第9話

真来は翌日から日本全国の様々な名産品を必ず一品入れる事にした。矢野が故郷がない。と言ったのを思い出したのだ。

「これは?」

映画撮影の休憩時に真来が出したお菓子を見て矢野が訊いた。

「仙台銘菓の萩の月です。仙台ではお土産に大人気です」

「そう」

それだけしか言わなかったが矢野は満足そうである。

真来はホッと胸を撫で下ろした。

矢野のスケジュールはとにかく過密である。少しでも心安らぐ時間を持って欲しかった。

そこに真来のケータイが鳴った。

真来は矢野から離れた所でケータイに出る。

「はい、森信です。これはいつもお世話になっております。申し訳ありません。今月矢野はスケジュールが一杯でして来月の25日の11時でしたら何とかなるんですが……あ、宜しいです

か。では8月25日の11時という事で宜しくお願いします。失礼します」

真来はブレザーの内ポケットからタブレットを取り出すと、早速予定を入力し始めた。

矢野はそれを横目で見て満足気に頷いた。

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