気になる春夏冬くん

 無事転生した私の今世の名は秋宮 ひより(あきみや ひより)だった。この世界は、私が前世で社会人しながらオタク活動に励んでいた世界に似ている。つまり平和な世界だ。しかも、私は本当にお金持ちで力持ちだった。勉強は頑張っているので平均以上は取れているし、人生良い感じに進んでいる。


 私が住んでいるところは都会ではなく、田舎の方なので、わたしの家以外にも大きな家はたくさんあるし、そこまで目立っていない。車で登校しろという過保護な親でもないので、徒歩通学しているし、一般の学生と変わりなく過ごせている。あ、そうそう、私は高校1年生になりました。幼少期に関しては何も問題なく平和に暮らしていたよ。では、なぜ、高校の話からなのかというと、高校に入ると遠いところに住んでる子たちも同じ学校に通うことがあり、知らない子たちが多い。そして、高校の時の友達は大人になって会うこともあるため、ここからは慎重に生きるべきだと私は思うからだ。私が本気を出すのはここからなので、ぜひみんなに見てほしい。


 前世では高等部卒業パーティで国外追放とか、高等部に入ったら婚約破棄という騒動とか、周りのことを考えない権力者たちの迷惑行為がたくさんあった。高等部に入ると女性陣の陥れパーティが始まるから、今世ではないと思うけど、人に騙される可能性も視野に入れておかないと。恋愛はなるべく避けて通ろう!


 …そう思っていたのに、気になる人が出来てしまった。同じクラスの春夏冬 香月(あきなし かづき)くん。彼は見た目が儚い感じの美少年だ。ミステリアスで少し近寄りがたいと女子が言っているけど、春夏冬くんが友達と話しているのを見ると私には普通の少年に見える。まぁ、他人と距離は置いてるけど、他人が嫌いって感じじゃなさそうだし。たまに遅刻したり、怪我をしてたり、不良説は流れているけど…何もないところで転んでいるのを見てしまったので、私の中では彼はドジっ子枠だ。外をぼんやりと眺めている姿は可愛いし、友達と動物のほんわか動画を見ているときの優しい笑顔は愛しい。


「ひよちゃん、まだ帰らないの?」

「帰る!一緒に帰ろう。」

 私のことをひよちゃんと呼ぶ友人と共に話しながら、今日も平和に帰る予定だった。友人と別れた先で、春夏冬くんが何かから逃げるように走っている姿を見るまでは。


 何かトラブルに巻き込まれたのか、いや、待ってあの容姿なら、ストーカーに追われている可能性もある。怖いけど、でも、前世が魔王だった時にレベルMAXの勇者と対峙した時よりはましだわ。なんで魔王のレベル上げが間に合わなかったのか。勇者の成長速度には脱帽した。無理ゲーってあの時に使う言葉だったな。


 …とにかく今は春夏冬くんを助けたい。今世での推しは幸せにするんだ。彼を追いかけると、どんどん山の奥へと進んでいく。逃げるにしてももう少し人が多い方へいったほうがいいのでは…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

春夏冬くんのみえてる世界 九十九まつり @tsukumo_matsuri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ