第8話

その頃真来は、矢野ファイルをチェックしていた。

時間にとても厳しい。

演技には決して妥協しない。

大事なのは娘の寧々さん。

「他にないのかよー。これじゃ情報が少な

すぎ!」

真来は自分の机にうつ伏せてしまった。

既に午後11時を回っている。

真来の机のすぐ横に大きな段ボール箱が置いてある。全て矢野一色へのファンレターだ。

好きな食べ物、嫌いな食べ物、趣味、好みの女性のタイプ、座右の銘……

全く情報がない。

NGの芸能人もいない。

「どうすればいいんだよ。これー!」

真来は思わず誰もいない事務室で喚いた。

「とりあえず交友関係だけチェックしとくか」

真来は気を取り直してファイルをチェックし直したのである。

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