぜなら、ダンジョン資源事業は今後わたしが潰すからだ。
ハイドさんには『ウラン』として、帝国軍事関係者とのパイプになってもらおう。口と態度は悪いけど、意外と優しいかもしれないし。
「11層にもモンスターはいないな、ベヒーモスの影響か?」
「――え?どうして分かるんですか?」
「――っておい!俺のコートを掴むな!貧乳娘」
「えぇ……だってボディガードでしょ〜守ってもらわないと、わたしが死んだら素材は四次元空間に放置されますよ。知らんけど」
「ちぃ、いい加減なヤツだ!そもそも穴に落ちた調査隊というのは生きているのか?」
「……分かりません……ただ助けたい人がいるんです!」
「ふん、男か。お前のような貧乳娘でも好いてくれる男がいるんだな」
「助けたいのは女の子ですよ。いちおう、その他の調査隊も死なせたくはないですけど……」
「女が調査隊に?」
「うん、凄く強いけど……心配だから」
「――ん?」
「――痛っ!ちょっといきなり止まらないでくださいよ!ぶつかったじゃないですか!ハイドさんのパワードスーツってかったぁい……イテテ」
急に立ち止まるハイドさんの背中に顔をぶつけた。ほへっ?と顔を覗き込むとサイヤ人のスカウターみたいなのを付けている!おぉ〜カッコいい!
「あの『ゴブリンの穴』は罠だったな。あの穴に偵察機を送ったが、深層で5人が死んでいる」
「――死んでる!?まさか!?」
「安心しろ、男だ。しかし深層まで送られたか……」
ネオンちゃんじゃない。でも調査隊の人が5人も……安心しろって、人が死んでるのにやっぱりひどい人なのかな『ハイド・ローレン』って……。
「俺もそこまでは潜ったことがないからな……いくら『ウタカタの夢』だといっても深層は危険だ……どうする、引き返すか?」
「ううん、行く!」
※『ウタカタの夢』……『ウタカタ』が復活していない期間のこと。モンスターは弱体化している。
「まぁ、俺もいずれは潜る予定ではあったが……まさかこんなクソガキ貧乳娘と行くことになるとはな」
「へへへ……お願いします。あと、そのスカウターください!」
ダンジョンとはモンスターの家みたいな物らしい。『ウタカタ』が復活すると引きこもっていたモンスターたちが人々を襲う。
封印されるとまた引きこもる……つまり、弱体化状態のモンスターはニートと一緒なのだ。
『ウタカタ』の封印によってまた新しい家を作るモンスターたちだけど、前の家は使われなかったりするそう……その古参のモンスターたちが作ったとされるダンジョンが『ダンジョン深層』だと言われている。
つまり、ダンジョン深層とは『ウタカタ』による1000年という長い戦いで作られた古い家なんだそうだ。
ハイドさんが説明してくれたけど、わたしの解釈はその程度で、もう頭の中に残っていない。それよりもスカウターをくれなくて落ち込んでいる。
ハイドさんのスカウターは正式には『
わたしは今や大金持ちだからハイドさんはヒモ男だね。
「おい!聞いているのか、貧乳娘」
「えっと……難しい話はよく分からないので、わたしはハイドさんについて行くのみです……へへ」
「この……クソバカ貧乳娘がぁ〜……もう一度言うぞ!深層は特殊な場所だ。今、飛ばしている「U-2」が調査隊とやらを後ろから追っている。発見次第、ヤツらを「U-2」で誘導するから俺たちは25層まで行って待機だ。俺の予測では25層の『オド領域』でしか深層へは行けない。分かったか!」
「……へぇ〜ほぉ〜ふ〜ん」
「……ダメだ、コイツ」
※オド領域……【グロッサム】の世界では各地に点在する「魔力溜まり」が存在し、これを指す。地球で言うところのパワースポットのようなもの。
13層からはさすがにモンスターが現れた。
人間サイズになっているバッタ!?みたいなキモいヤツ。ゲームの中では平気で倒していたけど体液が気持ち悪いのでハイドさんにお任せする。
「貧乳娘!お前も戦え、数が多い!」
「――えぇ!?だって気持ち悪いし!」
「ちぃ!クソが〜!
なんだかんだと守ってくれるハイドさん……【幻想のオド】では幾度となく邪魔をしてくれたけど、味方になると心強い。いやぁ〜有難い。
18層……なんとかウルフとかいうモンスターが複数現れた。ダラダラとヨダレを垂らし、素早い攻撃で襲ってくる!
避けられない!?……と思ったらわたしの身体に液体金属が纏わりついて防御してくれる!
「――これは!?パ、パワードスーツ!」
「半分貸してやるからお前も戦え!」
ハイドさんは、金属ブレードを振り回して、モンスターを倒していく。
「やったぁ〜!カッコいい!GANTZスーツだ!」
ハイドさんから受け取ったGANTZスーツは半分……だけど、わたしの身体には充分だった。全身を覆う黒いスーツはモンスターの攻撃を受けつけない!
「やる気出ました!ハイドさん離れてください!」
「――なぜだ!?」
「わたし……雷光セイバー使うと制御が効かないんで!」
「――制御が効かないだと!?」
「雷光セイバー!当千威圧!」
一振りした瞬間……身体が宙を舞うようにモンスターを蹴散らしていく!
まるで、演舞でも舞っているかのように……地に足を付けることなく……モンスターを踏み台にしながら斬る!
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る!
『当千威圧』によるデバフ効果は複数の場合、ステータスの下げ幅は低い!それでも格上のモンスターを倒せるのは『ウタカタ』不在の弱体化状態だから、というもあるのかもしれない!
15体同時撃破!すべてのモンスターを倒したが……
そのまま、ハイドさんへ襲いかかるわたし!
ダメだ!制御が効かない!
「――ちぃ!」
「わわわわっ!止まんない!止まんない!」
バチッ!バチッ!と金属ブレードと雷光セイバーの
稲光が二人の周りを弾け飛び
ハイドさんの繰り出される左フックも宙を舞うように躱すわたし!
……ハイドさん、金属ブレードでは攻撃してこないんだ……。
「――お、おい、バカ娘!スキルを解除すればいいんじゃないか!?」
わたしの剣舞を受けながら怒鳴るハイドさん!
「――あ……そっか!」
その瞬間、雷光はハイドさんへと真っ直ぐに放たれた!
「――くっ!この距離では……」
「ハイドさん!危ない!」
ドンッ!バリバリッ!と雷光がハイドさんに直撃した!すぐに駆け寄ると……片腕が……!
「……このクソバカ貧乳娘……やっと止まったか」
そんな……腕が……わたしのせいで……
「ハイドさんの右腕が地面に落ちている……!あ……ああ……ごめんなさい……わたし……とんでもないことを……」
「腕はいい……それより「U-2」が調査隊を見つけたぞ……交戦中だ……相手は『
ハイドさんが倒れ込むところをなんとか受け止めて寝かせる……意識が無い……そんな……そんな……イヤだ……ヒール!ヒール!ヒール!ヒール!……ハイドさんの腕が戻らない!……ベヒーモスを乗り切ったのに、わたしのせいで肩腕に……。
「ヘッドホン!」
{やれやれ、やっと呼んでくれたか……}
{これはあれだね……運命が【幻想のオド】の物語へと調整を始めてるんだよ}
{そうね……原作ではここでハイド・ローレンは死にかける。そして悲劇が起きるんだったわね……まさか今だとは思わなかったけど……}
「――みんな!なんとか出来ない!?いくらヒールをかけても欠損した腕が戻らないの!」
{死にはしない……腕は諦めろ……これは運命だ}
「そんな……隊長……なんとかしたいの!わたし、運命なんて信じない!だって、もし運命に逆らえないんだったら……わたしは死ぬんだもん!」
{{{……}}}
ドクンッと胸が高鳴る!
★『ハイド・ローレン』を倒した……称号『
スキル『イベント・エフェクト』……稀に事象を書き換えることがある。しかし、事象を書き換えた場合、使用者に何らかの負債を与えることがある。
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ガウラ・ウラジール【
Lv 42
HP 1539/1539
MP 1729/1729
SP 35/35【10/10】
物理攻撃力 223
魔法攻撃力 1541(+210)
物理防御力 210(+50)
魔法防御力 700(+100)
チカラ 223
魔力 1095
体力 296
精神 390(+200)
運 145
・魔法 ヒール小(消費MP 増加)
ヒール中(消費MP増加)
・魔法 アクア
アクテラ
・スキル 雷光Lv1 雷光 Lv2 雷光Lv3
『ゼロ距離雷光』『放電』『渦雷』
・スキル『当千威圧』
・スキル『くいしばり』
・スキル『イベント.・エフェクト』
⚫︎【スキル 『オーバードーズ』】未解放
・固有スキル 『固有インベントリ』 LV3
・固有スキル 『雷光セイバー』
⚫︎【固有スキル 『
⚪︎【ユニークスキル 『ヘッドホン』】解放済み
★称号『一騎当千』
★称号『ゴブリンスレイヤー』
★称号『
(精神+200付与)
★称号『雲外蒼天』
(魔力+200)
※ () 内は装備補正
【】内は本人にしか視認出来ない
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「イ、イベント・エフェクト……って……」
{何ですかそれ……聞いたことありません……ウランちゃん!絶対に使用しないで下さい!詳細が不透明です!}
ダルさん……わたし……。
{ウラっち!ダルちゃんの言うことを聞くのよ!危険なスキルは使っちゃダメ!これはゲームじゃないの!}
ミポリン……。
{ウラン……やるのか?}
「隊長……みんな、ごめんね……『イベント・エフェクト』!」
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