黒田




「ちょっと待って!」

 終業のチャイムが鳴り、俺はすぐに帰ろうとしている白川を呼び止めた。

「ん?」

 足を止める白川。

「なんか用事あんの? あ、いや、いつもすぐ帰ってるから」

 俺、不自然じゃないよな?

「用事? なんにもないよ?」

 すげえ不思議そうな顔してんな白川。

 うっ。そんなかわいい顔で俺を見つめるなよ。

 がんばれ俺。

「その、一緒に帰らねえ? あ、白川が嫌じゃなければ」

 先日あの赤星の野郎に言われたところだ。

 とにかく仲良くなれ、って。

「えっ、いいの?」

 いいに決まってる。いいしかない。

 俺は白川の前に立った。

「おう、行こうぜ」

「うん!」

 赤星の野郎、こっちを見てにやにやしやがって。

 でも赤星には感謝だな。

 好きになるのに男も女も関係ないって言ってくれたし、こうやって相談にものってくれるし応援もしてくれてる。

 ちょっとおもしろがってるような気もしないではないが、初めて恋をしている俺にとっては本当にありがたいぞ、赤星。

 それより、こうやって並んで歩くのも初めてじゃないか?

 かわいいな白川。

「あのさ、なんでいつも早く帰ってんの?」

 そう聞くと俺を見上げる白川。

 目、おっきいな。

「ああ、僕、犬飼ってて。両親とも仕事でいないから早く帰ってあげたいんだ。それに放課後遊ぶような友だちもいないし」

 そっか、犬のためだったのか。

 優しいな、白川。

「そっか。あ、ちょっとそこの公園寄らねえ?」

 もっと白川と一緒にいたい。

 もっとお前のこと知りたいよ。

「うん、いいよ」

 よし決めた。

 俺は今日、白川に告白する!





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る