第28話 石を投げる才能?
「次は、っと」
俺は荷車から新しい石を選び掴んで次の獲物を探す。
あまり遠くにいるバヴヴを狙っても当たるかはわからないので、なるべく近くにいたモノに目をつけてもう一度投擲した。
「よぉっし!!二匹目、かと思ったけど落ちなかったか」
石はバヴヴに直撃した。しかし当たったのは固い外骨格の部分だったので多少魔物は宙で横にズレる程度の衝撃しか与えられなかった。飛行には影響なさそうだ。
一投目は翅を射抜く形でバヴヴに命中させられたので一撃で地面に落とすことができたようだ。
「この石をじゃ翅以外に当たっても一回じゃ倒せないみたいだな」
「牽制にはなるのです」
「そうそう、誰も一回投げただけで一匹倒せるなんて思ってないよ。それで倒せるなら石を千個用意してみんなで投げるだけでいいじゃん」
「そうだな。でも俺は二回とも当ててるぞ」
「マオはこういうのが得意なのですか?」
キャミコは言いながら振りかぶり石を投げる。その石はバヴヴの間を抜けて地面に落ちた。
「ダメなのです」
「そんな簡単に当たらないよっ!」
ファミも続けて投げる。
だがそれは魔物の前で高度が下がりバヴヴまでは届かなかった。
「難しいね。マオさんがやっぱおかしいのか、運が良いのかどっちかだね」
「投擲の才能があるかもです。もう一回投げてみるです」
「微妙な才能だな」
「でも今は役に立つのですよ」
キャミコは荷車から石を掴み取り「ほらなのです」と言いながら俺に石を渡してきた。
「まぁそうか」
俺はキャミコから石を受け取り
もう一度狙いを付けて石を投擲する。
「じゃあいくぞ」
「行けなのです」
「これで当たったら三連続だね」
俺は石を握りながらタイミングを見計らっていた。二投目と同じようにバヴヴの体の何処かに当たれば良いと思いながら投げるのではなく、弱点である羽ばたく翅に目を付けてその時を待った。
「ここだっ!」
俺は指先に力を込めて石を放つ。
その石は綺麗な放物線を描いて見事にバヴヴの翅を貫いた。
片方の翅を失ったバヴヴは地面に不時着した。
「よし、やったぞ。二匹目だ」
「本当に凄いのです」
「やるじゃん、マオさん」
「俺って才能ある?」
調子に乗っても良いですか?
だが石を投げる才能とは俺らしい地味な才能である。
「これなら私達の二人のどちらかがマオさんの石の補充に回った方がいいかもね」
「じゃあ私がやるのです」
「キャミコ頼んだ。どんどん行くぞ」
「はい、なのです」
「私も一匹ぐらいは倒してみせるよ」
「なら俺はその十倍だ」
「今のマオさんなら出来るかもね」
「任せろい」
俺には大規模な砲撃系魔術も作戦を立てて大勢を率いることも出来ない。だから一般の探索者らしくコツコツ一匹ずつ敵を減らして行こう。
俺はキャミコから石を受け取り、全力で四投目を空へと放った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます