第02話 ユニークスキル『ヘッドホン』
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「それでは今日勝てることを祈って!配信はじめますよぉ〜!……っと、ちょっと待ってティッシュどこだ?用意しとかないと……ん〜……ちょっと取ってくるから待ってて……」
:泣く準備w
:ウランちゃん気合い入ってんなぁ
:頑張れ〜
:始まったか?
:今日は泣く日
:今日こそ!
:まだ古参の御三方が来られてないぞ!大丈夫か?
:様子見で戦っちゃう?
:ボコされる未来しか見えん
カリキタ隊長
:待たせたな...
:キタ〜!
:カリキタ隊長キタ!
:最強リスナー登場!
:おせ〜ぞ!ウランちゃんを待たせるな!
:ダルビッシュ
:御三方いねぇとウランは負けるぞ
カリキタ隊長
:みんなで勝たせるぞ!
:おぉ〜!
:オ〜!
:みんなでウランちゃんを支えるぞ〜
「ふぃ〜お待たせ、お待たせ!ティッシュ取りに行くついでにトイレ行って来た!みなさん、こんにちは〜!」
:こんにちは〜
:こんちわ〜
:トイレw
:トイレ言うなww
:こんにちは〜
:相変わらず過疎ってて草
:デリカシーw
:顔出しすればワンチャン
:いいね
:勝ったら顔出し!
:それ
「えぇ?顔出しかぁ〜……登録者が10万人になったらって考えてたんだよねぇ〜」
:あと9万人で草
:現在9850人……
:10万って……
:夢のまた夢...
「みんなひどいなぁ……今日こそ『ウタカタ』を倒して【幻想のオド】をクリアするからね!」
:よしいけ!
:ついに
カリキタ隊長
:ウラン、今日こそ決めろ!
ダルビッシュ無
:ウランちゃん、僕たちがいるからね
ミポリン総督
:ウラっち〜アタシも来たよ〜
「みんな……では、ウランいきま〜す!」
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海がうねり、大地が悲鳴をあげる……数百メートルはあろうかという究極生物『ウタカタ』がその姿を現した!
フェルミ:「あれが『ウタカタ』!?で、でかい!」
アメリ:「フェルミ……これが最後なんだね……」
《最後かぁ〜さみしぃなぁ……フェルミとアメリに会えるのも……これが……うう……》
:もう泣いてる
:勝てればな……
:ここからがつらい
フェルミ:「タンタル……リン……クロム……この戦いが終わったら……アメリを頼んだよ!」
「「「――何言って!?」フェルミ?」君は何を?」
アメリ:「フェルミ、何を言ってるの?……『ウタカタ』は、わたしが封印するんだよ!」
《アメリは
フェルミ:「大丈夫!……大丈夫だよ……アメリは死ななせない!……俺が守るから!」
:いったれ〜
:ウランちゃ〜ん
:ウタカタはヤバいぐらい強い
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《あぁ……もうヤバい……『ウタカタ』の
ミポリン総督:突っ込むのよぉ〜!ここで懐に潜り込んじゃってぇ〜!
ダルビッシュ無:ウランちゃん、慟哭中はスキルは使っちゃダメだよ〜!カウンターがくるから!
カリキタ隊長:ウラン、やや左からモーションに入れ!薙ぎ払いがくるぞ!
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2時間という壮絶な戦いの末……。
「……み、みんなぁぁ〜……倒したよぉぉぉ……」
:ここから
:ヤツがくるぞ
:ああ……終わる
:本当の最後……
:切ない……
満身創痍のフェルミパーティの前に現れたのは、黒い闘気を纏った男。ギギッと機械で出来た義手がブレードへと変形し、彼らの前にたちはだかる!
[えぇ〜!ここでコイツ出てくんの〜!?]
『狂気の科学者 ハイド・ローレン』
VS
『運命の子 フェルミ・エーデル』
:BGMやべぇ〜
:泣ける……
:カッコ良すぎ、ハイド先生!
フェルミ:「――ハイド・ローレン!」
ハイド:「ククク……さあ、始めようか!」
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「ぶばぁっ〜!………え?………夢オチ?」
「夢オチとは何ですか?」
「ひぃ〜!ネオンちゃん!……夢じゃない……か」
「ガウラ様、人の顔を見て怯えるなんて、本当に失礼な方ですね。お着替えしますか?」
「……うん」
いやいや、気配が無さすぎて怖いんだけど……そもそもネオンちゃんは何者なのか……どうして、お世話係なんてしているのか……みんなに聞いても分かんなかったし……。
そう……みんなとは、わたしの能力……フッフッフ。
昨日、就寝前のこと……。
+++++
わたしはガウラ・ウラジール……2年後、帝国のスパイとして王国ブバルディアに潜入することになる。
どうして、貴族の三女がそんな任務を負うのかは分からないけど、それは決まっているんだと思う。
スパイとして情報を流すうちに、主人公フェルミの優しさに触れたウラウラは次第に彼を慕うようになる。
彼とは敵同士のうえ、アメリという最高のヒロインがいるので完全に負けヒロイン状態だった……。
ウラウラはヒロインとは言えるほどでもないかもしれないけど、彼の命を救う重要な役どころ……関わらない……なんてことは、おそらく難しいだろう。
物語上、フェルミはわたしが絶対に救わないといけないんだと思う。
じゃないと、この【グロッサム】を救えてもアメリを救えないから……もし、わたしがルートを変えたら?別の誰かが犠牲になるの?
どうしよう……。
わたしは……二人に幸せになって欲しかった。自分の分身でもあるフェルミとアメリ……二人のやり取りが尊くて、それだけで幸せな気持ちになった。
キスイベントなんて、発狂配信しちゃうくらいの大興奮で盛り上がったなぁ……。
……うん、決めた!メリーバッドエンドなんて嫌だ!
フェルミ視点で見たこの世界で死んでしまうのは中盤で『ウラウラ』、最後に『フェルミ』と『ハイド・ローレン』……。
わたしは……フェルミとアメリを救って二人を幸せにする!
ハッピーエンドにするんだ!
……でも、まずは自分が生き残れるようにしないと……うう……どうしよう。
はっ!そういえばステータスに見たことないスキルがあったはず!
たしか……未解放のスキルはまだ使えないから……えっと……ユニークスキルの『ヘッドホン』!
ブンッと首回りに何かが現れた。違和感と重みを感じ、鏡を確認すると……黒いヘッドホンが首に掛かっている。
ステータス画面の
つまり、【】内は
――え?それって強くない?
二人分のスキルが使えるってことでしょ!もし……わたしのスキルが強かったら……ワンチャン生き延びれるんじゃない!?
っていうか未解放のスキルに『オーバードーズ』ってあるけど……わたしの死因じゃん……怖っ!
あとは固有スキルの『
とりあえず『ヘッドホン』を試してみようかなぁ……首にかかっているヘッドホンは耳付きの可愛いやつで、わたし好みだ!
「そう〜ちゃ〜く!……う〜ん……特に変化は……」
{待たせたな、ウラン!}
{やあ、何か困ったことはあるかい?ウランちゃん}
{あらぁ〜?ウラっち、じゃな〜い}
「――え!?ウランって!」
ヘッドホンから聴こえるのは三人の声、聞き覚えは無い。だけど、わたしの名前を知っている!慌てて辺りを見渡す。
{ウラン……こっちだ}
{こっちこっち!}
{お〜い、ウラっち〜!}
足元を見ると小さな三匹のネズミがぴょんぴょんと跳ねている!
「――ひぃ!ネ、ネズミが喋ってるぅ〜!」
{ネズミって失礼ねぇ。わたしたちは可愛いチンチラよ!}※チンチラ……可愛い小動物
「か、可愛いって……あ……ホントだ!可愛い〜!」
{ちぃ……この俺が可愛いとは!}
グレイカラーのチンチラは、ガラの悪い雰囲気でサングラスをかけている。
{まあまあ、カリキタ隊長。ウランちゃんも喜んでくれてることですし}
「――え?カリキタ隊長って!?あのカリキタ隊長!?……じゃないよね?わたしのリスナーさんの……」
{俺は、カリキタ隊長だが文句あるか?}
「――えぇ!?」
カリキタ隊長と名乗るグレイカラーのチンチラは、小さな手足を組んでベットサイドにポフッと座る。可愛い……。
{僕はダルビッシュ
「――なっ!?ダルビッシュ
ブルーカラーのチンチラは礼儀正しく、ペコリと頭を下げる。う……可愛い。
{ウラっち〜アタシよ、ア・タ・シ♡ミポリン総督よ!}
ホワイトカラーのチンチラはオジサン声で投げキッスをする。ミポリン総督〜!女の人と思ってたけどオジサンだったの!?でも可愛い!
「――ってみんなチンチラになってるじゃん!なんでぇ〜?」
わたしの質問をよそに、三人はモフモフとそれぞれがそれぞれのしたいことをしている……。
ベッドの上で「シュッシュッ!」とシャドウボクシングをしているグレイカラーのチンチラが、カリキタ隊長。
丸テーブルで紅茶を優雅に飲んでいるブルーカラーのチンチラが、ダルビッシュ無さん……
ドレッサーの前でお化粧している白いチンチラが、ミポリン総督……ってみんな色違いなの笑える!
あれ?この子たちってよく見たら、わたしの……ウランのアイコンキャラじゃん!わたしのアイコンはピンクだけど。
知り合いの絵師さんに描いてもらった『うらんチャンネル』のアイコンと同じだ!あれってチンチラだったんだ……知らなかった。
「ねぇ、みんなも転生しちゃったの?」
{転生?俺たちはウランのスキルだ}
{フッ、違うよ。ウランちゃん}
{ウラっちは相変わらず可愛いこと言うのねぇ}
「――え!?まさか……記憶がないとか?でも、ミポリン総督は「相変わらず」って言ってるし……ぶつぶつ」
無い頭で考えるが、まったく分からない。
{我々はウランの記憶が創り出した存在}
{そうさぁ〜!【幻想のオド】のことならなんでも聞いてよ!}
{ウラっちの攻略を助けるわよぉ〜!あなたが経験してきた300時間……見て聞いてやってきたことはアタシたちに根付いてるんだからぁ〜}
「――記憶!?わたしの……じゃあ、みんなはこの世界にいるわけじゃないんだ……」
ガクリと落ち込んだわたしの肩にモフッと優しい温もりが……振り返ると、グレイカラーのチンチラのカリキタ隊長が片方だけ口角を上げる。
{ウラン、俺たちはずっと【幻想のオド】でお前を支えてきた。だが、実際に会ったことはないじゃないか。つまり、これまでの思い出と記憶が俺「カリキタ隊長」だ。分かるか?}
「――へ?はて……?」
{フッ、ウランちゃん、難しく考えなくていいんだよぉ〜隊長が言ってるのは、僕たちは心の中にいるってことだからね}
「……心の中……」
{そう、ウラっちが接してきたのがアタシたちなら、このアタシたちもアタシたち!でしょ〜?}
「う〜ん……わたしバカだから完璧に理解出来ないけど……みんなは、みんなってことでいいの?」
{そうだ!}
{ですね!}
{そうだよぉ〜!}
「――みんなが協力してくれるなら……わたし、出来るかも!」
{ウラン……お前のやりたいことは大体想像つくが、険しい道だぞ……}
カリキタ隊長はサングラスを外すと呆れたように溜息を吐いた。
「うん!わたしは【幻想のオド】の運命を変える!」
{まぁ、【幻オド】のことなら僕たちに聞けば間違いないよ}
ダルビッシュ無さんは頼れる知識人だ!カリキタ隊長は戦闘のプロ……ミポリン総督はあらゆる対策案を出してくれるオネェ?でいいのかな。
これって……プレイヤースキルの無いわたしにピッタリのスキルじゃん!
「じゃあさぁ、みんな!とりあえず聞きたいことがあるんだけど……ネオンちゃんって何者!?」
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沈黙……みんなはそっぽを向いてる。
「……あれ?……なんでも聞いてって言ってたけど、もしかして知らないの?」
{モブだな……}
{だね……}
{2年後には登場してないし、気にしなくていいんじゃなぁい}
みんなはヒューヒューと鳴らない口笛を吹きながら適当なことを言う。
本当に大丈夫かなぁ……。
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