4章 9話

「――全員、読んだか? ……よし。意見があるやつは、手を上げろ」


 部長が促すと、まばらに手が上がった。

 まだ、ダメか……。


「演出とかのサポート、誰が入るんですか?」


「俺が入る。さすがに、全てを任せるには早い」


「それなら、私はオッケーです」


 え、オッケーもらえた?

 その後も、細々とした……。誰が、どこをどうサポートして、進行していくか。

 そんな話が続いた。


「あ、あの! 台本は、これでいいんですか!?」


 たまらず僕が尋ねると


「おう、よく直したな。微調整はいるだろうが、大したもんだ」


 柔らかい笑みで、部長はそう返してくれた。


「部長……。本当、ですか?」


「あ? 皆の反応を見れば、分かるだろ」


「春日君、頑張ったね! でも気を抜いちゃダメだよ。今後、演出とか全てを含め、何回も修正を繰り返していくんだからね!」


「春日先輩! これ、いいですよ、俺、演じたくて身体が疼きます!」


 裏方で一緒に作業をした女性の先輩や、入部間もなくから僕に話しかけてくれた後輩が声をかけてくれる。


 僕……認められたのか。リアルにも居場所を、見つけられたのか? 本当に?


「晴翔。よかったな。やっと報われたじゃねぇか」


「武内君……。これは、僕だけで書いた台本じゃないんだ……」


「は? 権利関係が発生してんのか?」


「いや、そういう意味じゃなくて。僕に教えてくれる人がいたから、書けた台本で……」


 これは、僕だけでは絶対に書けなかった。

 荒削りでも、皆が認めてくれるような台本が書けたのは……波希マグロさんがいたからだ。

 彼女と出会い、脚本家の道を見つけ、彼女が実際に演じてくれたからだ。

 僕一人のままでは、何もできなかった。


「そんなん当たり前だろ。劇と同じだ。台本だって、いい劇を披露したい皆で創り上げてくもんだろ。……断っておくが、いい劇を披露するためなら、俺も遠慮なく意見するからな!」


 少し嬉しそうな笑みで言う武内君の言葉に、目がジンと熱くなる。

 思えば武内君は、僕がもらえないはずの台本をもらったり。諦めずに足掻き続ける僕を見てくれてた。チャンスをくれた。……感謝しないと。


「ネットで、世界一好きな演技に会って。僕は変えてもらえたんだよ……」


「……は? ネットで会った人間の演技が、世界一だと? ……気持ち悪ぃな。そんなん出会い目的って奴だろうが。相手も所詮、ネットの中で粋がってる存在だろ?」


 その言葉を、僕は一瞬――理解できなかった。



―――――――――――

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