4章 5話
「この物語、面白いです。人物情景も浮かんでくるし、繊細っすよ」
「……俺が苦手なとこだな。まぁ、そこは俺より確実に優れてるのは認める」
「それに部長とか先輩方が引退したら、結局誰が台本を書くんだって話になりますよね?」
「確かに、な……。演者は一年も含めてそれなりに粒が揃ってるが、台本と演出がな……」
部長も一理あると思ったのか。腕を組んで武内君の意見について考えてるようだ。
「挑戦して失敗した時には、部内公演で使った本を文化祭でやればいいじゃないっすか」
「それなら、時間をかけることなくいけるか。……失敗も必要な経験、か」
「腐らずに何ごとも一生懸命だった晴翔なら、面白いことになるんじゃないかなって」
「そうだね~。春日君、この二年間ずっと裏方で皆を助けてくれてたしさ。カバー案もあるなら、挑戦する機会をあげたいな?」
前に道具作りのサポートをした女性の先輩も、同意をしてくれた。
そう言ってもらえるのは、ありがたいな……。
演劇台本なんて初めてだから、失敗はするかもしれない。
それでもカバー案を含めて、存在を認めて何かを任されるのは――嬉しい。
本当に――いるのか、いないのか。
自分が部に必要か、必要じゃないのか。
そんな悩みを抱えてたのに……。
部屋にこもって出られなくなってる波希マグロさんも今、演劇部で居心地悪く過ごしてる僕と似た気持ちなのかもしれない。
それなら――なおさら、僕だって現状を変える挑戦をしないと!
僕は身長が高いから……まるで見下ろすようにお願いしてるのも、よくないか?
「部長、失敗するかもしれません! カバー案に頼るかもしれません! それでも、挑戦する機会だけでも、もらませんか!?」
頭を下げてお願いする僕の肩に、ポンと手が置かれる感触がした。
「……分かった。下が挑戦するなら、上が信じてやらないとな。まぁ受験勉強で、ほとんど顔は出せないが……。思い切って、やってみろ!」
「あ、ありがとうございます!」
「台本が書けたら、皆にも意見を聞く。早めに頼むぞ」
「はい! 頑張ります!」
やった、やった!
リアルでも――便利屋としての利用価値だけじゃない。
自分のやりたいことが夢に繋がって……。
ここに居ていいと思える場所に、変える一歩を踏み出せたのかもしれない!
「武内君! ありがとう!」
「……晴翔。スタートラインに立っただけだかんな。折れんなよ?」
それだけ言って、武内君は練習へ向かってしまった。
途中で投げ出すなって、ことかな?
前回は中途半端な挑戦になっちゃったから……。
でも今回は、心強い味方がいる。
彼女とやる声劇の台本は、長い夜行バスの移動時間で書けてる。
イラストやアルバイトのスケジュールを組み直して、波希マグロさんにも相談しながら演劇台本に挑戦してみよう!
失敗を恐れて何もしないより、転ぶ度に助け合って進む方が絶対にいいんだから――。
アルバイトを終え家に帰ってから、波希マグロさんと通話を繋いだ。
―――――――――――
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