第五話 ギルドでの出会い

 

 「起きろーーー!!!朝だぞカンカンカン!」


 「あーうるさいな!脳内で大声出すな!そのカンカン音やめろ!」


 朝から脳内に響き渡るヴァルドの奇声で目を起こされる。これから毎日このように起こされるかもしれないと考えると憂鬱に思いながら、ベッドから体を起こす。


 「ところで昨日聞くのを忘れていたんだが、俺たちってなんの目的でこの街に来たんだ?単純に近いからって理由ならそれでもいいんだが...」


 「そういえば何も話していなかったか。近いというのも理由の一つだが、冒険者協会のギルドがあるっていうのが一番の理由だな。」


 この男と話しているとアレンの知らない単語が次から次へと出てくる。本当に自分は外の世界を知らないのだなとたびたび痛感する。


 「その様子だと冒険者協会のことも知らないようだな...。まあいい、とりあえず今からそこに向かうぞ。歩きながら説明しよう」


 宿屋から外に出ると昨夜とは異なり町は人々の賑わいであふれていた。村の人間以外見たことのなかったアレンにとっては何とも新鮮な感覚だった。そんな街の装いを横目にアレンはヴァルドに指示されるがままギルドに向かって歩き出す。


 「さて、さっきの話の続きだが、お前には今からギルドに向かいそこで冒険者登録をしてもらう。これから長い旅をすることになるわけだが、そこでまず必要になってくるのがゴールドだ。金がなけりゃ飯を食うことも宿に泊まることもできない。」


 「でも、昨日みたいにヴァルドが必要な時に作ってくれればいいんじゃ?」


 「そうしてやってもいいが、ただでさえ少ない俺の魔力をそんなことに使いたくはないんだ。何かあった時に困るからな。だから自分のことはお前自身にやってもらう。」


 神のヴァルドといえどなんでもかんでも無限にできるわけではないらしい。昨日のゴールド生成も魔力とやらを使って行っていたのか。


 「それで本題だが、今向かっている場所で冒険者登録をすると冒険者協会が発注するクエストを受けることができる。冒険者協会が出すものもあれば、民間人や貴族が出しているものもあって、その報酬はゴールドの他にも様々だ。俺を生き返らせる手段を探すためにも、これを利用しない手はない。」


 「なるほど」


 そんなこんなで冒険者協会のギルドと思われる建物に着いた。見たことのない大きさの建物と扉にアレンは圧倒されたが、臆せずにそのドアを開ける。中に入ると外見の通りとても大きな空間が広がっており、いたるところで屈強な冒険者たちがあたりで談笑を交わしている。

 辺りを見渡しながら進んでいると何か大きな壁のようなものにぶつかりアレンは大きくしりもちをついた。「いたた...」と、つぶやきながら前を見ると父よりも屈強な肉体を持った強面の男がこちらを見下ろしていた。


 「いきなりぶつかってきて何の用だこのガキ...」


 その言葉にアレンの背筋が凍る。


 「す、すいません。前を見ていなくて...」


 「言い訳はいらねえよ。この町一番の戦士バーサク様に喧嘩をウルトハいい度胸してるな?」


 『めんどくさいのに絡まれてんなー』


 心の中で他人事のように笑っているヴァルドに突っ込む余裕もない。本当にどうしようかと焦っていると、バーサクとアレンの前に一人の金髪の青年が割り込んでくる。


 「おっとっと、うちの連れがごめんごめん。ここのギルドに来るの初めてでさ。この俺に免じて許してあげてくれねえか?」


 ひょうひょうとした口調で大男に話しかけ、周りの冒険者たちも大丈夫かと様子をうかがう。


 「何言ってんだお前...舐めた口きいてるとてめえから潰すぞ!!!」


 そう言い放ちバーサクは青年に対してその大きな拳を突き出すが、青年のガードした両手にその拳が触れた瞬間なぜかバーサクのほうがダメージを受けたかのように吹き飛ばされる。困惑した表情を浮かべるバーサクを見下ろしながら青年は二カっと笑う。


 「あれ?知られてなかった?それは失礼。


  僕は『カイ』


  どこにでもいるただの冒険者さ」

 


 

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